いばらき産保ニュース 第35号

発行日:2008/12/10
ホームページ:https://ibarakis.johas.go.jp/
発  行:独立行政法人 労働者健康福祉機構
茨城産業保健推進センター 所長 小林 敏郎

【新着情報】
【センターからのお知らせ(お役立ち情報等)】
【新着教材情報】
【産業保健Q&A】
【主なセミナー案内】
【コラム:水戸南町だより】

新着情報

残業60時間超の割増率を引上げ/改正労働基準法が成立

改正労働基準法が5日の参院本会議で可決、成立しました。 これにより、時間外労働に対する賃金の割増率(現行25%以上)は、 月60時間を超える部分が「50%以上」となります。 一方、書面による労使協定によって、50%への引き上げ分の割増賃金の 支払いについて、当該割増賃金の支払に代えて有給の休暇(法第39条の規定 による年次有給休暇を除く)を与えた場合においては、厚生労働省令で定める 時間の労働について割増賃金を支払うことを要しないこととされています。 このほか、年次有給休暇の取得を促進するため、労使協定を締結すれば5日 以内の有休を1時間単位で取得できることなどを定めています。 施行は2010年4月の予定。但し、中小事業主(資本金3億円(小売業又は サービス業については5千万円、卸売業については1億円)及びその常時使用 する労働者の数が300人(小売業については50人、卸売業又はサービス業 については100人)以下の事業については、当分の間、割増率の引き上げの 規定は、適用されません。
【解説】
週60時間以上働く労働者の割合は増加傾向にあり、過労死・過労自殺 による労災認定も過去最多になるなど長時間労働は依然として深刻な状況 にあります。
改正法は、こうした健康障害を発生させる時間外労働を抑制 する目的で割増賃金の率を引き上げるものです。 しかし、月60時間超の時間外割増率の50%への引き上げについて、中小企業 は「当分の間」適用猶予とすることなど、労働条件の最低基準を定める 労働基準法においてダブル・スタンダードを認めることとなり、どの程度の 抑制効果を持つのか疑問視する意見もあります。

「労働時間相談ダイヤル」(11月22日)における相談受理結果

厚生労働省では11月22日(土)、各都道府県労働局において全国一斉 で無料の「労働時間相談ダイヤル」を実施しました。
同省では、長時間労働やこれに伴う問題の解消を図るため、11月を「労働時間適正化キャンペーン」期間として集中的に啓発活動を実施 しており、「労働時間相談ダイヤル」もその一環に実施したもの。
その結果、全国で879件の相談が寄せられ、うち長時間労働に関する ものが320件、賃金不払残業に関するものが400件を占めました。
金融・広告業で勤務する労働者からの相談では、毎日深夜まで働いており、 1か月の残業時間は100時間を超え、過労で倒れて点滴を受けたこともある。 健康診断も忙しくて受診できなかったといった、深刻な問題も寄せられています。
詳しくは↓ 
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/11/h1127-2.html
職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策(厚生労働省)↓ 
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html
賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針↓ 
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/10/h1025-2c.html
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について↓ 
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/10/h1025-2a.html

【関連セミナー】

  • テーマ:「うつ病」以外の精神疾患にも対応した職場復帰マネジメント手法について
    日時:平成21年2月19日(木)14:00~16:00茨城県立図書館(水戸市三の丸)
    概要:調査研究結果を説明するとともに、様々な精神疾患にも対応した
    職場復帰マネジメント手法を検討します。
石綿肺を苦に自殺は労災/審査会、労基署決定覆す

先月29日の毎日新聞の報道によると、アスベスト(石綿)によるじん肺 「石綿肺」を発症し、05年3月に自殺した男性(当時68歳)について、 国の労働保険審査会が今年8月、病気と自殺の因果関係を認め、労働基準監督署 の決定を覆して労災と認める裁決をしていました。
石綿関連病を苦にした自殺での労災認定は、支援団体が確認しているだけでも 過去に1例ぐらいで、公になるのは初めて。
審査会は自殺について、「(石綿肺の)症状の悪化で極度の苦痛を伴い、 悲観的になったことが推認できる」と判断しました。
【解説:石綿肺とは】
肺が線維化してしまう肺線維症(じん肺)の一つ。 肺の線維化を起こすものとしては石綿のほか、粉じん、薬品等多くの 原因があげられますが、石綿の高濃度ばく露によって発生する肺線維症を 特に「石綿肺」とよんで区別しています。 職業上石綿粉塵を10年以上吸入した労働者に発症することが多く、 潜伏期間は15~20年といわれており、アスベスト曝露をやめたあとでも 進行することもあります。 症状としては労作時の息切れ、空咳。また、肺のレントゲン写真では、 肺の下側に網状の白い影が認められますが、この影の形状や位置により 他のじん肺と区別することができます。

厚生労働省「アスベスト(石綿)について」Q&A↓ http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/07/tp0729-1.html

【関連セミナー】

  • テーマ:石綿関連疾患診断技術研修~基礎研修
    日時:平成21年1月15日(木)14:00~16:00ホテルレイクビュー水戸
    【概要】

    1. 石綿に関する一般的知識
    2. 石綿ばく露歴の把握方法
    3. 関連疾患の診断
    4. 石綿による労災補償制度等

センターからのお知らせ(お役立ち情報等)

