いばらき産保ニュース 第10号

発行日:2007/11/16
ホームページ:https://ibarakis.johas.go.jp/
発  行:独立行政法人 労働者健康福祉機構
茨城産業保健推進センター 所長 小林 敏郎


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【新着情報】
【センターからのお知らせ(お役立ち情報等)】
【新着教材情報】
【産業保健Q&A】
【主なセミナー案内】
【コラム:水戸南町だより】

新着情報

初の「自殺対策白書」/平成28年までに自殺死亡率20%以上減少を目指す

政府は、自殺の現状や政府の自殺対策の実施状況をまとめた、 平成19年版「自殺対策白書(我が国における自殺の概要及び自殺対策の実施状況)」を決定しました。 昨年10月に施行されました「自殺対策基本法」に基づき、我が国における自殺の概要及び政府が講じた 自殺対策の実施の状況について、政府が毎年、国会に提出しなければならない報告書であり、 今回初の国会提出年次報告となります。 自殺者数は、平成10年より9年連続して3万人を超えています。 白書では、今年6月に閣議決定した「自殺総合対策大綱」に沿って、 自殺を「追い込まれた末の死」「防げることができる」「自殺を考えている人はサインを発している」という 3つの基本認識の下、政府が進めている9項目、46の重点的な自殺対策についてまとめ、平成28年までに、 17年の自殺死亡率の20%以上を減少させ、急増前の2万4000人台の水準まで下げることを目標に掲げています。

「平成19年度産業保健調査研究発表会の概要

労働者健康福祉機構は、この度、平成19年度産業保健調査研究発表会の概要を取りまとめ、 抄録とスライド等をホームページに掲載しました。 注目された研究としては、「産業医のメンタルヘルスとの関わりを中心とした調査研究」、 「宮城県内の事業所における生活習慣病予防対策と勤労者の運動習慣の実態に関する調査」、 「石綿飛散が想定される作業現場における石綿作業環境測定とマスク効率に関する調査」など。
詳しくは→http://www.johas.go.jp/yobo/sanpo_chosa/tabid/353/Default.aspx
【関連セミナー案内】
「『ラインケア支援の方策マニュアル』を用いた管理職教育とその効果について」
20年3月12日(水)午前10時~12時 つくば国際会議場
茨城産業保健推進センターの平成18年度調査研究。
職場での対応を「うつ病事例」、「統合失調症事例」、「未熟型・慢性うつ病事例」などに分類し、その理解を深め、 それぞれの対応のポイントについてモデルケース検討を通じて学ぶ。

時間外労働(労働基準法違反)で書類送検--筑西労働基準監督署

筑西労働基準監督署は6日、結城市の運送業者と同社の取締役を労働基準法違反などの疑いで、水戸地検下妻支部に書類送検しました。 同社は昨年4月から5月末までの間、時間外労働の協定を結ばないまま同社のトラック運転手5人に月51時間~112時間の時間外労働をさせるなどした疑い。 同社では、運転手の男性(当時36歳)が昨年5月、自宅で脳出血を起こしています。 この件で同労働基準監督署が調べたところ、男性は月平均で80時間以上の時間外労働を強いられていたことが判明し、「長時間の労働が脳出血の要因だ」と判断されて労災認定を受けていました。 (11月7日毎日新聞より)
【関連資料】
脳・心臓疾患の認定基準の改正について(厚生労働省 平成13年12月12日)
詳しくは→http://www.mhlw.go.jp/houdou/0112/h1212-1.html
【関連セミナー案内】
「脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況と労災認定基準(判断指針)について」 20年1月31日(木)午後2時~4時 茨城産業保健推進センター研修室にて 脳・心臓疾患及び精神障害等がどのように労災認定されるのか。「脳・心臓疾患の認定基準」や 「精神障害等の判断指針」を中心に説明。

センターからのお知らせ(お役立ち情報等)

第1回アジア産業看護学術集会のご案内

1st Asia Conference on Occupational Health Nursing 2008
アジア諸国の産業看護職と「これからの産業看護活動」をテーマとして意見交換をするための国際会議が開催されます。 主催は、日本産業衛生学会産業看護部会、アジアの産業看護職による特別講演などが行われます。
メインテーマ:「これからの産業看護活動」-グローバルな視点で考える-
参加予定国:日本、韓国、タイ、台湾、中国、フィリピン、シンガポール
会期:2008年 2月23日(土)、24日(日)
会場:日本科学未来館
認定単位:日本産業衛生学会産業看護継続教育(実力アップ)
Ⅰ-1- (1) (2) (3) (4) (5)
主催:日本産業衛生学会産業看護部会
後援:厚生労働省日本看護協会
参加登録:事前登録11月16日(金)まで受付中登録方法はHPをご参照下ください。当日参加も受付けています
事務局:四日市看護医療大学第1回アジア産業看護学術集会事務局
電話:059-340-0739

