いばらき産保ニュース 第8号

発行日:2007/10/23
ホームページ:https://ibarakis.johas.go.jp/
発  行:独立行政法人 労働者健康福祉機構
茨城産業保健推進センター 所長 小林 敏郎


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【センターからのお知らせ(お役立ち情報等)】
【新着教材情報】
【産業保健Q&A】
【主なセミナー案内】
【コラム:水戸南町だより】

新着情報

失踪後自殺を労災認定/東京・三田労基署

電機メーカーの社員だった男性=当時(33)=が出向中に自殺したのは過労が原因として、三田労働基準監督署(東京)は 労災認定しました。 男性は会社を出たまま失踪し自殺、約1年半後に見つかったもので、代理人で過労死弁護団全国連絡会議幹事長の 川人博弁護士は「失踪から発見まで時間の空白があり、証言や証拠を収集しにくい困難な状況の中、労災認定を 得たのは大きな意義がある」としています。 遺族側によると、男性は会社で主に配電機器製品の技術営業を担当していましたが、出向後は設計も担当。 深夜までの勤務や休日出勤が常態化し、徹夜勤務も繰り返していました。 労基署は、失踪前3カ月間の時間外労働は月約97時間から約110時間に上ったと認定。本人の体重が減っていたことに加え、 落ち込んでいた様子だったとの証言から、認定理由について、過労が原因で精神障害の一種である「気分障害」を 発症していたと考えられています。
(「メールマガジン労働情報」2007年10月12日より)
【メモ】気分障害と労災認定
気分障害には、大きく分けて2つの病気があります。1つはうつ病、もう1つが双極性障害(躁うつ病)です。 うつ病は、人口の5人に1人が生涯のうちに一度はかかると言われており、「心の風邪」などと言われるほど ポピュラーなものですが、うつ病患者の自殺率(自殺既遂率)は他の精神疾患よりはるかに高いのが特徴です。 このため、精神障害を患っており、発病前の6か月に業務による負荷があること、業務以外に原因がないことを条件として、 うつ自殺も労災として認定されます。

パワハラ自殺、労災と認定/上司暴言でうつ病(東京地裁)

製薬会社の男性社員(当時35歳)が自殺したのは上司の暴言が原因だとして、妻が国に労災認定を求めた訴訟で、 東京地裁は15日、請求を認める判決を下しました。 判決によると、男性は当時、MR(医薬情報担当者)として勤務していましたが、上司の男性係長から 「存在が目障りだ。居るだけでみんなが迷惑している。お願いだから消えてくれ」「仕事しないやつだと言い触らしたてやる」 「給料泥棒」などと厳しい言葉をたびたび浴びせられ、心身に変調を来し、首つり自殺しました。 労基署は「発言は指導、助言」と判断し、労災と認めませんでしたが、裁判長は「上司の言葉が過重なストレスとなって うつ病になり、自殺した」と判断しました。 原告代理人によりますと、パワーハラスメント(地位を利用した嫌がらせ)を原因とした自殺を労災と認めた司法判断は 初めてだそうです。 なお、男性の妻は会社にも賠償を求め提訴し、昨年、和解が成立しています。 (10月15日毎日新聞、時事通信より)
【関連セミナー案内】
「脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況と労災認定基準(判断指針)について」
20年1月31日(木)午後2時~4時茨城産業保健センター研修室にて
脳・心臓疾患及び精神障害等がどのように労災認定されるのか。「脳・心臓疾患の認定基準」や「精神障害等の判断指針」を 中心に説明。

地域産業保健センターに面接指導専用窓口を設置/厚生労働省2008年予算要求

厚生労働省は、来年4月から義務化される規模50人未満の小規模事業場における面接指導に対応するため、 全国の地域産業保健センターに、一般の健康相談窓口とは別に、面接指導専用の窓口を開設することを決め、 2008年予算要求に盛り込みました。

茨城県最低賃金改正/平成19年10月20日から時間額665円に

茨城県最低賃金が、平成19年10月20日から時間額665円に(引上げ額10円)に改正されました。 この茨城県最低賃金は、本県内で事業を営む使用者とその事業場で働くすべての労働者(臨時、パートタイマー、 アルバイト等を含む)に適用されます。

センターからのお知らせ(お役立ち情報等)

