いばらき産保ニュース 第33号

発行日:2008/11/7
ホームページ:https://ibarakis.johas.go.jp/
発  行:独立行政法人 労働者健康福祉機構
茨城産業保健推進センター 所長 小林 敏郎


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新着情報

アスベスト労災883事業所を公表/石綿ばく露作業従事者に注意喚起

厚生労働省は先月31日、昨年度にアスベストによる肺がんや中皮腫で 労災認定などを受けた従業員の勤務先として、883の事業所名を公表しました。
公表の目的は、これまで行ってきた過去4回と同様、公表事業場でこれ まで業務に従事したことがある労働者に対して、石綿ばく露作業に従事した 可能性があることを注意喚起することなど。 
883事業所は、07年度に肺がんや中皮腫で労災認定を受けた1,002人と、 石綿健康被害救済法(アスベスト新法)の特別遺族給付金の支給決定対象と なった99人の計1,101人の勤務先。
このうち、特定できない事業所などを 除いたもので、718事業所については今回初めて公表されています。 
厚生労働省では、各事業所に対し退職者に健康診断受診や労災申請を 呼びかけるよう要請するとともに、医師の理解を促すため、全国の医療機関に 事業所一覧や認定基準などの資料を配る予定です。 
厚生労働省発表↓
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/10/h1031-1.html
石綿ばく露作業による労災認定等事業場一覧表
(第1表)↓
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/10/h1031-1a.html
(第2表)↓
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/10/h1031-1b.html
なお第2表は、建設業のように、事業場の所在地(事務所)と異なる場所 (現場)で石綿作業が行われていたケースです。
建設労働者の多くは、 事業場を転々としながら多数の建設現場で就労する中で石綿作業に従事 しているため、分けて公表しています。
厚生労働省「アスベスト(石綿)についてQ&A」↓
http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/07/tp0729-1.html
【参考:濃度基準とリスク】
アスベストは浮遊粉塵であると同時に繊維物質であるので、単位は本(f) で表されます。 現在の職場の濃度基準は150本/?です。また、環境省が設定している敷地 境界基準値は10本/?です。 またヘルシンキクライテリアでは、「石綿25本/ml×年」の曝露量を、 肺がん発症率が2倍となる発症リスクに相当する指標としています。これは、 500本/?の環境で50年間労働することに相当します。但し、石綿吹付作業や 断熱工事などの高濃度曝露があった場合には、もっと短い期間で肺がん発症 リスクが2倍となり、造船業や建設業などの中等度曝露でも、5~10年従事 しただけでリスクが2倍になる可能性があります。 なお肺がんについては、石綿ばく露と喫煙との組み合わせで肺がんの発症は 相乗的に上昇するとの報告があり、禁煙は重要です。 
【相談の受付】
茨城産業保健推進センターでは、石綿による健康障害について、産業保健 関係者、石綿作業に従事した労働者及びその家族の方々からのご相談を、常時 (平日午前9時~午後5時に限る)受け付けています。 電話番号029-300-1221。直接、お電話してください。

平成19年度は約272億円/監督指導による賃金不払残業の是正結果

残業したのに、その時間に応じた割増賃金が支払われない(賃金不払残業) は、労働基準法に違反するばかりでなく、長時間労働の温床となっています。 厚生労働省は、先月24日、平成19年4月から平成20年3月までの1年間に、 全国の労働基準監督署が割増賃金の支払について労働基準法違反として是正を 指導した事案のうち、1企業当たり100万円以上の割増賃金が支払われた事案の 状況を取りまとめ、公表しました。 それによれば、是正の指導を受けた企業数は1,728企業、対象労働者数は 179,543人、支払われた割増賃金の合計額は272億4,261万円でした。 1企業での最高支払額は30億2,279万円(商業)で、1,000万円以上の割増 賃金の支払が行われた企業数は275企業(全体の15.9%)ありました。 また、19年度の是正企業数は、18年度の1,679企業を超えてこれまでで最高、 是正金額も15年度の238億円を超えて最高でした。
詳しくは↓
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/10/h1024-1.html
【参考:「労働時間適正化キャンペーン」の実施】
厚生労働省では、依然としてみられる長時間労働の解消を図るため、11月を 「労働時間適正化キャンペーン」期間として、集中的に周知啓発に取り組んで います。 また11月22日(土)勤労感謝の日の前日はフリーダイヤルを設置し、全国 一斉で都道府県労働局の担当官が、長時間労働の抑制等のための電話相談に応じて います。 「労働時間相談ダイヤル」のフリーダイヤル番号は0120-897-713です。

