いばらき産保ニュース 第9号

発行日:2007/11/5
ホームページ:https://ibarakis.johas.go.jp/
発  行:独立行政法人 労働者健康福祉機構
茨城産業保健推進センター 所長 小林 敏郎


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【コラム:水戸南町だより】

新着情報

石綿で肺がん、労災認定/バスのブレーキ整備で

大阪市の鉄道会社でバスの整備に当たっていた元従業員(73歳が男性)が、退職後に肺がんで死亡したことにつき、石綿(アスベスト)が原因だった可能性があるとして、先月、労働基準監督署から労災認定を受けていたことがわかりました。 鉄道会社の発表によると、男性は昭和36年に入社、バス運転士を経て昭和51年から平成2年にかけ、同社の車両整備工場で石綿成形品のバスのブレーキライニングの研磨などの点検整備に従事していました。(「メールマガジン労働情報」10月26日)

【メモ】
ブレーキライニングと石綿
石綿は、蛇紋石や角閃石が変成した物質です。 非常に細かい繊維状をなして綿や糸のようにやわらかく、布のように織ることができ、優れた耐熱性・耐火性を有しています。 このため長年、自動車用のブレーキライニングやディスクブレーキ・パッドなどの摩擦材の原材料の一つとして使われてきました。 作り方は、石綿の繊維を熱硬化性樹脂や天然ゴム、合成ゴムなどで接着して固め板状に成形するもので、石綿の微細な繊維が強い抵抗となって鋳鉄などの表面との間で摩擦力を生みます。 このとき非常な高熱が発生しますが、石綿は耐熱性が高いため摩擦力の変化が少ないという利点を持っていました。 しかし日本では、平成元年4月に自動車工業会がアスベストスの使用を自主規制する自主規制案を出したことで代替化が進められ、平成8年10月以降に生産された車両には石綿を含有するブレーキライニング等は使用されていないとのことです(国土交通省)。 なお、整備工場での従業員のアスベストとの接触機会は、自動車とブレーキ及びクラッチの分解、整備、脱着等の作業の際にあったものと考えられます。 これまでも、従業員(元従業員を含む)で石綿に起因すると思われる疾病者数が9名(そのうち亡くなられた方は4名(いずれもうち中皮腫))いることが報告されています(平成17年8月26日現在(社)日本自動車整備振興会連合会調べ)。 このため、労働省労働基準局長(当時)も、昭和53年9月28日付基発第54号通達「自動車のブレーキドラム等からのたい積物除去作業について」によって、整備作業中に石綿粉塵に暴露する機会を減らすための対策を講じるよう求めています。
詳しくは→http://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-28/hor1-28-31-1-0.htm
【関連セミナー案内】
「建築物の解体における石綿ばく露防止対策」
19年12月19日(水)午後2時~4時ワークヒル土浦にて
石綿障害予防のための基礎知識、石綿に関する事前調査、石綿粉じんばく露防止対策等を中心に説明。 また現在、あまり飛散が問題視されていない石綿含有スレートからも劣化に伴い、周辺環境に飛散する 可能性があるとの知見を得たので併せて紹介。
【資料】
人口動態統計(確定数)によれば、平成18年度中皮腫による死亡者数は、初めて千人を超え、1,050人(男807人女243人)に 上っていることが分かりました。平成17年の911に比べ139人増、平成7年の500人に比べ倍増しています。
詳しくは→http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/chuuhisyu06/index.html