「働く人のこころの健康相談室」を開設/12月10日スタート

いま、働く人の6割以上が“こころの疲れ”を感じているといわれます。 こころに“つかれ”を感じたら、あまりつらくなりすぎないうちに相談するのが一番です。
茨城産業保健推進センターでは、勤労者がストレスから心の健康を守り、よりよい生活を送っていただくために心の健康対策として、 「働く人のこころの健康相談室」を開設することにしました。
「働く人のこころの健康相談室」では、面談又は電話により、無料で、専門のカウンセラーが対応します。 対象者は、勤労者本人とその家族、上司・同僚等、及び産業医等の産業保健関係者、企業の労務担当者。 相談内容は、仕事上のストレスによる精神的な悩み、職場の対人関係の悩み等の勤労者生活を通しての悩みに関する相談とします。
詳しくはこちらをご覧ください
【関連セミナー案内】
「職場のメンタルヘルス実践講座」
19年11月1日(木)午後2時~4時 茨城産業保健センター研修室
20年 2月7日(木)午後2時~4時 日立シビックセンター
産業保健スタッフあるいはチームリーダー対象に、「ラインによるケア」を実践するために必要な知識、 対応方法等について講義

メタボリックと口腔機能の関係/歯科医師による産業看護職のためのセミナー

医療制度改革法の制定により、平成20年からの特定健診・特定指導の実施をまえに、 困惑している産業看護職の方々も多いと思われます。
12月6日(木)と20年1月17日(木)の2回、歯科医師による産業看護職のためのセミナー 「産業看護職・衛生管理者のための口腔機能と肥満の関係~メタボリック症候群対策としての口腔保健~」を開講します。
メタボリックシンドロームの概念の導入により、生活習慣病の根本的な原因として『肥満』があげられておりますが、 受診者の口腔機能の状態によっては一概に画一的な指導が通用しない場合もあります。 このセミナーでは口腔機能の検査法を実地に行い、特定指導の参考として活用していただくことを目的としています。
セミナー日程・会場
19年12月6日(木)14時~16時 茨城産業保健推進センター
20年1月17日(木)14時~16時 ワークヒル土浦

新着図書・教材情報(無料貸出し)

元気な職場をつくるメンタルヘルス2“うつ”を考える・・・DVD(24分)

【概要】
うつ病による休職・復職を経験した人の体験談を元に、どのようにすればうつ病を予防できるか、 もし罹患した時どのような症状に気づいて、どのように対処すれば早期回復が可能なのかを考えた教材です。
〈主な内容〉
●うつ病を発症するまで
●うつ病の症状
●うつ病の予防方法
●早期治療と早期回復など

産業保健Q&A

お休みします。

産業保健Q&Aは、こちらをご覧下さい。
産業保健に関するご相談は、 こちらから

これから受講できるセミナー案内(無料)「2007年」

    • 10月24日(水)18:00~20:00 会場:鹿嶋市商工会館
      テーマ「企業のメンタルヘルス」
      日医認定
    • 10月25日(木)14:00~16:00 会場:INAX筑波工場
      テーマ「職場巡視のポイントと課題の把握の仕方」
      日医認定(実地研修)
    • 10月28日(日)14:00~16:00 会場:真壁医師会
      テーマ「過重労働対策・医師の面接指導チェックリストと改正労働安全衛生法について」
      日医認定※10月14日と同内容です。
    • 11月1日(木)14:00~16:00 会場:茨城産業保健推進センター
      テーマ「職場のメンタルヘルス実践講座」
      実力アップ
    • 11月4日(日)14:00~16:00 会場:鹿島ハイツ
      テーマ「過重労働対策・医師の面接指導チェックリストと改正労働安全衛生法について」
      日医認定※10月14日と同内容です。
    • 11月7日(水)14:00~16:00 会場:ワークヒル土浦
      テーマ「喫煙室における室内汚染物質の実態」
      日医認定
    • 11月8日(木)14:00~16:00 会場:茨城産業保健推進センター
      テーマ「中級カウンセリング講座第2日目」
      ※受付終了です
    • 11月14日(水)14:00~16:00 会場:ワークヒル土浦
      テーマ「写真で見る職場巡視のポイント」
      日医認定(実地研修)
    • 11月20日(火)14:00~16:00 会場:茨城産業保健推進センター
      テーマ「悪臭と臭気測定」
      日医認定
    • 11月22日(木)14:00~16:00 会場:つくば国際会議場
      テーマ「過重労働を中心とする改正労働安全衛生法と事業者責任」
      日医認定
      ※受付終了です
    • 11月29日(木)14:00~16:00 会場:つくば国際会議場
      テーマ「休職及び休職者の職場復帰等にかかる法律問題」
      日医認定
      ※受付終了です
    • 12月5日(水)14:30~16:30 会場:茨城産業保健推進センター
      テーマ「茨城県内の原子力施設の概要と放射線安全管理の実際~放射線測定器具の取扱い~」
      日医認定(実地研修)
    • 12月6日(木)14:00~16:00 会場:茨城産業保健推進センター
      テーマ「産業看護職・衛生管理者のための口腔機能と肥満の関係~メタボリック症候群対策としての口腔保健~」
      実力アップ
    • 12月7日(金)18:30~20:30 会場:茨城産業保健推進センター
      テーマ「じん肺健康診断とじん肺管理区分決定について~胸部X線写真の読影も含む」
      日医認定(実地研修)
    • 12月13日(木)14:00~16:00 会場:茨城産業保健推進センター
      テーマ「中級カウンセリング講座第2日目」
      ※受付終了です
    • 12月19日(水)14:00~16:00 会場:ワークヒル土浦
      テーマ「建築物の解体における石綿ばく露防止対策」
      日医認定

