いばらき産保ニュース 第23号

発行日:2008/6/6
ホームページ:https://ibarakis.johas.go.jp/
発  行:独立行政法人 労働者健康福祉機構
茨城産業保健推進センター 所長 小林 敏郎


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【新着情報】
【センターからのお知らせ(お役立ち情報等)】
【新着教材情報】
【産業保健Q&A】
【主なセミナー案内】
【コラム:水戸南町だより】

新着情報

労災認定精神疾患が過去最多に、過労自殺も増加/厚生労働省

仕事上のストレスが原因でうつ病などの精神疾患になり、 平成19年度に労災認定を受けた人が268人(前年度比30.7%増加)と 前年に続き過去最多を更新したことが厚生労働省のまとめで分かりました。 うち過労自殺(未遂を含む)も81人(前年度比22.7%増)で過去最多 となり、2年間で倍増しました。 同省によると、過労によるうつ病の労災請求件数も952人(前年度比16.2%増) に増えています。
また、脳出血や心筋梗塞(こうそく)などを発症した「脳、心疾患」の 認定者392人(うち死亡142人)も前年度比約10%増え過去最多となりました。 残業時間は月100~120時間未満が91人ですが、160時間以上も35人に 上りました。
労働災害による死傷者件数は長期的に減少する中、仕事上のストレスが 原因の精神疾患が急増し、長時間労働で発症する脳・心臓疾患も依然 高い水準を保っています。働く人の労働環境が改善せず、心身ともに 疲弊している実態が浮き彫りになった形です。
厚生労働省発表文↓
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/05/h0523-2.html
【関連セミナー】
テーマ:企業における喫煙対策と禁煙支援について
日時:7月17日(木)14時から16時文部科学省研究交流センター
概要:わが国における喫煙の実態、受動喫煙の健康への影響及び企業における
喫煙対策・禁煙支援をどのように進めたらよいかを説明します。
【産業看護職のためのメンタルヘルス・ケースカンファレンス】
今後の予定は以下のとおりです。

  • 平成20年 8月4日(月)14時40分から16時まで
    平成20年10月6日(月)14時40分から16時まで
    平成20年12月1日(月)14時40分から16時まで
    平成21年 2月2日(月)14時40分から16時まで
    産業保健の場で起こるメンタルヘルスに関する様々な問題に対し、 提供者と参加者が意見を出し合い、対話を重ねながら、より良い解決を考えてゆきます。 産業看護職、人事労務担当者等対象。会場は、茨城産業保健推進センター研修室。
石綿被害の賠償求め/作業員ら初の集団提訴

アスベスト(石綿)で健康被害を受けた東京、埼玉、千葉の 建設作業員と遺族計178人が先月16日、国と建材メーカー46社に 慰謝料など総額66億円余を求め東京地裁に提訴しました。
建設現場での石綿被害を訴える集団訴訟は、これが初めてです。 原告側は「国は国際労働機関(ILO)が石綿粉じんと肺がん、中皮腫の 関連を指摘した72年には石綿の製造・使用を禁止すべきだったのに2006年 まで遅らせ、産業界の利益を優先した」と主張。 建材メーカーの責任についても、「石綿の危険性を警告したり、 製造を中止する義務を怠った」としています。
原告は、40年以上にわたり建設現場で働いた大工、配管作業員、電気作業員ら。 石綿粉じんを吸い込んで肺がんなどになり、172人の患者のうち 82人が既に死亡しており、患者1人当たり計3,850万円の慰謝料と 弁護士費用を求めています。
【アスベスト(石綿)に関する情報は】
厚生労働省アスベスト(石綿)情報↓
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/sekimen/index.html
茨城労働局石綿(アスベスト)対策のしおり↓
https://jsite.mhlw.go.jp/ibaraki-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/anzen_eisei/hourei_seido/kijun24.html
茨城県におけるアスベスト対策について↓
http://www.pref.ibaraki.jp/seikatsukankyo/kantai/taiki/environment/asbestos-leaflet.etc.html
【関連セミナー】
テーマ:防じんマスクの適正な選び方・有効な着用方法
日時:7月3日(木)14時から16時30分(株)小松製作所茨城工場
概要:防じんマスクの選択に当たっての留意点やフィッティングテスターを 使って顔面とマスク面体との密着性を確認する方法(実技)を研修します。 工場内を巡視して、粉じんによる健康障害防止対策について学習します。

