いばらき産保ニュース 第26号

発行日:2008/7/18
ホームページ:https://ibarakis.johas.go.jp/
発  行:独立行政法人 労働者健康福祉機構
茨城産業保健推進センター 所長 小林 敏郎


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【新着情報】
【センターからのお知らせ(お役立ち情報等)】
【新着教材情報】
【産業保健Q&A】
【主なセミナー案内】
【コラム:水戸南町だより】

新着情報

定期健康診断の有所見率は49.9%(平成19年)/厚生労働省

厚生労働省は7月4日、平成19年における業務上疾病発生状況 (業種別・疾病別)、じん肺管理区分の決定状況(年次別)、 定期健康診断実施結果(年次別)、同(業種別)などの業務上 疾病発生状況等調査結果を公表しました。
それによれば、業務上疾病発生件数は8,684件と前年を300件以上 上回り、10年ぶりの高水準となっています。 また定期健康診断実施結果でも、有所見率が49.9%と昨年(49.1%)に つづき過去最高を記録しています。
項目別有所見率では、血中脂質検査の 30.8%がトップで、以下肝機能検査の15.1%、血圧の12.7%、心電図の 9.2%、血糖検査の8.4%の順で、順位は不動です。 ちなみに平成20年度から25年度を目標年度とする5カ年計画、第11次 労働災害防止計画(11次防)では、定期健康診断における有所見率の増加に 歯止めをかけ、減少に転ずることを目標に掲げています。
業務上疾病発生状況等調査結果について詳しくは↓
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/index.html

【関連セミナー案内】

  • テーマ:長時間労働対策に関する面接指導の手法とその実践
    日時:
    8月28日(木)18時30分から20時30分茨城産業保健推進センター
    10月7日(火)18時30分から20時30分日立メディカルセンター
    概要:これまで行ってきた面接指導の経験を基に、小規模事業場等を対象 とした面接指導を行うに当たっての留意事項、小規模事業場ならではの 問題点などを参加者といっしょに考えます。
モデル企業10社の経営トップが「宣言」
/ワーク・ライフ・バランス 推進プロジェクト

厚生労働省は、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)実現のため、 今年度、「仕事と生活の調和推進モデル事業」を実施することとし、日立製作所、 キヤノンなど事業に参加する「モデル企業」10社を選定しているところです。
7月11日、本事業による取組の第一弾として、モデル企業各社の経営トップ から、仕事と生活の調和の実現に向けた決意表明、「トップ宣言」が発表されました。 今後、モデル企業各社では、この「トップ宣言」に基づき具体的な取組を 進め、来年3月を目途に、仕事と生活の調和を実現するための取組事項、 達成目標等を盛り込んだ「アクションプログラム」を策定することになります。
決意表明、「トップ宣言」について詳しくは、↓
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/07/h0711-1.html

あなたが主役明るい職場と健康づくり/08年度全国労働衛生週間

厚生労働省は7月8日、今年度の全国労働衛生週間実施要綱を発表しました。
「あなたが主役明るい職場と健康づくり」をスローガンに、事業場での 労働衛生意識の高揚と自主的な労働衛生管理活動の推進に取り組みます。
9月1日~30日を準備期間、10月1日~7日を本週間とし、団体及び 各企業で様々な行事が行われます。
平成20年度全国労働衛生週間の実施要綱は↓
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/07/h0708-1.html

労使の話合い事項、「健康管理」や「職場環境」が増加

厚生労働省は4日、労働組合を対象に実施した「2007年団体交渉と 労働争議に関する実態調査」結果を発表しました。
それによると、過去3年間における労使間の話合いで上位を占めた事項は 「雇用・人事」(81.2%)、「賃金」(78.3%)、「労働時間」(76.3%) などですが、02年の前回調査との比較では「職場環境」(73.2%、前回67.5%)、 「健康管理」(65.6%、前回54.7%)、「所定外・休日労働」(61.3%、前回56.9%) などを取り上げた組合の割合が増加しました。
調査結果について詳しくは↓
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koushou/2007/index.html

センターからのお知らせ(お役立ち情報等)

国が定める基準を満たした相談機関を事業場に紹介/労働者健康福祉機構

労働者健康福祉機構では、働く人の心の健康をサポートするため、 「メンタルヘルス不調者等の労働者に対する相談機関による相談促進事業」 (厚生労働省委託事業)をスタートさせました。 事業内容は、事業者と契約を結び、有料で個々の労働者の心の健康に関する 面接相談を行う相談機関(EAP等)のうち、国が定めた基準を満たした機関を 登録し、事業場に対し紹介するというもの。 職場でのメンタルヘルス不調者の早期発見と適切な対応が各企業の課題 となる中、メンタルヘルス相談機関が提供するサービスの質的向上と、 企業がこうした外部相談機関を利用するうえでの情報を提供することを 目的としています。 また、産業保健推進センターに「メンタルヘルス対策支援センター」を 設置し、事業場や事業主団体に対して、登録メンタルヘルス相談機関の紹介や 国が定めたメンタルヘルス指針等の普及を図ります。 なお、相談機関の登録の受付開始は本年9月の予定です。
職場におけるメンタルヘルス対策に関する指針について(厚生労働省)↓
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html