「過重労働・賃金不払残業解消キャンペーン月間」の実施について

厚生労働省は、本年11月、労使関係者の主体的な取組を促すため「過重労働・賃金不払残業解消キャンペーン月間」を実施します。 働くことにより労働者が健康を損なったり、労働基準法に違反する賃金不払残業(サービス残業)はあってはならないものであり、その解消には、職場の実態を最もよく知る立場にある労使関係者による一体となった取組が行われることが重要としています。 このため、11月23日の勤労感謝の日には全国一斉無料相談ダイヤルを設置し、都道府県労働局の担当官が、過重労働による健康障害の防止及び賃金不払残業の解消のための電話相談に応じることにしています。
全国一斉無料相談日時:平成19年11月23日(金)9時から17時まで
フリーダイヤル:0120-897-283
詳しくは→http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/10/h1026-1.html
【関連セミナー案内】
「脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況と労災認定基準(判断指針)について」
20年1月31日(木)午後2時~4時茨城産業保健センター研修室にて
脳・心臓疾患及び精神障害等がどのように労災認定されるのか。「脳・心臓疾患の認定基準」や「精神障害等の判断指針」を 中心に説明。

センターからのお知らせ(お役立ち情報等)

ワーク・ライフバランスを進めるには/応援シンポジウムinいばらき

働き方を見直し、仕事も生活も充実した豊かな人生を送ってみませんか? 茨城労働局と(社)茨城労働基準協会連合会は、ワーク・ライフバランスをテーマにシンポジウムを開催します。 ワーク・ライフバランスの目的は、仕事とプライベートをうまく調和させ、相乗効果を及ぼし合う好循環を生み出すこと。 仕事において、高い付加価値を提供し成果を上げるためにも、広い視野や人脈が必要ですが、それらは仕事以外の場所で身につくことが多いものです。 基調講演は、(株)ワーク・ライフバランス代表取締役小室淑恵氏。 同氏は内閣府男女共同参画会議仕事と生活の調和に関する専門調査会の委員なども兼ねています。
日時平成19年11月14日(水)13:30~16:30
会場ホテルレイクビュー水戸(水戸駅南口から徒歩約3分)
お問合せ・お申込は、
全基連茨城支部(電話029-225-8881)担当(矢野・坂本)まで

「働く人の心の健康相談室」を開設/12月10日スタート(再掲)

いま、働く人の6割以上が“こころの疲れ”を感じているといわれます。 こころに“つかれ”を感じたら、あまりつらくなりすぎないうちに相談するのが一番です。 茨城産業保健推進センターでは、勤労者がストレスから心の健康を守り、よりよい生活を送っていただくために 心の健康対策として、「働く人のこころの健康相談室」を開設することにしました。 「働く人の心の健康相談室」では、面談又は電話により、無料で、専門のカウンセラーが対応します。 対象者は、勤労者本人とその家族、上司・同僚等、及び産業医等の産業保健関係者、企業の労務担当者。 相談内容は、仕事上のストレスによる精神的な悩み、職場の対人関係の悩み等の勤労者生活を通しての悩みに 関する相談とします。
詳しくは→https://ibarakis.johas.go.jp/consultation/mendan/kokoro-2
【関連セミナー案内】
「職場のメンタルヘルス実践講座」
20年2月7日(木)午後2時~4時 日立シビックセンター
産業保健スタッフあるいはチームリーダー対象に、「ラインによるケア」を実践するために必要な知識、 対応方法等について講義。

新着図書・教材情報(無料貸出し)

メタボリックシンドローム-あなたは大丈夫?!・・・DVD(30分)

【概要】
中高年に忍び寄るメタボリックシンドローム、自分は大丈夫と過信していませんか? 飽食と運動不足の生活習慣から生まれる現代病、メタボリックシンドロームとはなにか、どうすればメタボリックシンドロームを 予防できるかについて、「メタボリックシンドローム」の名付け親、松澤佑次先生がわかりやすく解説。 毎日、少しの努力で、健康なライフスタイルを自ら築いていくことの大切さ、生活習慣の改善を提案しています。

産業保健Q&A

医師の面接指導を受けない労働者

【質問】
労働安全衛生法第66条の8に基づく医師の面接指導について、会社としては、対象者全員に受けさせたいと考えていますが、 労働安全衛生規則第52条の3によれば、面接指導は要件に該当する「労働者の申出」により行うものとなっています。 医師の面接指導を受けたくないという労働者に、この申出させるにはどうしたらよいでしょうか。

