いばらき産保ニュース 第63号

発行日:2010/11/30
ホームページ:https://ibarakis.johas.go.jp/
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発  行:独立行政法人 労働者健康福祉機構
茨城産業保健推進センター 所長 小林 敏郎

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【新着情報】
【これから受講できるセミナー案内(無料)】
【センターからのお知らせ(お役立ち情報等)】
【メンタルヘルス対策支援センターの利用案内】
【漢方医から職場への処方箋(連載)】
【コラム:水戸南町だより】

新着情報

古河マンホール酸欠死亡 工事業者、検知器購入の動き 濃度測定徹底を

古河市内のマンホールで10月末、工事作業中の男性2人が酸欠で倒れ、1人が死亡した。 同様の事故は今月8日にも北海道苫小牧市の倉庫で発生、2人が死亡している。 地元の工事関係者は「県内で酸欠事故など聞いたことがなかった。まさか身近な場所で起きるとは」と驚きを隠せない。 厚生労働省は「危険な場所で作業する自覚を持ってほしい」と注意を促しており、事故を教訓に、 古河市内では不用意だった酸欠防止対策に乗り出す業者も出始めた。
(2010年11月22日 茨城新聞)

顔の傷、男女平等に補償…障害等級見直し案

厚生労働省の専門検討会は19日、労働災害で顔などに大きな傷跡が残った場合の補償額について、 女性よりも男性の方が低くなる現行の障害等級を見直し、男女平等にすべきだとする報告書案をまとめた。 見直しは、男女差のある国の基準は法の下の平等を定めた憲法に違反するとした5月の京都地裁判決を受けたもの。 1947年に施行された労災保険法の施行規則では、障害の度合いが高い順に等級を1~14級に分類し、 顔などに重い傷を負った場合、女性は7級、男性は12級に認定。 7級は、労災に遭った直前3か月の平均賃金の131日分が毎年支給されるが、 12級は156日分が一時金として支給されるだけで、大きな開きがある。 報告書案では、男女平等を目指す社会状況などから「男女差を残すべき必要性は認められない」とし、 男性の等級を引き上げ、重い傷の場合は男女ともに7級に認定するよう提言。軽い傷の場合も、男性14級、 女性12級の現行基準を見直し、一律12級にすべきだとした。
(2010年11月19日 読売新聞)

受動喫煙巡り公聴会…各団体の代表8人が参加 外食産業団体×被害相談弁護士

職場の受動喫煙対策を議論している厚生労働相の諮問機関・労働政策審議会は10日、 職場を原則禁煙化することの是非について、業界団体や学識者らを交えた公聴会を東京都内で開いた。 公聴会には、外食産業の業界団体や労働組合、民間の禁煙推進団体など、 厚生労働省が公募で選んだ各団体の代表8人が参加した。 同省は、たばこの煙に含まれる有害物質の空気中濃度を規制する方針。 その際、事業所は〈1〉店内の全面禁煙化〈2〉喫煙室設置〈3〉換気設備の整備のいずれかを迫られるが、 外食産業でつくる「日本フードサービス協会」は、「喫煙客のニーズは無視できない。 小規模店舗は喫煙室の確保が困難」と性急な規制強化に反対した。 ホテル従業員らでつくる産別労組「サービス連合」も「換気装置を設置するための財政支援が必要」とした。 一方、受動喫煙被害の相談を受ける弁護士は「ストレスでうつ病を発症することもある。 喫煙者の権利だけ優遇されるのは不合理」と指摘。たばこの有害性を研究する大学教授は 「発がん性物質と同程度の規制が必要だ」として、全面禁煙化を訴えた。 労政審は、この日の意見を踏まえて今年度中に受動喫煙対策をまとめる。
(2010年11月11日 読売新聞)