独り職場の駆け出し産業看護職勉強会/テーマは労働基準法

昨年から好評をいただいております「独り職場の駆け出し産業看護職勉強会」を、 10月28日(火)14時から開催いたします。 学生時代に産業保健を学んだ事がない・・・ 臨床の経験しかなくて何をしたら良いのか解らない・・・ 独り職場で相談する先輩がいない・・・ という産業看護職の皆さんが集まり、産業保健業務と看護職の役割を共に学び、 仲間をつくる事を目的とした勉強会です。 今回のテーマは、少し話題を変えて労働条件について。題して「保健室に 常備したい労働基準法の基礎知識(Ⅰ)~わが国の労働時間制度について~」。 また、参加者による情報交換も行います。 お申込は、当センターホームページ「セミナー開催予定表」からどうそ。

シンポジウム/メンタルヘルス疾患による休業者の職場復帰対策について(再掲)

心の健康問題により休業している労働者が増加していますが、その職場復帰が いま問題となっています。 また、復職後に調子を崩して休職を繰り返すケースも少なくなく、スムースな 職場復帰へのサポートが欠かせません。
茨城産業保健推進センターでは、こうした問題について、主治医や産業医は もとより、研究者や労働関係法の専門家の方々が、事例の紹介なども含め 様々に議論するシンポジウムを開催いたします。
日時:平成20年9月20日(土)15時~18時
会場:茨城県医師会4階会議室
対象者:産業医、精神科・心療内科医、産業看護職、人事労務担当者等
入場無料。お申込は茨城産業保健推進センターまでEメール、FAX又は郵送で。

新着図書・教材情報(無料貸出し)

  • 助けを求めない人をどう援助するか全2巻(DVD32~52分)
    【概要】
    アルコールをはじめとするアディクションは、周囲の人たちを 巻き込みながら進行していきます。その複雑に絡み合った糸をほぐし、 解決を見出していくには? 日本で初めての本格的な介入(インタベンション)技法のビデオ。 ある一家のエピソードに沿って、周囲の対応と介入のプロセスを わかりやすく解説します。 第1巻では、「否認」「イネイブリング」を詳しく扱います。 第2巻では、実際に介入を試みます。

産業保健Q&A

産業医共同選任に関する助成金/単独申請も可能に

【質問】
小規模事業場が産業医を共同選任した場合の費用の助成を、単独事業場でも 申請が可能になったそうですが、手続きについて教えてください。

【回答】
労働者数50人未満の小規模事業場の事業者が、他の事業者と共同して 産業医の要件を備えた医師を選任・契約し、職場巡視、長時間労働者への 面接指導等の産業保健活動を実施した場合、その費用の一部又は全額 (限度があります)が助成されます。
これを「小規模事業場産業保健活動支援促進助成金制度」といいますが、 平成20年4月から制度が改正され、単独の事業場でも申請が可能になりました。 手続きには、従来どおり事業場グループを形成して一括して申請する方法 もありますので、個々の事業場が単独で申請する場合は、まず最初に申請書 (様式1号-2)を産業保健推進センターに提出してください。

産業保健Q&Aの続きは、こちらをご覧下さい。
産業保健に関するご相談は、 こちらから

これから受講できるセミナー案内(無料)「2008年」

  • 7月24日(木)14:00~17:00:茨城県立図書館(水戸市三の丸1-5-38)
    テーマ「労働契約法と労務管理~安全配慮義務、労働契約の締結から変更、終了まで~」
    日医(基礎後期3、生涯更新2、専門1)
  • 7月31日(木)18:30~20:30:県西生涯学習センター(筑西市野殿1371)
    テーマ「産業保健における口腔疾患~生活習慣と口腔疾患、その予防について」
    実力アップ(Ⅳ-3-(1))
  • 8月7日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「職場における化学物質による健康障害防止に係るリスク評価(リスクアセスメント)について」
    日医(基礎・後期2、生涯・専門2)申請中
  • 8月23日(土)13:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「平成20年度産業看護職研修(1)」
    実力アップ申請中
  • 8月28日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「禁煙治療の実際について」
    日医(基礎・後期2、生涯・専門2)申請中
  • 8月30日(土)13:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「平成20年度産業看護職研修(2)」
    実力アップ申請中
  • 9月3日(水)14:00~17:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「心肺蘇生法とAED(自動体外式除細動器)を用いた救急蘇生法」
  • 9月4日(木)14:00~16:00:ワークヒル土浦(土浦市木田余東台4-1-1)
    テーマ「局所排気装置・プッシュプル型換気装置のしくみ ~有害物の使用量と換気能力」
    日医(基礎・後期2、生涯・専門2)申請中
  • 9月20日(土)15:00~18:00:茨城県医師会(水戸市笠原町489)
    シンポジウム「メンタルヘルス疾患による休業者の職場復帰対策について」
    日医(基礎・後期3、生涯・専門3)申請中
  • 9月25日(木)14:00~16:00:アサヒビール㈱茨城工場(守谷市緑1-1-1)
    テーマ「職場巡視のポイントと課題の把握の仕方」
    日医(基礎・実地2、生涯・実地2)申請中
  • 10月1日(水)14:00~17:00:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「作業環境測定機器の取り扱いと簡易な作業環境測定方法について ~粉じん計、酸素濃度計、騒音計、照度計、風速計、ガス検知管、熱中症指標計など~」