12月10日(月)「働く人の心の健康相談室」を開設/予約受付中

茨城産業保健推進センターでは、勤労者がストレスから心の健康を守り、よりよい生活を送っていただくために心の健康対策として、12月10日(月)から「働く人のこころの健康相談室」を開設することとし、相談の予約を受け付けています。 「働く人の心の健康相談室」では、面談又は電話により、無料で、専門のカウンセラーが対応します。 対象者は、勤労者本人とその家族、上司・同僚等、及び産業医等の産業保健関係者、企業の労務担当者。 相談内容は、仕事上のストレスによる精神的な悩み、職場の対人関係の悩み等の勤労者生活を通しての悩みに関する相談 とします。

詳しくはこちらをご覧ください。

【関連セミナー案内】
「職場のメンタルヘルス実践講座」
20年2月7日(木)午後2時~4時 日立シビックセンター
産業保健スタッフあるいはチームリーダー対象に、「ラインによるケア」を実践するために必要な知識、 対応方法等について講義。 「ストレスケアとしてのリラクゼーションの技法を学ぶ~自律訓練法など~」 20年3月4日(火)午後2時~4時産業保健推進センター 研修会では、自律訓練法を始めとするリラクゼーションの技法を紹介するとともに、 自律訓練法の習得方法について臨床心理士が指導。

新着図書・教材情報(無料貸出し)

職場における自殺の予防と対応/厚生労働省・・・パンフレット

【概要】
2001年に公表された同題名のマニュアルの内容を改訂、追加などを行ったもの。 内容は、うつ病の症状や早期発見のための方法、産業医や専門医へうつ病等の疑いがある労働者を繋ぐタイミング、 職場でのポストベンション(事後対応)などで、教育・研修などの場での利用が期待されています。
希望者には無料で配布します(数的制限があります)。

産業保健Q&A

じん肺、アスベスト肺で管理区分を受けるには

【質問】
健康診断を実施したところ、労働者に「アスベスト肺」の所見が認められました。 じん肺管理区分を受けるにはどうしたらよいですか?

【回答】
じん肺は、長い年月をかけて進行します。
このため、じん肺法3条に定めるじん肺健康診断の結果、じん肺の所見があるとされた者は、 都道府県労働局長(以下「労働局長」)にじん肺管理区分決定申請を行い、労働局長が、 じん肺について専門知識を有する地方じん肺検査医の診断又は審査に基づいてじん肺管理区分を決定することになっています。 つまり、じん肺管理区分決定とは 、粉じん作業従事(あるいは従事歴のある)労働者の健康管理を 目的とするじん肺法上の決定のことです(じん肺法4条)。
じん肺管理区分は、じん肺所見の有無および程度に応じて定められ、管理1、管理2、管理3位、管理3ロ及び管理4の 5段階に分かれています。 管理1はじん肺の所見が無いという区分です。管理2以上はじん肺の所見があるということを示しており、数字が大きくなるに 従いじん肺が進行していることを示します。
なお、アスベスト肺もじん肺の一種であり、これと同様に管理区分が決定されます。 管理区分決定申請を行うには、・・・
産業保健Q&Aの続きは、こちらをご覧下さい。
産業保健に関するご相談は、 こちらから
【関連セミナー】
「じん肺健康診断とじん肺管理区分決定について~胸部X線写真の読影も含む」
12月7日(金)18:30~20:30
茨城産業保健推進センター
健康診断から管理区分決定までの流れ及び胸部エックス線写真の読影等について、標準フィルム等を用いて、実際に学習。

これから受講できるセミナー案内(無料)「2007年」

  • 12月5日(水)14:30~16:30 会場:茨城産業保健推進センター
    テーマ「茨城県内の原子力施設の概要と放射線安全管理の実際~放射線測定器具の取扱い~」
    日医認定(基礎・実地2単位、生涯・実地2単位)
  • 12月6日(木)14:00~16:00 会場:茨城産業保健推進センター
    テーマ「産業看護職・衛生管理者のための口腔機能と肥満の関係~メタボリック症候群対策としての口腔保健~」
    実力アップ(Ⅳ-3-(3)1単位)
  • 12月7日(金)18:30~20:30 会場:茨城産業保健推進センター
    テーマ「じん肺健康診断とじん肺管理区分決定について~胸部X線写真の読影も含む」
    日医認定(基礎・実地2単位、生涯・実地2単位)
  • 12月19日(水)14:00~16:00 会場:ワークヒル土浦(土浦市木田余東台4-1-1)
    テーマ「建築物の解体における石綿ばく露防止対策」
    (基礎・後期2単位、生涯・専門2単位)
  • 1月17日(木)14:00~16:00 会場:ワークヒル土浦(土浦市木田余東台4-1-1)
    テーマ「産業看護職・衛生管理者のための口腔機能と肥満の関係~メタボリック症候群対策としての口腔保健~」
    実力アップ(Ⅳ-3-(3)1単位)
  • 1月31日(木)14:00~16:00 会場:茨城産業保健推進センター
    テーマ「脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況と労災認定基準(判断指針)について」
    日医認定(基礎・後期2単位、生涯・専門2単位)
  • 2月7日(木)14:00~16:00 会場:日立シビックセンター(日立市幸町1-21-1)
    テーマ「職場のメンタルヘルス実践講座」
    実力アップⅣ-3(4)1単位)
  • 2月13日(水)14:00~16:00 会場:しもだて地域交流センター(筑西市丙372)
    テーマ「ヘルシーライフへの安全運転~メタボリックシンドローム・生活習慣病の予防について~」
    日医認定申請予定
  • 2月21日(木)14:00~16:00 会場:茨城産業保健推進センター
    テーマ「防じんマスクの適正な選び方・有効な使い方」
    日医認定申請予定
  • 2月23日(土)15:00~17:00 会場:茨城県民文化センター分館(水戸市千波町東久保697)
    テーマ「特定健診・保健指導と運動プログラムの指導方法について」
    実力アップ申請中

