いばらき産保ニュース 第39号

発行日:2009/2/6
ホームページ:https://ibarakis.johas.go.jp/
発  行:独立行政法人 労働者健康福祉機構
茨城産業保健推進センター 所長 小林 敏郎

【新着情報】
【センターからのお知らせ(お役立ち情報等)】
【新着教材情報】
【産業保健Q&A】
【主なセミナー案内】
【コラム:水戸南町だより】

このメールマガジンは、当センターをご利用いただいた方または購読を ご希望の方に、概ね月に2回、最新情報や資料をお届けするものです。 メールマガジンをお気に召さない場合は、「配信停止」と明記して、返信 くださるようお願いします。

新着情報

「石綿障害予防規則等の一部を改正する省令案要綱」

及び「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」について

労働政策審議会は先月22日、厚生労働大臣から諮問があった「石綿障害予防規則等の一部を改正する省令案要綱」及び 「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」について、妥当と認める答申を行いました。
石綿障害予防規則の一部改正については、

  • 断熱材、耐火被覆材等の除去の作業であって、石綿等の切断、穿孔、研磨等の作業が伴うものについて隔離の措置を講ずべこと
  • 吹き付けられた石綿等の除去の作業について、電動ファン付き呼吸用保護具等の使用を義務付けること

――等が盛り込まれています。
また、労働安全衛生規則の一部については、結核健康診断(第46条)の廃止などが含まれています。
厚生労働省では、この答申を受け、今後、石綿障害予防規則等及び労働安全衛生規則の改正を行い 、平成21年4月1日から順次施行する予定です。
石綿障害予防規則等の一部を改正する省令案(概要)
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/01/h0122-1d.html
労働安全衛生規則の一部を改正する省令案(概要)
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/01/h0122-1e.html

【解説:結核健康診断】
現在の労働安全衛生法では、年1回の胸部エックス線検査を義務づけており、 その結果、結核のおそれがあると診断された労働者に対しては、おおむね6月後にX線直接撮影による検査および喀痰検査等の 「結核健康診断」を行わなければならないことになっています。
平成17年4月に施行された改正結核予防法では、従来、一律的・集団的に行っていた定期の健康診断を廃止し、 結核菌に曝露される機会が多い職種、及び発症すれば二次感染を引き起こす危険性が高い学校、病院、診療所、助産所、 介護老人保健施設、及び社会福祉施設の従事者に対して、年1回の定期健診を行うこととしました。
「労働安全衛生法における胸部エックス線検査等のあり方検討会」では、こうした結核予防法の改正を受けて、 同趣旨の結核健康診断を廃止するという報告を行っていました。
「労働安全衛生法における胸部エックス線検査等のあり方検討会」
報告書概要↓
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/01/dl/s0119-4c.pdf

前年同期比62人減少/平成20年1月~12月の死亡災害発生状況

厚生労働省が先月19日に発表した労働災害発生状況(速報)によると、1月7日現在で、昨年1月~12月に発生した労働災害による死亡者数が速報値で1,186人と、前年同期に比べ62人減少(5.0%減)していたことがわかりました。 業種別にみた死亡者数では、最も多いのが建設業の413人、次いで、製造業236人、陸上貨物運送事業136人などの順となっています。 
詳しくは↓
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/rousai-hassei/index.html

雇用保険法等の一部を改正する法律案

先月20日、政府は「雇用保険法等の一部を改正する法律案」を閣議決定しました。 非正規労働者に対するセーフティネットの機能の強化のため、労働契約が更新されなかったため離職した有期契約労働者について、受給資格要件を緩和し、被保険者期間を12か月から6か月に短縮しています(解雇等の離職者と同様の扱い)。 また、雇用保険の適用基準である「1年以上雇用見込み」を「6か月以上雇用見込み」に緩和し、適用範囲の拡大を目指しています。
施行は4月1日の予定。
「雇用保険法等の一部を改正する法律案」の概要は↓
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/01/dl/h0120-1a.pdf