注:「日医認定」とあるのは、日本医師会認定産業医制度の単位認定研修(生涯研修)です。
「実力アップ」とあるのは、日本産業衛生学会産業看護職継続教育実力アップコース認定(基礎コース修了者)です。

コラム水戸南町だより

パワハラはセクハラより猛し

上司の度重なる叱責などを苦に自殺し、平成17年に労災認定された社員 (死亡時43歳)の遺族が、大手建設会社(東京都)に慰謝料や逸失利益など 約1億4,500万円を求めた訴訟の判決が今月1日、松山地裁でありました。
判決は、「上司の叱責などは違法だった」とパワーハラスメント (地位を利用した嫌がらせ)と自殺の因果関係を認め、約3,100万円の 支払いを命じました。 昨年、パワーハラスメントによるうつ病について労災認定を認める判決や 労働保険審査会の裁決が相次ぎました。そして今回は、民事でも会社の 安全配慮義務違反も認め、損害賠償を命じました。
過労や仕事によるストレス等を原因に自殺した場合、会社に命じられる 損害賠償額は1億円を超える場合も少なくありません。さらに裁判費用や 人件費を加えると莫大な出費になります。
人命をお金に換算することに違和感を覚える方も多いと思いますが、 こうした訴訟が企業にとってプレッシャーとなり、予防効果をもたらす とすれば、歓迎すべきことかもしれません。

ところが、パワハラについて現状でどのような対策がとられているか というと、あまり具体的な話は聞こえてきません。
セクハラ(性的嫌がらせ)に比べ、概念が広く認知されているとも言い難い ため、被害に遭っている本人もそれがパワハラだと認識していなかったり、 加害者にも自覚が無いケースが多いようです。 多くのパワハラ上司は、自分が発する言葉の重みをそれほど深刻に捉えて おらず、あくまでも「指導の範囲」だと思い込んでいるようです。 なかには「俺は口が悪いのがキャラだから」「毒舌も愛情の裏返し」と 開き直るケースもあるとか・・。

カナダで行われた研究で、職場でのいじめが、セクハラより深刻な問題と なっていることが明らかになっています。
マニトバ大のサンディ・ハーシュコビス氏らが、アメリカ心理学会が 共催した会合で発表したものですが、セクハラといじめを経験した従業員 それぞれの比較など、過去に行われた21年分の研究110件をあらためて分析 したところ、肉体的・精神的な悪影響はいじめ被害者の状態の方がより深刻 だったといいます。
また、いじめを受けている人は全般的に健康状態が優れず、より強い ストレスや怒り・不安を感じており、仕事に熱中できずにやめてしまう 傾向が強いとしています。 ということは、パワハラは単にその被害に遭った社員や上司個人の人格の 問題ばかりでなく、企業がかかえる「病理」と捉えたほうがよさそうです。
かつては多くの職場は圧倒的に男性優位で、男性上司から女性への性的な いやがらせがしばしば起こり、また周囲がこうした行為をなかば当然視したため、 女性が退職に追い込まれたりすることが多く発生しました。 現在は男女雇用機会均等法で、職場において行われる性的な言動に対する 事業主の雇用管理上の配慮義務がうたわれるようになりました。
パワハラがセクハラと違うのは「性的な言動」という点だけ。職権などの パワーを背景にして、本来の業務の範疇を超えて、継続的に人格と尊厳を 侵害する言動を行い、働く意欲を減退させ、あるいは雇用不安を与えるという 根本的問題は同じです。
パワハラについて、職場の士気の低下や社員のパフォーマンスに悪影響を 与えることをしっかり認識し、定期的にメンタルヘルスや職場のストレスに 関して実態調査を行ったり、苦情窓口を設置するなど、会社として積極的に パワハラ対策に取り組むことが大切ではないでしょうか。

 

次回の第27号は、平成20年8月上旬配信予定です。
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