職場での熱中症による死亡災害/昨年は18件

職場における熱中症による死亡災害は、気温が高い7月から8月にかけて 多く発生していますが、5、6月や9月にも発生する災害です。 このたび熱中症による死亡災害発生状況(平成19年分)が、厚生労働省から 発表されました。
それによると、昨年の死亡災害は18件。業種別では建設業(10件)が 過半数を占め、警備業、製造業(いずれも2件)が続いています。 過去10年間(平成10年~19年)での熱中症による死亡災害は186件ですが、 推移をみると、平成11年からは毎年20名前後の死亡災害が発生しています。
同省では、熱中症の予防措置として、労働衛生教育の確実な実施や作業者の 健康状態の把握、適切な休憩設備の確保などが必要であるとしています。
詳しくは↓
http://www.mhlw.go.jp/topics/2008/05/tp0514-1.html
【熱中症に関する資料】
労働調査会では、ただいま「熱中症予防対策(全12頁)」を無料公開中です。【関連セミナー案内】
テーマ:WBGT(湿球黒球温度)指数を使った熱中症対策 日時:6月19日(木)14時から16時茨城産業保健推進センター 概要:WBGTは、労働環境における作業者がうける暑熱環境による 熱ストレスの評価を行う簡便な指標です。熱中症指標計(WBGT‐113) を用いた実習を行います。

いじめ・嫌がらせの相談が大幅増加/茨城労働局、総合労働相談

先月23日の茨城労働局発表によると、平成19年度に寄せられた 解雇、いじめ・嫌がらせ、労働条件の引下げ、退職勧奨などの民事上の トラブルに関する個別労働関係紛争に関する相談件数は4,224件にのぼりました。
このうち解雇に関する相談が1,009件と最も多くなっていますが、 平成17年度をピークに2年連続して減少、一方、いじめ・嫌がらせの 相談件数が618件と、前年度に比べ大幅に増加(150件・32.1%増)し、 これまでで最多になっていることがわかりました。
厚生労働省発表「個別労働紛争解決制度の利用が引き続き拡大」↓
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/05/h0523-3.html
【関連セミナー】
テーマ:労働契約法と労務管理~安全配慮義務、労働契約の締結から変更、終了まで~
日時:7月24日(水)14時から17時茨城県立図書館視聴覚ホール
概要研修では、安全(健康)配慮義務、労働契約の締結から変更、終了まで、 これまでの基本的な判例などを基に、産業保健スタッフ等として理解 しておくくべき事項について具体的に解説します。

センターからのお知らせ(お役立ち情報等)

体験心とからだの健康指導/中災防THPデモンストレーション事業

中央労働災害防止協会(中災防)では、企業に対し健康づくりの専門家を 派遣し、一般健診等の結果を活用した健康指導や健康測定(運動機能検査)を、 無料で行うサービスを提供しています。
指導員は労働者健康保持増進サービス機関・指導機関(THPサービス機関) のスタッフ。
実施内容は、個別健康指導と集団型健康指導をパッケージとして、 1事業場あたり20時間までです。
利用を希望する事業場は、近くのTHPサービス機関に利用の意向を申し込んで ください(電話又はFAX)。
実施期間は9月1日~来年2月28日まで。
厚生労働省の委託事業ですから、無料で利用できます。
詳しくは↓
http://www.jisha.or.jp/

【関連セミナー案内】
テーマ:平成20年度産業看護職研修

  1. 8月23日(土)13時から16時茨城産業保健推進センター
    産業保健活動の理念と健康管理体制、わが国における労働衛生の実態、 産業看護活動の実態、諸外国における産業保健と産業看護及び 雇用制度と形態等について
  2. 8月30日(土)13時から16時茨城産業保健推進センター
    労働時間制度の概要、労働形態の変化~報酬形態、勤務形態の 多様化~など。

新着図書・教材情報(無料貸出し)