労基署、基礎日額を修正/連続勤務で過労死した労働者への遺族補償年金

大手電機メーカーの子会社に勤務していた技術者の男性(当時43歳)が、昨年2月に亡くなった原因は相次ぐ国内外の出張だったとして、労働基準監督署から過労死の労災認定を受けていたことが、2日、遺族代理人の発表により分かりました。 また、遺族補償年金額に反映される「年金給付基礎日額」についても、事業主証明額に時間外手当の漏れがあることを遺族側が指摘。会社側も修正して、日額で約3,400円増額されていたことも分かりました。 代理人側によると、男性は福岡県の発電所事務所で倒れ、心不全で亡くなりましたが、前月12日にはクウェートに出張。そのまま豪州へ向かい、再びクウェートに戻って18日に帰国しました。死亡直前の1ヵ月間に114時間の時間外労働時間があり、帰宅したのは4日間だけだったといいます。 (産経新聞ほか)

【解説:遺族補償給付】
遺族補償給付は、労働者が業務災害により死亡した場合に遺族に支給されます。 原則として年金の支給となりますが、遺族が死亡労働者に扶養されていなかった場合のように、 年金を受ける資格のないときは一時金の支給となります。
年金の額は遺族の数に応じ、給付基礎日額の153日分~245日分です。 「給付基礎日額」とは、原則として労働基準法の平均賃金に相当する額をいい、事故が発生した日又は医師の診断に よって疾病の発生が確定した日(賃金締切日が定められているときは、その日の直前の賃金締切日)の直前3ヶ月前に その労働者に対して払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割った1暦日当たりの賃金額です。
従いまして時間外手当も含まれますので、サービス残業などがあると正確に把握されないことがあり、注意を要します。
このほか、遺族特別支給金(一時金として300万円)、遺族特別年金(賞与額を基に算定したもの。 但し、年金額の20%を超えない)が支給されます。

【関連セミナー】

  • テーマ:多様化する雇用形態とQOL
    日時:平成21年3月5日(木)14:00~16:00推進センター研修室
    概要:生活を形成する能力(ケイパビリティ)の向上は、労働能力(エンプロイヤビリティ)を高め、 生産性を上げる基礎となります。講義では、勤労者の精神と身体の回復つまり勤労者の生活の質(QOL)を向上することこそ、 企業のパフォーマンスの着実な改善に導くことを論証します。

センターからのお知らせ(お役立ち情報等)

現代型うつ病の診断と治療の実際/茨城産業保健懇談会第2回研修会

茨城産業保健推進センターは、3月16日(月)午後7時から、茨城県産業会館(水戸市桜川2丁目)において、茨城産業保健懇談会第2回を開催します。
「茨城産業保健懇談会」は、茨城県内の産業保健業務従事者が、研鑽・交流・連携する場としてスタートしたものです。働く人の健康を支援する視点から、研修会や会員間の情報交換を定期的に実施する予定です。
今回のテーマは「各種うつ状態(現代型うつ病を含む)の診断と治療の実際」。
廣瀬クリニック院長、広瀬久益先生による講演と参加者による意見交換が行われます。

新型インフルエンザ対策/準備・対応・対策ガイドライン等について研修会

新型インフルエンザとは、人類のほとんどが免疫を持っていないために、世界的な大流行(パンデミック)により、大きな健康被害とこれに伴う社会的影響が懸念されます。
茨城産業保健推進センターでは、新型インフルエンザ対策について、2月26日(木)午後2時から、つくば国際会議場において産業保健研修会を開催します。 講師は、オリンパス(株)専属産業医の内田和彦先生。 新型インフルエンザ発生時には、感染の広がりを抑え、被害をできる限り小さくするために、職場や家庭などでも必要な準備を進め、実際に発生した際は適切に対応していくことが大切です。 研修会では、新型インフルエンザの最近の状況、厚生労働省の新型インフルエンザ対策、事業所が準備すべき対策と パンデミック時の対応について講義します。

特定化学物質障害予防規則等の改正内容/厚生労働省ホームページ

ニッケル化合物・砒素及びその化合物に係る規制の導入、燻蒸作業に係る措置へのホルムアルデヒドの追加等に かかる特定化学物質障害予防規則等の改正が、昨年11月公布されましたが、その詳細が厚生労働省のホームページに 掲載されています。
詳しくは↓
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei20/index.html