【回答】
労働安全衛生法第66条の8は、過重労働・メンタルヘルス対策として、特に一定時間以上の時間外労働等を行った労働者を 対象として、医師による面接指導等を行うことを事業主に義務づけたものです。
具体的には、「事業者は、1週当たり40時間を超えて行う労働が1月当たりで100時間を超え、疲労の蓄積が認められる者であって、 面接指導に係る申出を行った者に対し、医師による面接指導を行うとともに、その結果に応じた措置を講じなければならない」 というのが基本で、たしかに「申出」を行うことが要件となっています。 しかし、・・・
産業保健Q&Aは、こちらをご覧下さい。
産業保健に関するご相談は、 こちらから

これから受講できるセミナー案内(無料)「2007年」

  • 11月7日(水)14:00~16:00:ワークヒル土浦
    テーマ「喫煙室における室内汚染物質の実態」
    日医認定(基礎・後期2単位、生涯・専門2単位)
  • 11月8日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「中級カウンセリング講座第2日目」※受付終了です
  • 11月14日(水)14:00~16:00:ワークヒル土浦
    テーマ「写真で見る職場巡視のポイント」
    日医認定(基礎・実地2単位、生涯・実地2単位)
  • 11月20日(火)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「悪臭と臭気測定」
    日医認定(基礎・後期2単位、生涯・専門2単位)
  • 11月22日(木)14:00~16:00:つくば国際会議場
    テーマ「過重労働を中心とする改正労働安全衛生法と事業者責任」
    日医認定(基礎・後期2単位、生涯・専門2単位)
    ※受付終了です
  • 11月29日(木)14:00~16:00:つくば国際会議場
    テーマ「休職及び休職者の職場復帰等にかかる法律問題」
    日医認定(基礎・後期2単位、生涯・専門2単位)
    ※受付終了です
  • 12月5日(水)14:30~16:30:茨城産業保健推進センター
    テーマ「茨城県内の原子力施設の概要と放射線安全管理の実際~放射線測定器具の取扱い~」
    日医認定(基礎・実地2単位、生涯・実地2単位)
  • 12月6日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「産業看護職・衛生管理者のための口腔機能と肥満の関係~メタボリック症候群対策としての口腔保健~」
    実力アップ(Ⅳ-3-(3)1単位)
  • 12月7日(金)18:30~20:30:茨城産業保健推進センター
    テーマ「じん肺健康診断とじん肺管理区分決定について~胸部X線写真の読影も含む」
    日医認定(基礎・実地2単位、生涯・実地2単位)
  • 12月13日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「中級カウンセリング講座第2日目」※受付終了です
  • 12月19日(水)14:00~16:00:ワークヒル土浦
    テーマ「建築物の解体における石綿ばく露防止対策」
    日医認定(基礎・後期2単位、生涯・専門2単位)
  • 1月10日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「中級カウンセリング講座第2日目」※受付終了です
  • 1月17日(木)14:00~16:00:ワークヒル土浦
    テーマ「産業看護職・衛生管理者のための口腔機能と肥満の関係~メタボリック症候群対策としての口腔保健~」
    実力アップ(Ⅳ-3-(3)1単位)
  • 1月31日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況と労災認定基準(判断指針)について」
    日医認定(基礎・後期2単位、生涯・専門2単位)

注:「日医認定」とあるのは、日本医師会認定産業医制度の単位認定研修(生涯研修)です。
「実力アップ」とあるのは、日本産業衛生学会産業看護職継続教育実力アップコース認定(基礎コース修了者)です。

コラム水戸南町だより

一将功成って万骨枯れる

最近、パワーハラスメントを原因とした自殺を労災認定するケースが相次いでいます。
一つは、前号でもお伝えしました、静岡市の製薬会社(本社:東京)の男性社員(当時35歳)のケース。もう一つが、盛岡市の自動車部品販売会社に勤務していた男性(当時31歳)が自殺したケースです。 盛岡市のケースでも、男性は営業経験がないにもかかわらず厳しいノルマが課され、約85時間の時間外・休日労働の勤務を続けていたとされています。
さらに上司の営業部長から、ノルマ不達成などを理由に、毎日のように「辞表を書け」「やる気があるのか」などと叱責された結果、重度のストレスが原因で自殺しました。