医療現場におけるホルムアルデヒドについて/規制等に係る小検討会報告書案

先月8日、厚生労働省において平成20年度第5回「少量製造・取扱いの 規制等に係る小検討会」が開催され、医療現場におけるホルムアルデヒド規制 について整理が行われ、本年内を目途にとりまとめられる予定です。 ホルムアルデヒドについては、「平成18年度化学物質による労働者の健康 障害防止に係るリスク評価検討会報告書」において、関係法令の整備を検討 すべき旨の検討結果が出され、昨年12月に労働安全衛生法施行令及び特定化学 物質障害予防規則等が改正されたところです。 その結果、従来の第3類物質から第2類物質に変更され、これを製造し又は 取り扱う作業場については、ガス、蒸気等の空気中への発散の抑制、作業環境 測定の実施等の規制が追加されています。 今回検討されたのは、作業環境測定の実施、作業主任者の選任、発散抑制 装置の設置について。整理では、病理学的検査等においては定期的に作業環境 測定を行い、その結果に基づき作業環境改善を行うことが求められるとする 一方で、手術室内における発散抑制装置については、感染防止のため陽圧に 保つ必要があることや、装置の設置が医療行為を妨げること等から、局所排気 装置等の設置が著しく困難な場合があるとしています。
第5回「少量製造・取扱いの規制等に係る小検討会」について
詳しくは↓ 
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/10/s1008-8.html 

【関連セミナー】

  • テーマ:化学物質ばく露による健康障害-診断・治療と予防、管理について
    日時:平成21年1月22日(木)15:00~17:00つくば国際会議場(つくば市)
    概要:化学物質による健康障害を予防するには、化学物質の危険・有害因子 を特定し、それぞれのリスクを評価し、それに基づいてリスクの低減を 実施していく化学物質管理が必要となっています。
    研修会では化学物質 ばく露による健康障害-診断・治療と予防、管理について講義します。
時間額676円に/茨城県最低賃金改定

茨城県最低賃金が、本年10月19日から時間額676円に改定されました。 
従前より、時間あたり11円引上げされています。 茨城県最低賃金は、本県内で事業を営む使用者とその事業場で働くすべての 労働者(臨時、パートタイマー、アルバイト等を含む)に適用されます。

センターからのお知らせ(お役立ち情報等)

「過重労働・メンタルヘルス対策に関する研修会」と「精神科医等の ための産業保健研修会」/厚生労働省委託事業

昨今、過労死などの労働者の過重労働による健康障害や職場でのストレスに 起因する精神障害が多発し、大きな関心を集めています。 産業医学振興財団は、厚生労働省から委託を受けて、労働者の過重労働・ メンタルヘルス対策に関する研修として、産業医等の医師を対象とする「過重 労働・メンタルヘルス対策に関する研修会」と「精神科医等のための産業保健 研修会」を開催します。
【茨城会場について】
平成20年12月20日(土)
つくば国際会議場(つくば市竹園2-20-3029-861-0001)

  • 過重労働・メンタルヘルス対策に関する研修会13:20~17:20
    1階大会議室102にて
  • 精神科医等のための産業保健研修会16:00~19:20
    4階小会議室402にて
メンタルヘルス対策関連パンフレット/中央労働災害防止協会ホームページ