残業月に230時間、うつ自殺労災認定

月に約230時間の時間外労働によってうつ病となり、自殺したとして、 群馬県桐生市の介護サービス会社「メディスコーポレーション」の元部長(当時43歳)の遺族が、 同社などを相手に損害賠償を求めた訴訟で、前橋地裁(西口元裁判長)は29日、自殺を労災と認め、 同社に約6600万円の支払いを命じた。  判決によると、元部長は2003年に財務経理部長に就任。事業拡大で仕事量が大幅に増え、 1か月の時間外労働は最大約230時間に達した。肉体的、心理的負担からうつ病を発症、04年8月に自殺した。 同社は「弁護士と協議し対応を検討したい」としている。
(2010年10月30日 読売新聞)

茨城県最低賃金が改定されました

茨城県内で働く全ての労働者に適用されます。

  • 茨城県最低賃金額
    時間額690円(効力発効日:平成22年10月16日)
    ※最低賃金については茨城労働局労働基準部賃金室(電話029-224-6216まで)

これから受講できるセミナー「2010~11年」

※ 先着順になりますので、お早めにお申込ください。
※ 有料駐車場については参加者のご負担となりますので、ご了承ください。 できるだけ公共交通機関をご利用ください。

<平成22年12月分>

  • 12月6日(月)午後2時40分~午後4時 中央ビル会議室
    「メンタルヘルス・ケースカンファレンス」 
    講師:山村 邦男(産業保健相談員、山村医院院長)
    ※現在、対応に困っている事例をお持ちの方、また、事例がなくても参加可能です。少人数のセミナーですので、 講師からじっくりアドバイスを受けることができますよ。
  • 12月8日(水)午後2時~午後4時 鹿島建設・仙波・山本特定建設共同企業体朝日トンネル本体工事現場 (土浦市小野1378-1)
    「職場巡視のポイントと課題の把握の仕方」(実地研修) 
    講師:伊藤 進一(産業保健相談員、安全コンサルタント)
    ※本研修ではトンネル工事現場での職場巡視の方法について研修を行うものです。なお、本工事は筑波連山南東部の朝日峠付近で、 NATM(ナトム)工法で施行されており、全長1784メートル(土浦工区は732メートル)のトンネルです。 トンネル工事現場での研修は滅多にできませんので、大変貴重な研修です。ただし、会場の関係で先着20名とさせていただきます。
    ※参加する場合の注意事項

    1. 参加者の服装については、トンネル工事建設現場での研修に相応しい服装でご参加ください。
      (例)

      1. 作業着(スカートは不可)
      2. 安全靴(ハイヒールは不可)
      3. 防じんマスク
      4. 軍手
        ※ヘルメットについては、施工業者より借用予定です。
    2. 現場での研修ですので、集合時間は厳守です。遅刻した場合は受講をお断りすることがありますので、予め、ご了承ください。
    3. 工事現場は危険な箇所もありますので、施工業者及び当センタースタッフの指示に必ず従って行動してください。
    4. 会場にお車で来られる場合は、施工現場の指定の駐車場に駐車していただくことになります。
      (駐車場については後日お申込みいただいた方に別途ご案内いたします。)

     ※日医認定(実地2単位)申請予定

  • 12月17日(金)午後6時30分~午後8時30分 県南生涯学習センター
    「過労死等の脳・心臓疾患労災認定のしくみ~脳・心臓疾患の労災認定基準の解説」
     講師:飯塚 克己((社)茨城県トラック協会広報指導部長、前茨城労働局労働保険徴収室長)
    ※本研修会では、「脳・心臓疾患の認定基準」の制定の経緯から内容、労災か否かの判断ポイント、 運用の実際・留意点、具体的な業務上外の事例について講義します。
    ※日医認定(更新)申請予定
  • 12月20日(月)午後2時~午後4時 住友生命水戸ビル11階会議室
    「管理職のためのメンタルヘルス・マネジメントセミナー(Ⅲ)~ 「治療中の部下への関わり方と復帰にあたって配慮すべきこと」
     講師:的場 政樹(袋田病院院長)
    ※本研修は、管理監督者を対象に、治療中の部下への対応方法や、職場復帰にあたって必要な情報や具体的な進め方について、 事例も交えながら、演者の産業医及び主治医としての豊かな経験を基に説明します。
    ※日程が変更になりました。

