いばらき産保ニュース 第21号

発行日:2008/5/7
ホームページ:https://ibarakis.johas.go.jp/
発  行:独立行政法人 労働者健康福祉機構
茨城産業保健推進センター 所長 小林 敏郎


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【コラム:水戸南町だより】

新着情報

過労で倒れ重い障害/大阪の会社に約2億円の賠償命令

大阪の精密機器メーカーで働いていた男性が、脳内出血を起こして 重い障害を負ったのは過労が原因だと訴えていた裁判で、大阪地方裁判所は 先月28日、「男性の業務量を減らすべきだった」として、会社側に 計1億9,800万円の賠償を命じました。
この裁判は、7年前、生産の計画をたてる工程管理を担当していた 30代の男性が、仕事中に脳内出血で倒れ、全身が不自由となる重い障害を 負ったことをめぐり、本人と家族が、過労が原因だと会社を訴えていた ものです。 会社側は、男性にもともと脳の血管の異常があったことが倒れた原因 だと主張して争っていました。 判決理由で裁判長は、発症前の時間外労働が12日間で計約61時間 だった点を挙げ、「業務は質的にも量的にも著しく過重だった」と指摘。 発症との因果関係を認め、会社側に安全配慮義務違反があるとしました。 およそ2億円という賠償額は、労災の裁判では過去最高額だということ です。男性側の弁護士は「労災をめぐる損害賠償としては異例の高額。 労働時間管理をしっかりするよう企業に厳しく警告した判決だ」としています。
(NHKニュースほか)
【関連セミナー案内】

  • テーマ:産業保健における口腔疾患~生活習慣と口腔疾患、その予防について
    日時:5月22日(木)14時から16時茨城産業保健推進センター
    概要:口腔疾患と生活習慣病との関連について、歯科疾患の予防がいかに 生活習慣病の予防にとって欠かせない要素の一つになっているかを説明。 併せて、従業員への歯科健診の実施による疾病の早期発見・早期治療が 作業能率を高め、ひいては医療費の削減にもつながることなどを説明。
  • テーマ:労働契約法と労務管理~安全配慮義務、労働契約の締結から変更、終了まで~
    日時:7月24日(水)14時から17時茨城県立図書館視聴覚ホール
    概要:研修では、安全(健康)配慮義務、労働契約の締結から変更、終了まで、 これまでの基本的な判例などを基に、産業保健スタッフ等 として理解しておくべき事項について具体的に解説します。
新型インフルエンザ対策/改正感染症法・検疫法が成立

世界的大流行が懸念される新型インフルエンザに備え、発生初期に 国内への流入を「水際」で防ぐ対策などを盛り込んだ改正感染症法と 検疫法が先月24日、参院本会議で可決、成立しました。
改正法は既存の一~五類に加え、新型インフルエンザについての 分類を新設。危険性が最も高いエボラ出血熱などの「一類感染症」に 準じる感染症に位置づけられました。患者の強制入院などの措置のほか、 無症状の人も感染が確認されれば患者と同様の措置の対象になることも 盛り込まれています。
また、感染の恐れがある人の入国時は、感染有無の確認のため、 約10日間の一時的隔離ができる規定も設け、隔離は医療機関に加え、 ホテルなども利用可能としています。
新型インフルエンザ対策関連情報↓
http://www.johas.go.jp/rofukukiko/tabid/142/Default.aspx