注:「日医認定」とあるのは、日本医師会認定産業医制度の単位認定研修(生涯研修)です。
「実力アップ」とあるのは、日本産業衛生学会産業看護職継続教育実力アップコース認定(基礎コース修了者)です。

コラム水戸南町だより

パワハラ対処法

前回、増える“パワハラ”被害と、パワハラ上司のタイプなどについて紹介しました。今回は、パワハラへの対処について書いてみました。 もし、パワハラによって、不眠・生理不順・胃痛・吐気などの体調不良を抱えている場合は、まずは専門家の指導を受けて、体調不良の悪化を食い止めることが、もっとも大事なことであることは言うまでもありません。 次に、こうした体調不良を抱えていない場合は、自分の力で状況を改善できる可能性があります。

その一つ目は、職場に理解者を作ることです。 パワハラ上司は、多くは被害者を孤立化させるという巧みな方法を使います。権力を利用したり、職場の集団心理を利用する場合もあります。しかし、少しでも理解してくれる同僚、部下、他部署の上司などを持っていれば、気持ちはとても楽になります。

二つ目は、事実関係を整理することです。これは大事なことです。 加害者からの暴言などは、日記風に詳細にメモしておきましょう。また、そのときの情景、例えば日時、場所、居合わせた者なども記録しておくとよいでしょう。 パワハラの場合、言葉の言い方も重要なので、録音しておくことがベストです。そこまでは、なかなかできないかもしれませんが覚えておきましょう。 直接は関係ないことでも、その日の出来事や天気なども併せてメモしておくと、証拠能力はより強くなります。 パワハラに対し、法的措置以外には対抗手段がないようなところにまでたどり着いたとき、このメモが役立ちます。 上司の言動をメモすることは、上司の性格を理解するのにも役立つはずです。

パワハラ上司の型については前回に触れました。こうした上司の多くは、人格的に偏り(人格障害)があると指摘されています。相手のパーソナリティを客観的に把握し理解することで、冷静に対処できるようになるかもしれません。 最近の会社はパワハラの相談を受け付ける窓口を作っているところもありますので、相談してみればここまでで効果があるかもしれません。 もっともパワハラはセクハラと異なり、「社員教育」「部下への指導・育成」を理由として行われてきていますので、会社に訴えてもかえって不利に働く可能性があります。 しかし、特に会社の窓口に相談した上でも事態が改善されない場合は、かえって会社の使用者責任が大きくなるので、気にする必要はありません。

最後の対処法は、法的手段に訴えることです。 セクハラのように判例は多くありませんが、正当な職務の範囲内を超えるもの、社会的に相当といえないような上司の言動は、「権利の乱用」となって違法と判断されるはずです。 社会的相当性を超えているか否かは、一つ一つ事実を積み重ね、ケース・バイ・ケースで判断されることになります。 セクハラの判断基準を参考にすれば、職種や職場の特性、行為の様子、職務上の地位、両者のそれまでの関係、言動の場所・繰り返しなされたか否か、被害者が受けた被害の程度などを総合的判断して決められるとおもいます。 ですから、上司の言動を日記やメモに逐一残したり、録音しておくことがとても大切なのです。

パワハラの法的な責任については、加害者である上司本人と会社と双方が問われることがあります。 ちなみに、暴言をあびせる等の行為が、恒常的に精神的苦痛を与え、人の生命・身体という人格的利益を侵害し又は侵害するおそれがある場合には、差止めを求めることもできますが、パワハラの場合は困難だと思います。 したがいまして、上司に対しては、民事責任として、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償責任を追及するのが効果的です。また場合によっては、刑事責任として、傷害罪、暴行罪、名誉毀損罪、侮辱罪なども考えられます。 使用者たる会社の責任としは、不法行為責任、使用者責任(民法715条)、債務不履行責任(民法415条)などが問われます。 会社には、安全配慮義務(雇い入れている従業員が安全に業務に従事できるようにするべき義務)の一部として、社員が快適な環境で働けるようにするための職場環境配慮義務がありますが、債務不履行責任とはこのことを指します。 会社としても、パワハラが問題となるケースが増えつつあることを十分意識したうえで対策を考えるべきです。

セクハラ防止について厚生労働省の「指針」は

  1. 職場におけるセクハラを許さないという会社の方針の明確化と啓蒙
  2. 相談・苦情の窓口を設け、その内容に応じて適切かつ柔軟に対応
  3. 発生した場合の迅速かつ適切な対応

の3点が挙げていますので、参考になるでしょう。


次回の第11号は、平成19年12月上旬配信予定です。
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