<平成23年1月分>

  • 1月14日(金)午後2時~午後4時 住友生命水戸ビル11階会議室
    「管理職のためのメンタルヘルス・マネジメントセミナー(Ⅳ)~職場のメンタルヘルス対策の進め方~」
    講師:小川 邦治 (日立製作所日立健康管理センタカウンセラー・臨床心理士)
    ※4回シリーズの最終回です。職場のメンタルヘルス対策の重要な役割を担う管理職の方がどのように メンタルヘルスに取り組んだら良いかを分かり易く説明します。

<平成22年度産業看護職研修(1)>

平成22年度の産業看護職研修の第1部を下記のとおり3つのテーマで計画しました。

  • 日程:平成23年1月15日(土) 午前9時~午前12時10分
  • 場所:住友生命水戸ビル11階会議室
  • テーマと講師、時間配分
    1. 1月15日(土)午前9時~午前10時30分 住友生命水戸ビル11階会議室
      「産業組織における事業者と労働者の責任」 
      講師:青山 努(茨城産業保健推進センター副所長)
    2. 1月15日(土)午前10時40分~午前11時25分 住友生命水戸ビル11階会議室
      「作業環境の評価に基づく作業環境管理」
       講師:岩崎 芳明 (産業保健相談員、(株)三菱化学アナリテックつくば分析事業所長)
    3. 1月15日(土)午前11時25分~午前12時10分 住友生命水戸ビル11階会議室
      「適正な作業条件の設定と産業看護職の役割」
       講師:岩崎 芳明 (産業保健相談員、(株)三菱化学アナリテックつくば分析事業所長)
      ※産業看護職実力アップ申請

<平成22年度産業看護職研修(2)>

  • 日程:平成23年2月19日(土) 午前9時~午前12時10分
  • 場所:住友生命水戸ビル11階会議室
  • テーマと講師、時間配分
    1. 「職場における化学物質の管理体制」
      講師:岩崎 芳明  (産業保健相談員、(株)三菱化学アナリテックつくば分析事業所長)(午前9時~午前10時30分)
    2. 「科学的・生物学・物理学的因子の管理と産業看護職の役割」
      講師:岩崎 芳明  (産業保健相談員、(株)三菱化学アナリテックつくば分析事業所長)(午前10時40分~午前12時10分)
      ※看護職の皆様が参加しやすいように土曜日に設定しました。たくさんの看護職の皆様のご参加をお待ちしています。
      ※産業看護職実力アップ申請
  • 1月18日(火)午後2時~午後4時 県南生涯学習センター
    「勤労者の腰痛対策」 
    講師:岡本 弦(鹿島労災病院副院長・勤労者脊椎・腰痛センター長)
    ※業務上疾病の中で最も多いのが腰痛です。臨床の現場でたくさんの腰痛の患者を診療してきた講師が分かり易く説明します。
    ※日医認定(専門)申請予定
    ※産業看護職実力アップ申請
  • 1月20日(木)午後6時30分~午後8時30分 住友生命水戸ビル11階会議室
    「メンタルヘルス不調者の職場復帰に当たっての産業医の役割について」
    講師:中谷 敦(産業保健相談員、(株)日立製作所水戸健康管理センタ産業医)
    ※産業医としてたくさんのメンタル不調者の職場復帰に携わってきた講師がメンタル不調者の職場復帰に当たっての 「産業医」の役割についてご説明します。ご要望の多かった夜間のセミナーです。
    ※日医認定(専門)申請予定
    ※産業看護職実力アップ申請
  • 1月25日(火)午後2時~午後4時 県南生涯学習センター
    「最近の労働衛生行政について~関係法令の改正点等~」 
    講師:大津 徳男(茨城労働局労働衛生専門官)
    ※最近の労働衛生行政について関係法令の改正点等を踏まえて説明を行います。
    ※日医認定(更新)申請予定
    ※産業看護職実力アップ申請