「激務でうつ病」認め解雇無効/東京地裁判決

東芝深谷工場で勤務していた元社員(41)が、激務でうつ病になった のに解雇されたのは不当として、東芝に解雇の無効確認などを求めた訴訟で、 東京地裁は先月22日、東芝に対し解雇を無効とした上で、未払い賃金や 慰謝料など約2,800万円の支払いを命じました。
元社員は平成13年4月にうつ病と診断され、同9月から療養していました が、会社側は17年9月、休職期間が満了したとして解雇したものです。
判決は、月平均90時間を超えた時間外労働や切迫したスケジュールが 肉体的・精神的な負担を与え、うつ病を発症させたと認定。東芝による 解雇は、「仕事が原因の疾病の療養期間に解雇はできない」と規定した 労働基準法に反すると判断しました。 これに対し、東芝は即日控訴しました。 (毎日新聞など)
【解説:労災と解雇制限】
使用者は、労働基準法第19条の規定により、労働者が業務上負傷し、 又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間は、 使用者が同法第81条の規定による打切補償を支払うか、天災事変その他 やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となったった場合を除いて、 解雇してはならないことになっています。
ちなみに打切補償とは、業務上の負傷又は疾病に対する使用者の補償義務 を永久的なものとせず、療養開始後3年を経過したときに打切補償を行う ことにより、その後の使用者の補償責任を免責するものです。
通常、労働基準法の使用者の補償義務は労災保険によって代行されて いますが、労働基準法との関係について労災法第19条は、業務上負傷し、 又は疾病にかかった労働者が療養の開始後3年を経過した日において 傷病補償年金を受けている場合、又は同日後において傷病補償年金を 受けることとなった場合には、当該3年を経過した日又は傷病補償年金を 受けることとなった日において、労働基準法第81条の規定により打切補償を 支払ったものとみなすとしています。
【関連通達】
「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」(平11・9・14基発第544号)

【メンタルヘルス・ケースカンファレンス】
1回目 平成20年6月2日(月)14時40分から16時まで
2回目  同8月4日(月)14時40分から16時まで
3回目  同10月6日(月)14時40分から16時まで
4回目  同12月1日(月)14時40分から16時まで
5回目 平成21年2月2日(月)14時40分から16時まで
産業保健の場で起こるメンタルヘルスに関する様々な問題に対し、 提供者と参加者が意見を出し合い、対話を重ねながら、より良い解決を 考えていきます。産業看護職、人事労務担当者等対象。 会場は、茨城産業保健推進センター研修室。

センターからのお知らせ(お役立ち情報等)

第21回禁煙指導実践講座/NPO法人禁煙ネット

NPO法人禁煙ネットは、5月24日(土)「第21回禁煙指導実践講座」 を開催します。 内容は、繁田正子氏(京都府立医科大学)による、講演 『タバコから始めるいのちの教育~より広く・より深く・より楽しく~』 など。
また、新しい禁煙治療内服薬「チャンピックス(バレニクリン)」が、 5月8日から医師の処方でいよいよ販売開始になりますが、ファイザー(株) 学術担当による説明もあります。 参加費3,000円。

【関連セミナー】

  • テーマ:企業における喫煙対策と禁煙支援について
    日時:7月17日(木)14:00~16:00文部科学省研究交流センター(つくば市)
    概要:わが国における喫煙の実態、受動喫煙の健康への影響及び 企業における喫煙対策・禁煙支援をどのように進めたらよいか説明。
健口(けんこう)・歯(は)つらつ!事業所出張健康教室

茨城県歯科医師会では、職場の皆様の歯と口の健康を守るため、 「健口・歯つらつ!事業所出張健康教室」(無料)を実施しています。
歯科医師と歯科衛生士が事業場に出張し、歯周病や生活習慣病、メタボリック との関係などについて講演するもの。また、個別相談にも応じます。 職場の健康づくり推進に、是非ご活用ください。
詳しくは茨城県歯科医師会ホームページ↓
http://www.ibasikai.or.jp/

【関連セミナー】

  • テーマ:産業保健における口腔疾患~生活習慣と口腔疾患、その予防について
    【日時】
    5月22日(木)14:00~16:00茨城産業保健推進センター
    7月31日(木)18:30~20:30県西生涯学習センター
    概要:最近注目されている口腔疾患と生活習慣との関連について。
    また、従業員の歯科健診(産業歯科健診)を行うことで、 作業能率の向上や医療費の削減につながることなどを、実例で説明。
「ラインケア支援の方策マニュアル」を用いた管理職研修とその効果に関する実践的研究/平成18年度調査研究報告書

本年3月つくば市において、茨城産業保健推進センター調査研究 「『ラインケア支援の方策マニュアル』を用いた管理職研修とその効果に 関する実践的研究」にもとづく研修会を開催したところ、大変盛況でした。 職場での対応を「うつ病事例」、「統合失調症事例」、「未熟型・ 慢性うつ病事例」などに分類し、それぞれについて理解を深めるとともに、 対応のポイントについてモデルケース検討を通じて学ぶというもの。
研修会終了後も資料請求のご要望がありましたので、調査研究報告書を希望者に配布することにしました。
電話、FAX又はEメールで 茨城産業保健推進センターまでお申出下さい。
郵送料とも無料です。
なお、部数に限りがありますので、お一人様1部とさせていただきます。
調査研究報告書の概要↓
https://ibarakis.johas.go.jp/research/h18_1