  • コーチング・スキル実践講座~傾聴・承認・質問(DVD106分)
    【概要】
    コーチングで特によく使われる〈傾聴・承認・質問〉のスキルを練習 するための教材。コーチングの講師が、スキル実践の考え方・進め方を わかりやすく解説しながら、EXERCISEへと導いていきます。
  • メンタルヘルスのためのストレスコーピング入門(全3巻DVD16~24分)
    【概要】
    第1巻ストレスとコーピング(約24分) 第2巻ストレス原因へのコーピング(約16分) 第3巻ストレス反応へのコーピング(約20分) 「ストレスへの対処行動」をコーピングと呼びます。
    多様な方法があり、人によって 適切な方法も変わってきますが、当然ながら基本原則・スキルがあります。
  • 飲酒運転根絶宣言~企業の取り組み(DVD22分)
    【概要】
    全国の企業で、社員の飲酒運転防止のため様々な取り組みを行っています。
    この作品は、運転者を対象として、飲酒運転根絶の取り組みをしている 事業所を例に取り上げ、事故防止を強く訴えるものです。

 

産業保健Q&A

産業保健Q&Aは、今回はお休みです。


産業保健に関するご相談は、 こちらから

これから受講できるセミナー案内(無料)「2008年」

  • 6月19日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「WBGT(湿球黒球温度)指数を使った熱中症対策」
    日医(基礎後期1・実地1、生涯専門1・実地1)
  • 6月20日(金)18:30~20:30:ワークヒル土浦(土浦市木田余東台4-1-1)
    テーマ「産業・医療の場で使われる放射線と健康への影響について」
    日医(基礎・後期2、生涯・専門2)
  • 7月3日(木)14:00~16:30:(株)小松製作所茨城工場(ひたちなか市長砂163-46)
    テーマ「防じんマスクの適正な選び方・有効な着用方法」
    日医(基礎・実地2、生涯・実地2)
  • 7月10日(木)14:00~17:00:日立ハイテクノロジーズ那珂事業所(ひたちなか市市毛882)
    テーマ「産業医の職場巡視について(実習)」
    日医(基礎・実地3、生涯・実地3)
    ※日程が6月26日(木)から変更になりました
  • 7月17日(木)14:00~16:00:文部科学省研究交流センター(つくば市竹園2-20-5)
    テーマ「企業における喫煙対策と禁煙支援について」
    実力アップ(Ⅳ-4-(8))
  • 7月24日(木)14:00~17:00:茨城県立図書館(水戸市三の丸1-5-38)
    テーマ「労働契約法と労務管理~安全配慮義務、労働契約の締結から変更、終了まで~」
    日医(基礎後期3、生涯更新2、専門1)
  • 7月31日(木)18:30~20:30:県西生涯学習センター(筑西市野殿1371)
    テーマ「産業保健における口腔疾患~生活習慣と口腔疾患、その予防について」
    実力アップ(Ⅳ-3-(1))
  • 8月7日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「職場における化学物質による健康障害防止に係るリスク評価(リスクアセスメント)について」
    日医(基礎・後期2、生涯・専門2)申請中
  • 8月23日(土)13:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「平成20年度産業看護職研修(1)」
    実力アップ予定
  • 8月28日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「禁煙治療の実際について」
    日医(基礎・後期2、生涯・専門2)申請中
  • 8月28日(木)18:30~20:30:茨城産業保健推進センター
    テーマ「長時間労働対策に関する面接指導の手法とその実践」
    日医(基礎・前期2、生涯・更新2)申請中
  • 8月30日(土)13:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「平成20年度産業看護職研修(2)」
    実力アップ予定

注:「日医認定」とあるのは、日本医師会認定産業医制度の単位認定研修(生涯研修)です。
「実力アップ」とあるのは、日本産業衛生学会産業看護職継続教育実力アップコース認定(基礎コース修了者)です。

コラム水戸南町だより

メタボの増加は地球温暖化に寄与?