<平成23年2月分>

  • 2月3日(木)午後2時~午後4時 小山商工会議所
    茨城・栃木共同セミナー
    「現場で役立つ最近の労働衛生関係法令」 
    講師:大津 徳男(茨城労働局労働衛生専門官)
    ※栃木センターとの共同でのセミナーです。県西地区でのセミナーは数少ないので、栃木県の小山市の会場ですが、 ぜひ、ご参加ください。
    ※日医認定(更新2単位)申請予定
  • 2月7日(月)午後2時40分~午後4時 住友生命水戸ビル11階会議室
    「メンタルヘルス・ケースカンファレンス」 
    講師:山村 邦男(産業保健相談員、山村医院院長)
    ※現在、対応に困っている事例をお持ちの方、また、事例がなくても参加可能です。少人数のセミナーですので、
    講師からじっくりアドバイスを受けることができますよ。
  • 2月25日(金)午後6時30分~午後8時30分 県南生涯学習センター
    「精神障害等の労災認定のしくみ~(改正)心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について~」 
    講師:飯塚 克己((社)茨城県トラック協会広報指導部長、前茨城労働局労働保険徴収室長)
    ※本研修会では、「精神障害の認定基準」の制定の経緯から内容、労災か否かの判断ポイント、 運用の実際・留意点、具体的な業務上外の事例について講義します。
    ※日医認定(更新2単位)申請予定

<セミナー会場案内>

【注意】
「日医認定」とあるのは、日本医師会認定産業医制度の単位認定研修です。
平成22年4月からは当推進センターでは「生涯研修」のみの実施となりましたのでご注意ください。
「実力アップ」とあるのは、日本産業衛生学会産業看護職継続教育実力アップコース認定です。
申請中、又は申請予定も含みます。また、「予定」とあるのは、変更されることがあります。

センターからのお知らせ(お役立ち情報等)

深夜業従事者健康診断助成金及び産業医共同選任助成金の支給終了について

平成22年度末をもって両助成事業は終了することとなりましたので、 それぞれの申請手続きについてご確認ください
※詳しくは↓
https://ibarakis.johas.go.jp/info_document/various/subsidy

「こころの健康・メンタルヘルス 治療や生活を応援するサイト」のご案内

厚生労働省のホームページに「こころの健康・メンタルヘルス 治療や生活を応援するサイト」ができました。 ここには「働く人のメンタルヘルスポータルサイト」である「こころの耳」以外に「みんなのメンタルヘルス総合サイト」 と「10代・20代のメンタルサポートサイト」が設けられています。 メンタルヘルスについての情報がたくさん入手できますので、ぜひ、ご覧ください。
※詳しくは↓
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/health_link/index.html

産業保健の「相談」お待ちしています!!

当センターでは産業保健に関するあらゆるご相談に応じています。電話、FAX、メールでも結構です。(※「メール」が便利です。)
費用は「無料」ですので、お気軽にご相談ください。
また、「個人情報」は守られています。ご心配いりません。最近はメンタルヘルスに関する相談が大変増えてきました。
※相談フォームは↓
https://ibarakis.johas.go.jp/inquiry

メンタルヘルス対策支援センターの利用案内

「メンタルヘルス対策支援センター」では、対面、電話、ファックス、メールによりメンタルヘルス 不調の予防から職場復帰までのメンタルヘルス全般についての相談、問い合わせに応じています。 メンタルヘルス対策促進員が事業場を訪問して制度の周知、助言を行っています。
平成22年度は管理者監督者の教育も実施いたします。 メンタルヘルス不調者の対応をどうしたらよいか、社内スタッフ・従業員への教育・研修をどうしたら良いか、 職場復帰支援プログラムはどのように作れば良いのかなど、メンタルヘルス全般についてのご相談に応じています。 
費用は無料です。