「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(平成18年3月31日健康 保持増進のための指針公示第3号)に示されているように、事業場における 心の健康づくり体制の整備やメンタルヘルスケアの実施は重要です。
このたび中央労働災害防止協会ホームページに、パンフレット「心の健康 づくり事例集~職場におけるメンタルヘルス対策~」(全13P)と「こころの 健康気づきのヒント集」(全15P)が掲載されました。
心の健康づくり事例集↓ 
https://kokoro.mhlw.go.jp/brochure/supporter/files/H21_kokoro_jirei.pdf
こころの健康気づきのヒント集↓ 
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000186120.html

【関連セミナー案内】

  • テーマ:心の病を予防する~インターネットによるメンタルヘルス チェックの有用性について~
    日時:平成21年1月19日(月)15時から17時国民宿舎水郷(土浦市大岩田255)
    概要:心の病を予防するには”気づき”が重要であり、そのためには インターネットを利用したセルフチェックシステムも有効です。 また、セルフチェックシステムにより、職場としての「ストレス傾向」 を評価することもできます。 研修会では、セルフチェックシステムについて具体的に説明する とともに、その有用性について検証します。
「働く人の心の健康相談室」の利用状況を取りまとめ

センターでは、本年2008年4月から9月までの、「働く人の心の健康 相談室」の利用状況を取りまとめました。
その結果、相談者では年代別では30才代が6割を占め、相談内容では 「職場の問題」についての相談が一番多く、31.7%を占め、次いでうつ病など 「心身の病気」が28.6%でした。
また、相談者は勤労者本人が8割を占めましたが、周囲の人が本人の 不調に気付くこともあり、上司や親からの相談も2割程度ありました。 これは、ある程度メンタルヘルスに対する関心と理解が高まっている ことの表れであり、「このことは大変よい傾向であると思う」と相談を 担当したカウンセラーも述べています。
詳しくは ↓
https://ibarakis.johas.go.jp/archives/2071
【働く人の心の健康相談室】
毎月、第2・第4月曜日(祝日・年末年始等除く)午後3時~午後6時、 専門のカウンセラーが、面談又は電話により、勤労者のメンタルヘルスに 関するご相談を受け付けています。 対象者は、勤労者本人とその家族、上司・同僚等及び産業保健関係者、 企業の労務担当者。
相談内容は、仕事上のストレスによる精神的な悩み、 職場の対人関係の悩み等の勤労者生活を通しての悩みに関する相談などです。 なお、プライバシーに関しては十分に配慮いたします。 相談は予約制。直接、茨城産業保健推進センターあて電話又はE-mailでお申込ください。
働く人の心の健康相談室について ↓
https://ibarakis.johas.go.jp/consultation/mendan/kokoro-2

新着図書・教材情報(無料貸出し)

産業保健ハンドブックⅠ石綿関連疾患
― 予防・診断・労災補償 ―(図書231p)
森永謙二編日本医師会推薦/産業医学振興財団

【概要】
石綿は、現在では製造・使用等が禁止されていますが、これまで長期間に わたって広範な産業の場で使用されてきました。また、その大半が建材として 使用されたため、既存の建築物等の解体、改修工事等によるばく露等によって、 今後とも石綿関連疾患の増加が心配されています。 本書は、石綿に関する基礎知識、石綿関連疾患の診断から労災補償及び救済、 さらには予防対策と、石綿に関する情報をほとんど網羅しており、産業医に とって好著といえます。(※本書は再掲です。)

増補改訂版アスベスト関連疾患日常診療ガイド
(図書110p 症例等写真CD付き)
独立行政法人労働者健康福祉機構編/労働調査会発行

【概要】
アスベスト関連疾患の基礎知識から診断・治療のポイントまでを平易に 解説しています。増補改訂版では、国内でも非常に貴重な中皮腫症例を提示、 さらに病理の面も新規に書き起こしました。付録CD-ROMも増補改訂に対応。

産業保健Q&A

育児休業中の労働者について、定期健康診断は実施しなくてもさしつかえない

【質問】
育児休業中で、定期健康診断を受診しなかった労働者がいました。このような 育児休業中の労働者に、定期健康診断を受けさせる事業者の義務はあるので しょうか?