ジュネーブ発先月16日のロイターは、英ロンドン大学の研究チームが 「肥満が地球温暖化に寄与している」との見方を示した、と報じました。
肥満の人々はそうでない人たちに比べ、移動により多くの燃料が必要 となったり、より多くの食料を食べたりするため、結果として温室効果ガスの 排出や、大気汚染など、環境悪化につながるおそれがあるというのです。 肥満の人が毎日消費する基礎エネルギーは約1,680kcalで、身体活動に 約1,280kcalを使っています。これは標準体重の人より18%多くなります から、それが食料の需要を増加させます。
多くの農業は石油を消費して生産性を高めていますし、また食料の輸入により 輸送燃料を多量に消費します。結果として地球の温暖化につながるというのでしょう。 こうなると、メタボは百害あって一理なしどころか、”人類の敵”とみなされ そうな勢いです。しかし、いくらメタボ対策が国の重要課題となっているとはいえ、 そこまで言わなくてもという気にはなります。 そりゃ、肥満の人が車に乗れば燃費は悪くなるのは当然です。 この考えを突き詰めていくと最後には、車に重量税があるように、「人も 体重によって住民税の税率を変えよう!」、「体重別電車・バス賃制度」 などという論拠になりかねません。はては「肥満税」なんていうことになったら、 益々肩身の狭い思いをします(物理的には無理ですが)。

実際、食料の輸送に使う石油などの燃料も、より多く必要となるのは肥満だけ が問題ではありません。 食材がどのくらいの距離を運ばれているかを表すものに「フード・マイレージ」 (重さ×距離)という考え方があります。 食料を運搬するのに船舶、航空機、トラック等が使用され大量の石油が 必要です。当然多量の二酸化炭素(CO2)が発生します。
それを数値化したのが 「フード・マイレージ」という指標で、輸送距離×重量=t・km(トン・キロメートル) の計算で食料移動に関するマイレージが算出されます。 イギリスの消費者運動家ティム・ラング氏が1994年に「フード・マイル」 という言葉で提唱したもので、これをきっかけに、なるべく自分たちの地域内で 生産された農産物を食べることで、CO2排出など環境への負担を減らそうという 運動が欧州の消費者団体などで広がりました。
ヘルシーメニューのひとつ「カボチャ」を例にとっても、その環境への負担を 考えてみると、かつては国産が主だったものが今では、季節が正反対の南半球の ニュージーランド産や、安いメキシコ産が店頭を飾っています。
これを、東京を起点にフード・マイルで計算すると、産地が群馬県産、 北海道産、メキシコ産の場合で、それぞれ117.1km、831.1km、11,319kmとなり、 距離間の比は1:7:97の差になります。 移動・運搬手段によるCO2の排出量の差を加味しても、産地の違いによる 移動距離ひとつで環境負荷に大きな差が出てしまうことがわかります。 つまり、意識して国産野菜を買うことは、輸入野菜を買うよりCO2を 減らしたことになるのです。
農林水産省の試算によりますと、日本のフード・マイレージは世界中で 群を抜いて大きく、国民一人当たり7,093t・kmと、2位の韓国の6,637t・km、 3位のイギリスの3,195t・kmを大きく引きはなして、ダントツの一位になっています。 わが国の食料供給構造が、如何に長距離輸送を経た大量の輸入食料に依存 していることがわかります。 しかし、この勢いは止まりそうにありません。 食料システムの「グローバリゼーション」により、ただ安いからと 中国を始めとする海外からの食料輸入は増えるばかりです。 季節外れの野菜などの南半球からの輸入も増えています。

ところで話は肥満にもどります。 肥満の人は寿命が短いぶん、生涯に移動する距離や食料の摂取量は少なく なる可能性があり、地球温暖化防止に役立っているという 反論も聞こえてきました。
また、肥満の人は「脂肪」という形で炭素を体内に固定しているのだから、 個体として保持する内臓脂肪は、明らかに二酸化炭素(CO2)削減に繋がる?とも・・・ むなしい反論には違いありませんが、肥満ばかり目の敵にするより、 食料問題を通じてのライフスタイルの見直す、すなわち自分のライフスタイルを スリム化していくことが、環境負荷を減らして地球にやさしいということに なると思います。 特に、CO2削減問題については、これからは間違いなく、われわれ一人ひとりが 重要な当事者になります。 不必要な自動車やエレベーターなどの利用を控え、適切な食生活を送るなどは 日常の生活習慣を見直すことから始まります。これは、社員一人ひとりの メタボリック・シンドローム対策とも相通ずるものではないでしょうか。


次回の第24号は、平成20年6月下旬配信予定です。
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