働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」のご案内

働く方、ご家族の方、事業者・上司・同僚の方、産業医等支援する方などが活用できるたくさんの情報が 閲覧できます。
 専門の相談機関、医療機関の名簿とか事例紹介など役立つ情報がたくさんあります。
※詳しくは↓
http://kokoro.mhlw.go.jp/

【漢方医から職場への処方箋(連載)】

「漢方医から職場への処方箋」伊藤隆

※当センターの産業保健相談員で、鹿島労災病院のメンタルヘルス・和漢診療センター長の伊藤隆先生が 「労働安全衛生広報」((株)企業通信社)に現在投稿している原稿をご紹介いたします。
なお、転載に当たっては出版社の許可を得ています。また、センターのホームページにも掲載しています。

第12回 加齢に対する薬(最終回)

 ~八味地黄丸(はちみじおうがん)~

はじめに

私たちはいくつになってもこころは10代のままですが、からだは確実に老化していきます。高齢化社会の到来とともに、 我が国では60歳以降も働き続けねばならない人が増えています。筆者もおそらくその1人でしょう。 漢方医学には加齢に対応していく考え方とお薬があります。

腎虚(じんきょ)

腎虚とは、加齢あるいは病によりこれらの働きが低下した状態を意味する漢方医学の病態概念です。 高齢化に伴う種々の疾患を、ひとつの病態として捉えようとしています。 生命活動の根源的エネルキーとされる「気」は、誕生に際して父母からあたえられる「先天の気」 と誕生後に呼吸、食物などから得る「後天の気」の二つに大別されますが、腎は「先天の気」 を管理する機能単位と考えられています。
その働きは、

  1. 成長・発育・生殖能、
  2. 骨・歯牙の形成と維持、
  3. 水分代謝の調整、
  4. 呼吸能の維持、
  5. 思考力・判断力・集中力の保持

とされています。いずれの機能も加齢とともに低下していきます。 この腎虚に対する漢方薬が八味地黄丸なのです。

使用頻度

数あまたある漢方薬の中でも八味地黄丸の使用頻度の高さは抜きん出ています。漢方を専門とする5施設で、 1997年4月のある2週間において、すべての外来処方を調査して、八味地黄丸を処方した回数を数えてみました。 その使用頻度はすべての漢方薬の中で最も高く、男性では40歳代の10%、50歳代の20%、60歳代の30%と加齢により上昇し、 70歳以降減少しました。一方、女性での使用頻度は50歳代10%、70歳代20%、80歳代になってようやく30%でした。 すなわち、明らかな性差が認められました。 この薬は古来より「老人の薬」として知られてきましたが、高齢化社会の現代において、 とくに男性に関しては40~50歳代という「働き盛り」の薬になっていたのです。

構成生薬と適応

八味地黄丸はその名の通り、八つの生薬から構成されています。2000年前の医学書である金置要略(きんきようりゃく)には、 「地黄(じおう)8両(1両は1グラム)、山薬(さんやく、山芋のこと)、山茱萸(さんしゅゆ)各4両、沢瀉(たくしゃ)、 茯苓(ぶくりょう)、牡丹皮(ぼたんぴ)各3両、桂皮(けいひ)、附子(ぶし)各1両、これを蜜に和して桐の実大の丸薬にして、 酒にて15丸から25丸を1日2回服用」と記載されています。 地黄、山薬、山茱萸の3つで全体の7割を占めます。山薬は山芋、つまり良質のでんぷんをたくさん含んでいます。 地黄、山茱萸も準栄養剤的な生薬といえましょう。これら精力増強作用のある生薬に、気をめぐらす桂皮、 血をめぐらす牡丹皮、水を調整する茯苓、沢瀉が加わります。高齢者の保健薬として意義のありそうな内容です。 適応は同書には「虚労(きょろう)」と記載されています。虚労とは、いくら睡眠をとっても拭うことのできない疲労感、 倦怠感を表現しています。 「老化は足から」と言われますが、一定の年齢を過ぎると、加齢による衰えは下半身より始まります。 八味地黄丸の適応はまさに下半身の働きに関連しています。具体的には、下肢痛、しびれ、多尿、 夜間頻尿、腰痛、腰以下の無力感などです。これ以外の症状としては呼吸機能の低下が重要な目標です。 服用しますと足腰の不安が減って元気に動くことができるようになります。 八味地黄丸は種々の薬の基本薬になっています。これに牛膝(ごしつ)、車前子(しゃぜんし)を加えた牛車腎気丸 (ごしゃじんきがん)は、下半身の疼痛・しびれの強い例あるいは浮腫例に用います。 この八味より桂皮、附子を除いた六味丸(ろくみがん)は、足のほてり、口の乾きの強い例に用います。 副作用として、服用例の約1割に胃もたれ、食欲低下が見られます。地黄のためと推測されます。 胃腸の弱い症例には注意が必要です。ときに湿疹をきたす例もあります。