石綿健康診断及び石綿健康管理手帳Q&A/厚生労働省HP

今年4月から施行される、石綿健康診断及び石綿健康管理手帳の対象者の見直しに関するQ&Aが厚生労働省のホームページに掲載されています。 従来、石綿健康診断や石綿健康管理手帳の交付の対象業務については、石綿等の製造又は取扱いの業務(以下「直接業務」という。)に限られていました。 しかし、周辺で別の業務に従事していた労働者にも石綿のばく露に特徴的な所見である胸膜プラークや中皮腫その他の石綿関連疾患が認められること等が指摘され、専門家の調査結果に基づき、対象業務の見直しが行われました。 今回の見直しでは、いわゆる「職業性間接ばく露」を受けた労働者も石綿健康診断や石綿健康管理手帳の交付の対象としたものです。
詳しくは↓
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/sekimen/qa/090401-1.html

「父親のワーク・ライフ・バランス~応援します!」/ハンドブック作成

勤労者世帯の過半数が共働き世帯になっているなかで、女性だけでなく、男性も子育てができ、親子で過ごす時間を持つことのできる環境作りが求められています。 しかし、男性の育児休業取得率はなんと1.56%。男性が子育てや家事に費やす時間についても極めて低い水準にとどまっています。 厚生労働省では、主に子育て期にある男性労働者を対象として、両立支援制度等の関連情報を盛り込み、 仕事と家庭が両立できる働き方を設計、実践するツールとなるハンドブック「父親のワーク・ライフ・バランス ~応援します! 仕事と子育て両立パパ~」を作成しました。
父親のWLB(ワーク・ライフ・バランス)応援サイト↓ 
http://www.papa-wlb.jp

新着図書・教材情報(無料貸出し)

事例で学ぶ一般健診・特殊健診マニュアル改訂第2版(図書240頁)
病気をもちながらどこまで働けるか ―疾病と就労の臨床判断―(図書218頁)

【概要】
前者は、健康診断の意義や法定・通達によるの健康指弾について詳解。 こんなケースで事業者および医師・産業医・産業保健担当者の責任は?。53の事例を挙げ詳しく解説しています。 後者は、健康診断で所見が認められる人や何らかの疾病を抱えながら働いている労働者について、就業のための基準を示したもの。 ともに圓藤吟史他編・監修。

産業保健Q&A

定年退職後の労災補償

【質問】
現在、労災により療養補償給付と休業補償給付を受けております。もうじき定年を迎えますが、 それまでに仕事に復帰できる見込みはありません。 まだしばらくの間、療養・休業が必要となる見込みですが、退職後も労災保険給付は受けられるでしょうか。 それとも、療養中の定年退職は解雇制限に 抵触して無効となるのでしょうか。
【回答】
定年退職後は当然賃金を受けることができなくなり、休業損害が生じないため、 補償を受けることができないのではないかとご心配なのではないかと思います。
しかし、療養補償給付が退職後は支給されないとなると、業務上の事由により負傷し療養しているのにもかかわらず、治療を受けられないという不合理なことになります。 また負傷していなければ、定年により退職した後も、他の事業場に再就職し賃金を得ることもできたはずですから、 この点からも矛盾があります。 従いまして、・・・

産業保健Q&Aの続きは、こちらをご覧下さい。
産業保健に関するご相談は、 こちらから

これから受講できるセミナー案内(無料)「2009年」

  • 2月13日(金)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「衛生管理者等スキルアップ研修会(その1基礎知識・作業環境管理・法令編)」
  • 2月19日(木)14:00~16:00:茨城県立図書館(水戸市三の丸)
    テーマ「うつ病」以外の精神疾患にも対応した職場復帰マネジメント手法について」
    日医(基礎後期2、生涯専門2)申請中
  • 2月26日(木)14:00~16:00:つくば国際会議場(つくば市竹園)
    テーマ「新型インフルエンザ対策~準備・対応・対策ガイドライン等について~」
    日医(基礎後期2、生涯専門2)
  • 2月27日(金)18:30~21:30:水戸市医師会(水戸市笠原町)
    テーマ「じん肺症と健康管理について~じん肺症の症状と診断、 じん肺管理区分決定、胸部X線写真の読影等~」
    日医(基礎後期2・実地1、生涯専門2・実地1)
  • 3月5日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「多様化する雇用形態とQOL」
    日医(基礎後期2、生涯専門2)申請中
  • 3月13日(金)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「衛生管理者等スキルアップ研修会(その2健康管理・メンタルヘルス編)」
  • 3月16日(月)19:00~21:00:茨城県産業会館研修室
    テーマ「各種うつ状態(現代型うつ病を含む)の診断と治療の実際」
    日医(基礎後期2、生涯専門2)、実力アップ(Ⅳ-3-(4))
  • 4月6日(月)14:40~16:00:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「メンタルヘルス・ケースカンファレンス」
  • 4月9日(木)14:00~16:00:ワークヒル土浦(土浦市木田余)
    テーマ「メンタルヘルス疾患による休職者の職場復帰について」
    日医(基礎後期2、生涯専門2)申請予定、実力アップ申請予定
  • 4月17日(金)14:00~16:00:鹿嶋勤労文化会館(鹿嶋市宮中)
    テーマ「『エゴグラム』で心のワーク・ライフ・バランスを見る」
    日医(基礎後期2、生涯専門2)申請予定、実力アップ申請予定
  • 4月21日(火)14:00~16:30:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「労働衛生、健康管理担当者の職務について」
  • 4月23日(木)14:00~16:30:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「インフルエンザ感染予防に必要な呼吸用保護具について~マスクの選択と着用方法~」
    日医(基礎実地2、生涯実地2)申請予定、実力アップ申請予定