新着図書・教材情報(無料貸出し)

  • 熱中症をあなどるな~熱中症の危険と対策~(DVD15分)
    【概要】
    熱中症は、気づかないうちに体温が上昇し、ミネラルが不足し急速に 脱水症状に陥ってしまう急性疾患で、死に至る場合もあります。 熱中症の発生しやすい条件時間帯などを分析し、予防対策を示します。
  • 感染防止!ノロウイルス対策~1巻感染力の強いノロウイルス(DVD15分)
    【概要】
    ノロウィルスの特徴は、強い感染力があり、食中毒事故1件あたりの 患者数が多いということが挙げられます。DVDは、ノロウィルスの 特徴の理解と、食中毒防止の意識強化を図ることを目的としています。
  • 感染防止!ノロウイルス対策~2巻食中毒防止のポイント(DVD23分)
    【概要】
    ノロウィルス特有の課題を明確にすることによって、食品取扱者として どういった行動をとればよいかを、具体的に紹介しています。 食品製造業から飲食サービス業まで、急務の危機管理課題です。
  • 心肺蘇生とAEDの使い方―救急車が来るまでに―(DVD15分)
    【概要】
    突然心臓が止まり、命の助かる可能性は10分の間に急速に低くなります。 そこで必要になるのが心肺蘇生やAED。
    救急車が到着するまで救命処置や AEDの使用法を分かりやすく解説します。

 

産業保健Q&A

今回はお休みです

産業保健に関するご相談は、 こちらから

これから受講できるセミナー案内(無料)「2008年」

  • 5月14日(水)18:30~20:30:茨城産業保健推進センター
    テーマ「産業・医療の場で使われる放射線と健康への影響について」
    日医(基礎・後期2、生涯・専門2)
  • 5月22日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「産業保健における口腔疾患~生活習慣と口腔疾患、その予防について」
    実力アップ(Ⅳ-3-(1))
  • 5月29日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「作業環境測定結果の見方について~デザインの方法、評価方法を中心に~」
    日医(基礎・後期2、生涯・専門2)
  • 6月2日(月)14:40~16:00:茨城産業保健推進センター
    メンタルヘルス・ケースカンファレンス
  • 6月5日(木)14:00~16:00:ダイヤ分析センター(稲敷郡阿見町)
    テーマ「屋外作業場等における個人サンプラーを用いた有害物質ばく露濃度の測定」
    日医(基礎・実地2、生涯・実地2)
  • 6月11日(水)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「職業性腰痛の予防と対応」
  • 6月19日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「WBGT(湿球黒球温度)指数を使った熱中症対策」
    日医(基礎後期1・実地1、生涯専門1・実地1)
  • 6月20日(金)18:30~20:30:ワークヒル土浦(土浦市木田余東台4-1-1)
    テーマ「産業・医療の場で使われる放射線と健康への影響について」
    日医(基礎・後期2、生涯・専門2)
  • 7月3日(木)14:00~16:30:株式会社 小松製作所茨城工場(ひたちなか市長砂163-46)
    テーマ「防じんマスクの適正な選び方・有効な着用方法」
    日医(基礎・実地2、生涯・実地2)
  • 7月10日(木)14:00~17:00:日立ハイテクノロジーズ那珂事業所(ひたちなか市市毛882)
    テーマ「産業医の職場巡視について(実習)」
    日医(基礎・実地3、生涯・実地3)
    ※日程が6月26日(木)から変更になりました
  • 7月11日(金)18:30~20:30:茨城産業保健推進センター
    テーマ「自前で行うメンタルヘルス研修」
    日医(基礎後期2、生涯専門2)
  • 7月17日(木)14:00~16:00:文部科学省研究交流センター(つくば市竹園2-20-5)
    テーマ「企業における喫煙対策と禁煙支援について」
    実力アップ予定
  • 7月24日(木)14:00~17:00:茨城県立図書館(水戸市三の丸1-5-38)
    テーマ「労働契約法と労務管理~安全配慮義務、労働契約の締結から変更、終了まで~」
    日医(基礎後期3、生涯更新2、専門1)
  • 7月31日(木)18:30~20:30:県西生涯学習センター(筑西市野殿1371)
    テーマ「産業保健における口腔疾患~生活習慣と口腔疾患、その予防について」
    実力アップ(Ⅳ-3-(1))