パワーハラスメント、いわゆる“パワハラ”は、上司によるいやがらせを意味します。 上司が部下に言葉や態度による暴力を振るったり、過度に厳しい言葉で精神的に苦痛を与えたりしますが、問題は指導育成や業務上の命令などに隠れて表面化しにくいことです。 セクハラに関しては、訴訟では100万円ほどの慰謝料が相場と言われて、すでに社会的な認知も高いため、会社も対処しやすい分野ですが、パワハラは判例も少なく現時点では認定しにくいのが実情です。 パワハラするような上司は、自己反省をあまりしない人に多いそうです。そればかりか、部下を深刻な状態に追い込んでいるそうした上司でも、成果さえ上げれば問責されず、出世することさえあります。 成果主義やすぐに結果を求められる今の社会と無関係ではないのかもしれません。 カウンセラーの中尾英司さんのブログによれば、パワハラには4タイプがあるそうです。

  1. 「恐怖支配」型上司のやり方
  2. 「張り子のトラ」型上司のやり方
  3. 「職場カプセル」型上司のやり方
  4. 「サイボーグ」型上司のやり方

「恐怖支配」型上司は、スケープゴートを作ることによって自分の怖さを周知し、自分の支配権を確立しようとする上司のタイプのことです。実力があるように見えて、その実、ホンモノの実力はないものですから、人が下から上ってこれないようにするのです。

「張り子のトラ」型上司は、言わずともなんとなく分かるような気がしますね。「トラ」とは管理職という「肩書き」。実力もないのに威張り散らすタイプで、中身がないから「形式」にうるさいのです。中尾さんは、「権力を持った幼稚園児」と評しております。

「職場カプセル」型上司。中尾さんは「カプセル」を「自我癒着」の意味で使っています。この型上司は、職場と自分が一体化して、職場があたかも自分の手足のように自分の一部とみなします。 一方で、職場を「人」の集団とは見ていませんから、その職場にいる人たちは疎外されます。また、この型の上司の顔は外を向いていますから、外に対してはいい顔をしようとするそうです。

「サイボーグ」型上司とは面白いネーミングですが、中尾さんは“パワハラ軍団の中でも最凶”といっています。このタイプは、目をつけた部下をあの手この手を使って自分の右腕に作りかえようとします。「人」を洗脳し、人格改造して「右腕」に作りかえ、場合によっては自らはサイボーグになるわけです。 が・・、怖いのは、相手が自分の思うようにならないと知ったとき、相手を滅殺にかかるのだそうです。 「存在が目障りだ」「会社を食い物にしている。給料泥棒」「居るだけみんな迷惑している。お願いだから消えてくれ」「どこへ飛ばされようと、おれはお前が仕事をしないやつと言い触らす」「対人恐怖症やろ」「背中一面にフケがベタッーと付いている。病気違うか」・・ 裁判所は、こうした上司の言葉を「指導」「助言」ではなく、明らかに「嫌がらせ」「攻撃」であると判断しました。

こんな上司がいる組織がよくなるはずがありません。パワハラは、他の従業員のやる気も無くさせ、会社の業績悪化につながります。また、事件化すれば会社の社会的信用の低下といった問題も生じることになります。 「あの会社はどんどん社員が辞めていたと聞きました。そんな状況は、社員だけでなく会社のためにもならないはずです」。盛岡市の事件の母親はこのように語ったと、毎日新聞は伝えています。 「一将功成って、万骨枯れる」という言葉を思い出しました。いつの世のならいかもしれませんが、フツーのサラリーマンにとってはやりきれない言葉です。 次回は、パワハラの対処について書いてみるつもりです。


次回の第10号は、平成19年11月下旬配信予定です。
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