【注】「日医認定」とあるのは、日本医師会認定産業医制度の単位認定研修(生涯研修)です。
「実力アップ」とあるのは、日本産業衛生学会産業看護職継続教育実力アップコース認定(基礎コース修了者)です。申請中、又は申請予定も含みます。
また、「予定」とあるのは、変更されることがあります。

コラム水戸南町だより

年間総実労働時間が1,800時間下回る?

厚生労働省が3日発表した毎月勤労統計調査結果(速報、従業員5人以上)によると、2008年の年間総実労働時間は1,792時間で、前年の1,808時間を16時間下回ったことが分かりました。 1,800時間を切るのは1990年の統計開始以来初めてのことです。 年間総実労働時間は、所定内労働時間と残業を示す所定外労働時間を足した数値。内訳を見ると、所定内が1,663時間と13時間減、所定外が129時間と3時間減で、所定外が減るのは7年ぶりです。 これまで、短時間勤務のパート労働者の増加が実労働時間を減らしてきましたが、今回は正社員の残業時間が減った結果とみられています。 1988年、政府は92年までに1800時間を達成すると公約をしました。当時、欧米諸国から働き過ぎと言われ、政府は「労働時間短縮推進計画」を策定しました。計画では、週40時間労働で、年次有給休暇を完全消化し、かつ時間外労働を短縮することで、ようやくこの数字に抑えられるというものでした。 しかしその後の経済不況の中で、この計画はまったく無視されてきました。有給休暇の年間取得率は47%という現状ですし、激しい企業間競争に加えて不況を乗り切るためと称して、正社員の長時間労働は改善されないままです。 ところが今回、世界的な景気悪化により、企業が労働時間短縮で人件費を抑える傾向が鮮明になったことで、はからずも目標達成となってしまいました。 しかし、労働時間が短くなったと実感されている方は少ないのではないでしょうか。

総務省の「労働力調査」では、年間労働時間は約2,200時間もあります。どうして2種の統計に、このような400時間もの差があるのかというと、厚生労働省の統計が事業所からの報告にもとづくものであるのに対し、総務庁統計局のものは労働者からの直接の聞き取りによるものだからです。 サービス残業が蔓延している現状では、両者は当然食い違ってくるのは当然です。また、労働時間のあり様がこれまでの標準化から多様化・分散化、個人化へと変化し、長時間労働とともに週35時間未満の短時間労働者が増大しています。 いわゆる労働時間の2極化が進み、いちばんの「働きすぎ」といわれる30歳代男性は、4人に1人が週60時間以上働いており、一方で、多くの派遣社員、パート社員は企業が必要とするときにだけしか働かせてもらえないのです。 数字はあくまでも平均値です。業種、職種によっても偏りがありますし、なによりも長時間労働により、過労死をはじめ、労働者が心身ともに健康を損なう労働者を一人でも出さないことが大切です。


次回の第40号は、平成21年2月下旬配信予定です。
編集内容等に関するご意見・お問合せなどをお寄せください。
バックナンバーは、こちらをご覧ください。
また、新規登録・変更、配信停止は、こちらからお願いします。
産業保健に関するご相談などは、お問い合わせフォームからお願いします。