注:「日医認定」とあるのは、日本医師会認定産業医制度の単位認定研修(生涯研修)です。
「実力アップ」とあるのは、日本産業衛生学会産業看護職継続教育実力アップコース認定(基礎コース修了者)です。

コラム水戸南町だより

タスポは誰のため/それとも禁煙の味方

たばこ自動販売機の成年識別ICカード「taspo(タスポ)」 の普及が、本格始動を前に低迷しているようです。
低迷の背景にあるのは、「手続きが面倒」「自販機でなくても コンビニで買える」といった意見。 ちなみに、タスポは個人情報の保護も懸念され、発行申し込みには 名前や生年月日、住所、電話番号のほか顔写真も必要です。 また、申請書類を郵送して受け取るまで約2週間かかるそうで、 いっそのこと、その間禁煙したほうが手っ取り早いような気もします。
一方でこれを機に禁煙を誓う人も少なからずおり、「禁煙志願者の増加に つながるかも」と期待する向きもありますが、「タスポは結局、タバコ自販機を 長生きさせようという策略」というのが日本禁煙学会の見方です。 さらにタスポの認識装置の設置費用は1台につき10万円前後かかる そうです。これは、自販機をかかえる小売店にとっては大変な負担です。 このように、喫煙者からも、小売店からも、もちろん禁煙治療をしている 医師からも大不評のタスポ、いったい何のための制度なのでしょうか。

財務省などによれば、タスポは、高校生の喫煙経験者の約8割が たばこを自動販売機で買ったとする調査をもとにした、いわば 未成年者の喫煙防止対策の一環ということになります。 日本の喫煙者の数は毎年少しずつ減少してきていますが、それでも世界 平均を大きく上回っています(WHO “Tobacco Atlas2002)。 さらにここ数年は女性の喫煙が増え、未成年の喫煙常習化 (未成年者の喫煙および飲酒行動に関する全国調査2004)も目に付きます。 未成年の喫煙は、成人者の喫煙とは比べ物にならないくらい体に 悪影響を及ぼします。
発がん率への影響も大きく、成人になってから 喫煙するよりも高率に上昇することも分かっていますから、 こうした取り組みが大切なことは分かります。 しかし、それが何故「タスポ」導入に結びつくのかが不思議です。
さらに最近はおかしな雲行きとなってきました。タスポの申し込みが 増えないので、自動車運転免許証でも購入可能なように変更するらしいのです。 未成年の購入を遮断しようというのがタスポの狙い。申し込みの わずらわしさも喫煙防止対策に効果を挙げているというのに、これでは タスポ導入の「目的」である『未成年の喫煙防止』が忘れ去れている としか言いようがありません。 ちなみにコンビニなどでの対面販売ではタスポは不要です。高校生が 私服を着ていたり、仮に未成年かなと思っても、店側として年齢の証明を 求めるのは難しいと思います。店員にとっても、逆切れされて暴力沙汰・・・ などという心配もあります。 未成年の喫煙防止には、本来、家庭、地域、学校などが協力し、 自動販売機そのものの撤去も含め、若者心理、喫煙者の心理なども踏まえた 総合的な取り組みが必要です。 そもそも、『20歳になってから』、『未成年者の喫煙は禁じられています』 といった未成年者のたばこに関する注意文言は、「思春期や反抗期の世代には、 かえって逆効果となる恐れがある」との指摘もなされています。 兵庫県淡路医師会の山岡雅顕医師は、「中学生で吸い始めると肺がんになる 確率が何%高くなる」といった表現が望ましいと提言、その上で未成年や 若年層では、男性なら性的不能、女性なら美容上の問題などを警告するのが 効果的ではないかといっています。

このタスポ、かざすだけで使えるICカードで、自販機にはアンテナが 付けられ、NTTによって瞬時に情報が集約されるという高度なシステム。 関連企業8社ほどがかかわり、総事業費は1,000億円近いとのこと。
毎年の メンテナンス費用だけで100億円といわれておりますから、誰のための 対策なのでしょうか。 タスポにこのような大金を投じるくらいなら、未成年者の喫煙対策に費用を 転じた方がよいような気がするのは、わたし一人だけではないと思います。(N)


次回の第22号は、平成20年5月下旬配信予定です。
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