新型インフルエンザ対策ガイドライン等改定(案)/専門家会議資料

先月20日(木)、厚生労働省において第10回新型インフルエンザ 専門家会議が開催され、新型インフルエンザ対策ガイドライン等改定(案) が報告されました。
また、今月1日には「新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザに関する 関係省庁対策会議」は、『新型インフルエンザ対策行動計画』(改定案) 及び『新型インフルエンザ対策ガイドライン』(案)についてパブリック コメントの募集を開始しています。
専門家会議配付資料↓
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/11/s1120-8.html
パブリックコメントについて↓  
http://www.cas.go.jp/jp/influenza/pubcom.html

【関連セミナー】

  • テーマ:新型インフルエンザ対策~準備・対応・対策ガイドライン等について~
    日時:平成21年2月26日(木)14:00~16:00つくば国際会議場(つくば市)
    概要:

    1. 新型インフルエンザの最近の状況
    2. 厚生労働省の新型インフルエンザ対策
    3. 事業所が準備すべき対策とパンデミック時の対応
インフルエンザの基礎知識/普及啓発資料を掲載

厚生労働省は先月27日(木)、同省ホームページにインフルエンザの 予防等基礎知識普及啓発資料パンフレット「インフルエンザの基礎知識」 と「同簡易版」を掲載しました。
ダウンロードして研修会での説明資料、掲示物として利用できます。
詳しくは↓
http://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/file/File.html
平成20年度今冬のインフルエンザ総合対策について、
詳しくは↓
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/index.html

「セクハラ防止ポスター」で社員の意識向上を/21世紀財団

21世紀職業財団はセクシュアルハラスメント防止のポスターをホームページに掲載、紹介しています。
12月は、忘年会シーズン。セクハラが起こりやすいと言われる宴席が 続く季節であり、同財団では、社員の意識向上を図るため企業に 「セクハラ防止ポスター」の掲示を呼びかけています。

新着図書・教材情報(無料貸出し)

リフレッシュ安全衛生委員会~機能する安全衛生委員会を目指して~(DVD22分)

【概要】

安全衛生委員会が形骸化・マンネリ化していませんか?ある職場の重大事故を 契機に、安全衛生委員会が運営改善していく過程をドラマで解説します。

リスクアセスメント~化学物質取扱い作業編~(DVD22分)

【概要】
化学物質取扱い作業におけるリスクアセスメントの進め方を解説。職場で すぐ応用できるリスクアセスメントの実際を伝授します。

産業保健Q&A

石綿工事を監督する職員の健康診断

【質問】
吹付けされた石綿が劣化して飛散しないように、石綿を封じ込めする作業を 外部業者に委託しましたが、作業状況を監督する職員についても石綿に関する 特殊健康診断の必要はあるでしょうか。 但し、常時作業を監督する必要はなく、時折、作業を監視するだけです。
【回答】
石綿等を取り扱い、又は試験研究のため製造する業務に常時従事する労働者 及び在籍労働者で、過去においてその事業場で石綿を製造し、又は取り扱う 業務に常時従事したことのある労働者については、石綿障害予防規則第40条の 規定により、雇入れ時又は当該業務への配置替えの際及び定期(6ヶ月以内ごとに1回) に、石綿に係る健康診断を受けなければならないことになっています。
では、具体的に「石綿等を取り扱う作業」とはどのような作業でしょうか。 厚生労働省のリーフレットには、「石綿にばく露する可能性がある作業」 として以下のようなものを挙げています。

産業保健Q&Aの続きは、こちらをご覧下さい。
産業保健に関するご相談は、 こちらから

これから受講できるセミナー案内(無料)
「2008~2009年」

  • 12月18日(木)14:00~17:30:日立シビックセンター(日立市)
    母性健康管理研修会
    日医(基礎後期3.5、生涯専門3.5)
  • 12月25日(木)14:00~16:00:ワークヒル土浦(土浦市木田余東台)
    テーマ「産業医ができる作業環境測定~簡易測定器具の取り扱いと評価方法~」
    日医(基礎実地2、生涯実地2)
  • 1月15日(木)14:00~16:00:ホテルレイクビュー水戸(水戸市宮町)
    テーマ「石綿関連疾患診断技術研修~基礎研修」
    日医(基礎後期2、生涯専門2)
  • 1月19日(月)15:00~17:00:国民宿舎水郷多目的中ホール(土浦市大岩田)
    テーマ「心の病を予防する~インターネットによるメンタルヘルスチェック の有用性について~」
    日医(基礎後期2、生涯専門2)、実力アップ申請中
  • 1月22日(木)15:00~17:00:つくば国際会議場(つくば市竹園)
    テーマ「化学物質ばく露による健康障害-診断・治療と予防、管理について」
    日医(基礎後期2、生涯専門2)、実力アップ申請中
  • 2月13日(金)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「衛生管理者等スキルアップ研修会(その1基礎知識・作業環境管理・法令編)」
  • 2月19日(木)14:00~16:00:茨城県立図書館(水戸市三の丸)予定
    テーマ「うつ病」以外の精神疾患にも対応した職場復帰マネジメント手法について」
    日医(基礎後期2、生涯専門2)予定
  • 2月26日(木)14:00~16:00:つくば国際会議場(つくば市竹園)
    テーマ「新型インフルエンザ対策~準備・対応・対策ガイドライン等について~」
    日医(基礎後期2、生涯専門2)予定
  • 2月27日(金)18:30~21:30:水戸市医師会(水戸市笠原町)
    テーマ「じん肺症と健康管理について~じん肺症の症状と診断、 じん肺管理区分決定、胸部X線写真の読影等~」
    日医(基礎後期2・実地1、生涯専門2・実地1)予定
  • 3月5日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「多様化する雇用形態とQOL」
    日医(基礎後期2、生涯専門2)予定
  • 3月13日(金)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「衛生管理者等スキルアップ研修会(その2健康管理・メンタルヘルス編)」