作用
  1. 微小循環を改善する作用
    しびれ、疼痛を改善します。この薬は炎症を抑えるというよりは、 局所の循環や赤血球が数個通れる程度の微細な循環(微小循環)を改善して、 末梢運動神経の機能が回復(運動神経伝導速度が上昇)したとする報告があります。
  2. 認知症に対する作用
    多数例の高齢者に用いて認知機能と日常活動度が改善したとの報告があります。 筆者の経験では、軽症例には良い場合がありますが、アルツハイマー病等の重症例にはそう効くものではありません。
  3. 糖尿病に対する作用
    合併症を予防、軽減します。糖尿病は神経、腎臓と眼に合併症をきたすことで重大な疾患ですが、 この薬を長く服用していると、神経障害と腎症がより軽度になると報告されています。血糖が高い状態になると、 酸化的ストレスが高まり、活性酸素が増え、ラジカル生成が増して、血管内皮を始め種々の組織に障害を与えます。 八味地黄丸にはラジカルを捕捉して減らす機序が考えられています。 ラットを用いた実験において腎臓の障害が改善されたことも報告されています。
  4. 呼吸機能改善作用
    慢性のいきぎれを改善します。 慢性に喘息発作をくりかえす患者に12週間服薬させたところ、 閉塞性障害を反映するピークフロー値が約50L/min上昇し、喘息状態の改善が認められました。 発作そのものを改善させる強力な作用はありませんが、 冷気や運動などの刺激により発作を誘発していた人が発作を起こしにくくなる予防効果を得ることができます。 ただし、在宅酸素療法を要するほどの重症例は適応ではありません。
  5. 下垂体副腎系に対する賦活作用
    八味地黄丸を服用していると、「元気になる」患者さんが少なくありません。 デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は副腎皮質ホルモンのひとつで、 思春期に急増し、以後年間3%ずつ低下していくため、老化の指標として知られています。 このホルモンにはストレスにより障害された組織の修復と回復に働く作用、 すなわち抗潰瘍、抗糖尿病、抗肥満、抗動脈硬化、免疫賦活などの作用があると考えられています。 八味地黄丸を服用すると、このホルモンが賦活されることが報告されています。加齢によるストレスに強くなるのです。
運動

加齢と運動の関係は古くより指摘されています。 「流水は腐らず。戸ぼそは虫食わず」。 戸ぼそは、開き戸の戸棚の軸になるところ、動くところです。戸棚は腐っても軸になるところは腐らないという意味です。 要するに動いている部分は腐らない、流水も腐らない、虫も食わないということです。 「一身動けば、一身強まる」、「人間、足からあがる」、「隠居三年」。いずれも下肢を動かす重要性を示す諺です。 車社会では歩く機会が減少します。高齢者ならずとも、日常歩くことが勧められています。
“健康日本21”では1日平均歩数男性9,200歩、女性8,300歩程度が目標とされています。 仕事で下半身に衰えを感じるようになったら、まず運動してみましょう。 そして回復が思わしくなければ、八味地黄丸を検討してみてはいかがでしょうか。