※受付終了です

注:「日医認定」とあるのは、日本医師会認定産業医制度の単位認定研修(生涯研修)です。
「実力アップ」とあるのは、日本産業衛生学会産業看護職継続教育実力アップコース認定(基礎コース修了者)です。

コラム水戸南町だより

なぜ労働者がサービス残業をするのか
/監督署の是正指導の結果支払われた「サービス残業」代の総額は227億1,485万円(続き)

なぜ労働者がサービス残業をするのかという研究は、あまり多くありませんが、連合総研の調査では、「納得する成果を出すために(サービス残業を)しているので申請していない」が最多回答となっています。 このことから、そもそも自発的な「サービス残業」については、ボーナス等を通じて対価が支払われているという説や、1週間に1時間のサービス残業を少なくとも1年続けることで、10年で2%月収を上昇させる効果を持つなどという研究結果も見られます。 さらには、労働者は仕事を請け負う際に、報酬は低いが仕事内容は固定的でサービス残業を必要としない仕事と、報酬は高いが仕事内容に変動部分が多く自発的「サービス残業」の必要な仕事の、どちらかを選択できる――これが労使間に結ばれるサービス残業時間と報酬についての暗黙の契約である――という暗黙の契約仮説まで登場します。

たしかに、ホワイトカラーのサービス残業に限定すれば、成果主義の普及によって、労働時間よりも成果や業績が重視され、それによって評価や処遇が決定されるため、「自発的」にサービス残業をする場合もあるとは思われますが、健康面への影響は考慮されないのでしょうか。 生活(食事、睡眠、運動)のうち、長時間労働の影響が特に強く表れるのは睡眠です。長時間労働を放置すると、ストレスの度合いも強くなり、労働者の心身に悪影響を及ぼします。 また、長時間労働(時には「サービス残業」)する労働者は、一般に仕事に対する動機付けが高いこと知られています。これは、メランコリー気質(完全主義、義理人情型、仕事熱心、過去にこだわるなど)にも通じ、結果、「うつ」になりやすいともいえます。

労働時間の規制を除外する又は仕事や作業のスケジュールを自ら決定できる「裁量労働」(時間管理が緩やかな労働)が、労働時間短縮につながるという議論もあります。例えば、ある期間は毎日遅くまで仕事しても、別の期間、仕事がないときは定時前にサッサと帰ってもよいというのだから、無駄な労働時間を省くことができるというのですが、実際には「机上の空論」にすぎないでしょう。 「過労死」や「過労自殺」が止まない今となっては、「残業代が出なければ、(馬鹿らしくなって?)早く帰る動機付けになる」というなどという悪い冗談はよして、従業員の健康管理の面から、労働時間の総量規制への検討が必要になってきているのかもしれません。 運動選手の中には、プライドが高く、練習をやり過ぎる選手もいます。彼らは限界などないと思い込んで、危険信号を無視して練習しますが、優秀なコーチは、選手が記録のためにどんなに練習をしたがっても、限度を超えたら止めさせます。


次回の第9号は、平成19年11月上旬配信予定です。
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