【回答】
労働安全衛規則は「事業者は常時使用する労働者に対して医師による健康診断 を行わなければならない」と規定しています。
休業中の労働者について、これを適用除外する規定はありませんので、原則的 には健康診断の対象となります。 しかし、厚生労働省労働基準局長から通達(平4.3.13基発第115号 「育児休業等により休業中の労働者に係る健康診断の取扱いについて」)が 示されていていて、育児休業や療養等により休業中の労働者に係る労働安全 衛生法の健康診断(定期一般健康診断のほか、特殊健康診断などが含まれます) やじん肺法の定期健康診断及び指導勧奨による特殊健康診断の取扱いについて、 「定期健康診断を実施すべき時期に、労働者が、育児休業、療養等により休業中 の場合には、定期健康診断を実施しなくてもさしつかえないものであること。」 としています。
従いまして、・・・

産業保健Q&Aの続きは、こちらをご覧下さい。
産業保健に関するご相談は、 こちらから

これから受講できるセミナー案内(無料)
「2008~2009年」

  • 11月13日(木)18:00~20:00:茨城県医師会4階会議室(水戸市)
    茨城産業保健懇談会第1回研修会
    日医(基礎後期2、生涯更新2)、実力アップ(Ⅲ-7-(1)1単位))
  • 11月20日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「騒音の評価と改善の進め方」
    日医(基礎後期1・実地1、生涯専門1・実地1)
  • 11月27日(木)14:00~16:00:旭硝子鹿島工場(神栖市)
    テーマ「産業医の職務の実際と職場巡視について」
    日医(基礎実地2、生涯実地2)
  • 12月1日(月)14:40~16:00:茨城産業保健推進センター研修室
    メンタルヘルス・ケースカンファレンス
  • 12月13日(土)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「職場の様々なストレスに上手に付き合うには~職場で取り組む ストレス対策~
    実力アップ予定
  • 12月18日(木)14:00~17:30:日立シビックセンター(日立市)
    テーマ「母性健康管理研修会」
    日医(基礎後期3.5、生涯専門3.5)予定
  • 12月25日(木)14:00~16:00:ワークヒル土浦(土浦市木田余東台)
    テーマ「産業医ができる作業環境測定~簡易測定器具の取り扱いと評価方法~」
    日医(基礎実地2、生涯実地2)予定
  • 1月15日(木)14:00~16:00:ホテルレイクビュー水戸(水戸市宮町)
    テーマ「石綿関連疾患診断技術研修~基礎研修」
    日医(基礎後期2、生涯専門2)、実力アップ予定
  • 1月19日(月)15:00~17:00:国民宿舎水郷多目的中ホール(土浦市大岩田)
    テーマ「心の病を予防する~インターネットによるメンタルヘルスチェック の有用性について~」
    日医(基礎後期2、生涯専門2)、実力アップ予定
  • 1月22日(木)15:00~17:00:つくば国際会議場(つくば市竹園) テーマ「化学物質ばく露による健康障害-診断・治療と予防、管理について」 日医(基礎後期2、生涯専門2)、実力アップ予定
  • 2月19日(木)14:00~16:00:茨城県立図書館(水戸市三の丸)予定
    テーマ「うつ病」以外の精神疾患にも対応した職場復帰マネジメント手法について」
    日医(基礎後期2、生涯専門2)予定
  • 2月27日(金)18:30~21:30:水戸市医師会(水戸市笠原町)
    テーマ「じん肺症と健康管理について~じん肺症の症状と診断、 じん肺管理区分決定、胸部X線写真の読影等~」
    日医(基礎後期2・実地1、生涯専門2・実地1)予定

【注】「日医認定」とあるのは、日本医師会認定産業医制度の単位認定研修(生涯研修)です。
「実力アップ」とあるのは、日本産業衛生学会産業看護職継続教育実力アップコース認定(基礎コース修了者)です。申請中、又は申請予定も含みます。
また、「予定」とあるのは、変更されることがあります。