【注】「日医認定」とあるのは、日本医師会認定産業医制度の単位認定研修(生涯研修)です。
「実力アップ」とあるのは、日本産業衛生学会産業看護職継続教育実力アップコース認定(基礎コース修了者)です。申請中、又は申請予定も含みます。
また、「予定」とあるのは、変更されることがあります。

コラム水戸南町だより

身分なき共犯?

残業代を引き上げる改正労働基準法が5日午前、参院本会議で賛成多数 で可決、成立しました。月60時間を超えた残業代を現行の25%から50%に 割り増しするもので、2010年4月から施行されます。
政府原案では、残業代を割り増しする基準について月80時間超として いましたが、それでは過労死ライン(労災認定の際の残業時間基準)と同じ であるため批判が相次ぎ、月60時間超に修正された経緯もありました。
従来より高い割増賃金率を企業に支払わせることで、長時間労働や過労死 を防止しようとするのが狙いですが、何のための労働基準法改正なのかを 考えたとき、ふと疑問が湧きました。
たしかに、企業が残業時間の短縮に取り組む契機にはなるでしょうが、 仕事のやり方そのものを変えない限り、実現は難しそうです。
一方、残業手当が増額されたからと言って、月60時間以上もの時間外労働 を行っている従業員が、それで満足するとも思えません。

ハーズバーグが提唱した「動機付け・衛生理論」では、ある特定の要因が 満たされると満足度が上がり、不足すると満足度が下がるというのではなくて、 「満足」に関わる要因と「不満足」に関わる要因は別ものであるとしています。
満足に関わるものを「動機付け要因」といい、不満足に関わるものを不満足 を予防する意味で「衛生要因」と呼んで、前者に該当するものに「仕事の達成・ 承認・責任・昇進・やりがい・成長」など、後者に該当するものに「会社の方針・ 管理方式・作業条件・人間関係・給料・雇用」などがあるとされます。
したがって、割増賃金率がアップして給料が増えたからといって、けっして 満足感につながるわけではなく、本当に必要なのは「休養」なのではないで しょうか。

ホワイトカラー・エグゼンプションが話題になったとき、「時間外労働に 対する賃金の支払いを免れることを目的とするものではない。仕事の効率を 上げて、アウトプットを向上させるのが目的」という言い方を経営側がして いました。
その是非はさておき、”残業代が貰えないのに、遅くまで働くバカはいない だろう”というのも一面の真実を表しています。
ならば手っ取り早く逆転の発想で、残業させた方も、残業した方にもペナルティ を課してみたらどうでしょうか。例えば、割増率は25%のまま据え置き、 引き上げ分25%は国庫に納め、失業対策に使用するとかです。
そうなればサービス残業をさせた場合は、使用者には労働基準法違反のほかに “脱税”の罪も加算されます。 残業時間を故意に過少に申告した従業員も、「犯人の身分によって構成すべき 犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。」(刑法65条) の規定により、正犯として処罰されるおそれがでてきます。

職場でのストレスなどが原因で「心の病気」となったとして、07年に労災認定 を受けた人は前年度比3割増の268人で、過去最多でした。 また、脳や心臓の病気で労災認定を受け、いわゆる「過労」と考えられるのは 前年度比1割増の392人でした。
原因別にみると、長時間労働が主因とされたのが 362人。1か月平均の残業時間では80時間以上100時間未満が135人で最も多く、 100時間以上120時間未満も91人、160時間以上も35人に上っています。
その一方で、世界的な景気の冷え込みが加速する中、メーカーが派遣会社との 契約を更新しない「派遣切り」の動きが広がっています。 厚生労働省は先月28日、非正規雇用労働者の期間満了・途中での雇い止めが 3万人を超えるとする初の調査結果をまとめました。 これでは、安い賃金で働かせたうえでの、まさしく使い捨てです。工場の寮を 追われ、野宿生活に追い込まれるケースもあるとかで、事態は深刻化しています。 併存する失業と長時間労働。
これが、暗澹とさせられる以外にないわが国の 労働実態です。


次回の第36号は、平成20年12月下旬配信予定です。
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