ホームページからもご覧頂けます 詳しくは↓
https://ibarakis.johas.go.jp/info_document/oh/kenko/kenko_3#s2

コラム水戸南町だより

▼11月13日(土)に実施した筑波大学の田中喜代次教授のメタボセミナーは大変好評でした。 田中先生の講演のほかに、栄養指導、運動指導を組み合わせた実践的なセミナーでした。 ダイエットのためにはまず、「食事」で、それから「運動」と、豊富な実績から説得力のあるお話しをいただきました。 田中先生には初めて講師をお願いしましたが、今後もご協力をいただけることになりましたので、 今回、参加できなかった方のためにも来年度もぜひ計画したいと考えています。

▼11月25日(木)は産業保健懇談会を実施し、冒頭の講演は(独)労働安全衛生研究所の原谷隆史先生に講師をお願いしました。 原谷先生には「職場のストレスとメンタルヘルス」~最近の動向と課題~と題して講演をいただきましたが、 最新の研究成果なども交え大変貴重なお話をしていただきました。意見交換の時間には会場からたくさんの発言があり、 時間が足りない位でした。昨年度から原谷先生を何とか茨城にお呼びできないかと考えていてやっと今年実現できたセミナーでした。

▼11月はたくさんのセミナーを実施しました。土曜日のセミナーも3回実施し、事務局職員はフル稼働でした。 講師の先生方の日程の関係で、集中してしまいました。あまりにセミナーが多かったので、日程を取れず、 参加できなかった方もいらっしゃったのではと申し訳なく思っています。 また、そろそろ来年度のセミナーの計画を始めています。ご希望のセミナーのテーマ等がありましたら、 お気兼ねなく当センター宛ご連絡ください。お電話でもメールでも結構です。

▼伊藤隆先生の「漢方医から職場への処方箋」の連載が終了しました。とても参考になるお話が多く、大変好評でした。 この原稿はすべてホームページに掲載していますのでご覧ください。せっかくなので、冊子として印刷できないかと現在検討中です。 もし、冊子ができましたらご希望される方には配付したいと考えています。

▼ホームページのトップページに「茨城の風景」という写真を掲載しています。 今回は水戸市の紅葉を掲載しました。過去の写真も掲載していますので、ぜひ、ご覧ください。 県内にはなかなか良いところがありますね。今後も季節に合わせた写真を掲載していく予定です。 ぜひ、お楽しみに。

▼「つくばマラソン」の結果報告です。ゲストランナーに「ダンディー坂野」を迎え、 スターターはあのバルセロナで「こけちゃいました!」の「谷口浩美」さんでした。 過去最大の17000人という参加者で、会場は凄い賑わいでした。特に、女性の参加者が激増し、 そのユニフォームがカラフルになってきているので、本当に華やかでしたよ・・・。

▼私の記録は3時間9分8秒でした。10月末の「手賀沼エコマラソン」でハーフマラソンを走り、 1時間22分59秒で年代別2位入賞と好調な状態だったのですが、11月に入り「落とし穴」が・・・。 11月中旬に風邪で1週間、全く走れない状態になってしまいました。風邪からは何とか脱出はできたのですが、 その影響が大きく、本来の走りには程遠い走りで、残念ながら「サブスリー」で走ることは出来ませんでした。 マラソンはトレーニング以外に、「食事」、「休養」が非常に重要で、このバランスが崩れると良い結果は出ません。 また、今回も課題が・・・。

▼来月の予告。12月はレース出場の予定はありません。 来月の「勝田全国マラソン」に向けてのトレーニングの日々となります。 年末年始は私にとっては非常に難しい時期です。 年末年始の休暇での「練習し過ぎ」、お正月での「飲み過ぎ」、「食べ過ぎ」という「過ぎ」が多いので注意しないと・・・・。 皆さんもご注意ください。


次回の第64号は、平成22年12月下旬配信予定です。
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