コラム水戸南町だより

神は細部に宿りたまう/派遣労働者の労災、派遣先に対し求償

「神は細部に宿りたまう」。ふとそんな言葉を思い出しました。 労働者派遣制度の見直しについて、「日雇派遣の禁止」などをめぐり 労使で攻防が展開され話題を呼んでいます。 その影に隠れてあまり報道されていませんが、派遣労働者の労災補償に ついて、派遣先事業者が故意又は重大な過失によって保険給付の原因となる 労災事故を発生させた場合には、派遣先に対する第三者求償の徹底を 図ることとしてはどうか、という検討がなされています。 事業主の故意又は重大な過失によって発生した業務災害について保険給付を 行った場合、国はその保険給付に要した費用に相当する金額の全部又は一部を 事業主から徴収することができます(労災保険法第31条第1項第3号)。 これを費用徴収制度といいますが、派遣先は派遣労働者の雇用主でなく、労災 保険が派遣元に適用されることから、現行制度上、派遣先から費用徴収をする ことはできません。 一方、派遣先は派遣労働者を指揮命令する立場にあって、派遣労働者について 危害防止のための具体的措置義務を負っています。また、派遣労働者の労働災害 は派遣先の事業場で発生するのが一般的です。 にもかかわらず、派遣先の法律上の災害防止責任が、労災保険制度において 反映されていないのはおかしいというのです。

厚生労働省の資料によれば、近年派遣労働者の労働災害が増加傾向にあり、 休業4日以上の死傷者数は、昨年は04年の8.8倍に増加しています。※ 派遣労働者数は業種によって異なり、また経験年数等も正規社員と異なって いることから一概に比較は出来ませんが、全労働者の死傷者数はむしろ減少して いることから見ても、派遣労働者の労災増加が際立っています。 これについて厚生労働省は、派遣労働の製造業への解禁が労働災害急増の 背景にあると見ていますが、労働相談等に寄せられる事例では、派遣労働者に 対する使用者の安全配慮が十分でないと思われるものや、労災発生後の対応に 問題があるものが少なくないといわれています。 つまり、労災保険は派遣元で加入するため、労災が発生しても対応は 派遣元まかせ。事故が多発しても派遣先のメリット収支率に影響することは ありませんから、ペナルティーを受けることもなく、派遣先は痛痒をまったく 感じないでいられる仕組みになっています。 今月4日、閣議決定された「労働者派遣事業の一部を改正する法律案要綱」 では、

  1. 行政庁は、派遣先の事業主に対して、労災保険法の施行に関し必要な 報告、文書の提出または出頭を命ずることができること、
  2. 行政庁は、派遣先 事業場に立ち入り、関係者に質問させ、または帳簿書類などを検査させることが できること

――などが盛り込まれています。
文言だけを読んでも何のことか分かりませんが、派遣先が故意又は重大な過失 によって保険給付の原因である事故を発生させた場合には、派遣先に対して災害 発生状況及び損害賠償金の支払い状況等を確認するために必要な書類を提出させ、 損害賠償請求権を直接行使することを意味しています。 国は、労災保険法第12条の4に基づいて、保険関係の外にある第三者の行為に よって生じた事故について保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、 保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得することが できるからです。 「江戸の敵を長崎で」ではありませんが、費用徴収が無理なら、第三者求償 によって派遣先に対する災害防止責任を労災保険制度においても追及するという のです。 産業保健スタッフですら、派遣労働者が怪我や健康障害の可能性の高い危険・ 有害業務に従事していたとしても、自らの業務の対象者と考えず、派遣労働者の 数すら把握していないことは珍しくありません。 労働者派遣制度の見直し全体の中で、「そんなの、誰が気づくの?」 というような小さな修正ですが、「天網恢恢疎にして漏らさず」。派遣先の モラルハザードを決して見逃さないということでしょうか。

※派遣労働者の労働災害の現状について↓
http://labor.tank.jp/anei/2004-07haken_rousai.html#001


次回の第34号は、平成20年11月下旬配信予定です。
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