平成24年度調査研究報告書(冊子)のアンケート掲載の誤りについて
平成24年度調査研究報告書(冊子)について、31~34ページの「アンケート用紙」の掲載に誤りがありました。
実際に調査研究時に使用した「アンケート用紙」は、現在ホームページにアップロードされている報告書に掲載されています。
なお、既に調査研究報告書をお持ちの方で、訂正版を改めて送付希望される方は当連絡事務所までご連絡下さい。
この度は大変申し訳ございませんでした。今後はこの様な事が無いよう、心掛けて参ります。


1 はじめに

長期に渡る経済不況、雇用不安、雇用形態の多様化などのストレス危機を背景に、近年心の健康問題をかかえる労働者は増加傾向にある。また、心の健康問題による休業者についてはその数の増加に加え、長期の休業期間を必要とする事例や再休業を繰り返す事例、いわゆる復職困難事例の対応について苦慮している事業場も多い。
心の健康問題による休業者の復職に際しては、主治医からの復職可能の診断書に加え専門知識を持った産業保健スタッフや人事労務担当者と協議の上で復職可能かの判断を行い、制度化された復職プログラムやリワークプログラム(以下リワーク)を利用している企業も一部存在する。
しかし、小規模事業場では専門知識を有する産業保健スタッフの配備や制度の整備も不十分であり、人事労務の担当者が主治医からの復職可能の診断書をたよりに対応を行っているケースも多く存在していると考えられる。そのような事業場においては、担当者は他の業務を兼務していることが多く、その場合、休業者の対応だけでなく、産業保健推進センターなどで開催される研修会等に参加する時間も十分確保できず、不十分な知識のもと対応を行っているという問題点が指摘されている。
そこで今回、茨城県内の事業場を対象としてアンケート調査を実施し、復職判定や復職プログラムの作成に関与する人事労務担当者の対応の実態とニーズを明らかにすることで、復職支援活動が円滑に行うためのノウハウを提供することを目的とし、調査研究を実施した。

2 調査方法

調査1:量的調査
調査対象
①茨城産業保健推進センター利用歴のある茨城県内の事業場698社における心の健康問題による休業者の復職支援担当者
方法
郵送にてアンケート用紙を配布し本調査研究に同意の得られた復職支援担当者より回収した。
調査2:質的調査
方法
アンケートの自由記載欄の回答による。

3 結果と考察

<結果>
調査1
回収率は35.0%(698人中244人)であった。

1)回答者の基本属性
事業場の規模は、49人以下が22.5%、50人以上299人以下が55.0%、300人以上が22.5%であった。
業種は製造業が最も多く42.4%、次いで医療・福祉13.5%、サービス業9.4%と続いた。
性別・年齢は男性75.8%、女性24.2%であり、30代~50代が88.4%を占めた。
また職種は事務職が最も多く84.8%を占めた。復職支援に割いている時間の割合は1%以下33.3%、1%超5%以下29.4%、5%超50%以下26.2%、50%超11.1%であった。

2)リワーク、復職プログラム利用の指導
復職にあたり、リワークや復職プログラムを利用するよう指導しているのか調査した。
リワークを利用するよう「指導することがある」と回答した事業場は8.6%、「指導したいが実現していない」が11.2%、「指導していない」が80.2%であった。
事業場規模別にみると、49人以下の事業場ではそれぞれに0.0%、10.6%、89.4%、50人以上299人以下の事業場では3.8%、10.0%、86.2%、300人以上の事業場では27.3%、14.5%、58.2%であった(表1)。
事業場規模が大きくなるほど、リワークを利用するよう「指導することがある」と回答した事業場の割合が増加しており、300人以上の事業場ではその割合は25%以上にのぼった。復職支援プログラムを利用するよう「指導することがある」と回答した事業場は32.6%、「指導したいが実現していない」が13.9%、「指導していない」が53.5%であった。事業場規模別にみると、49人以下の事業場ではそれぞれ10.2%、10.2%、79.6%、50人以上299人以下の事業場ではそれぞれ27.6%、15.0%、57.4%、300人以上の事業場では64.8%、14.8%、20.4%であった(表2)。
事業場規模が大きくなるほど、復職支援プログラムを利用するよう「指導することがある」と回答した事業場の割合が増加しており、300人以上の事業場ではその割合は約65%に及んだ。
 
3)主治医から復職可能の診断書が提出された後の対応について
主治医から復職可能の診断書が提出された後の対応については「診断書に記載されている日付」で復職させると回答した事業場が38.1%、「その他の手続きが必要」が61.9%であった。
「その他の手続き」としては、復職判定委員会が18.5%、リワークが8.9%、復職プログラムが58.5%、産業医面談が72.6%であった。
事業場規模別にみると、「その他の手続きが必要」と回答したのは、49人以下の事業場では43.5%、50人以上299人以下の事業場では順に58.8%と回答し、300人以上の事業場では順に84.9%と回答した(表3)。
主治医から復職可能の診断書が提出された後の対応は300人を境に指導の有無が大きく異なった。

4)復職支援に関して困っていること
回答が多かった主な項目とその割合は、「職場の余裕がない」が40%、「知識・資格」が36%、「制度整備」が23%、「働ける状態ではないが本人が復職を希望」が20%となっていた。

5)復職担当者が望む支援について
復職担当者の活動に役立つものとして回答が多かった項目とその割合は「事業場外の研修」が42%、「事業場外相談体制」が36%、「管理監督者の理解」が30%、「事業場内の研修」が27%、「教育資料」22%であった。 
 
調査2
70名より回答を得た。「素人でも受講できるような研究会等」「相談窓口が充実」といった外部の支援を求める意見、「職場復帰プログラムを導入したい」「社内の体制」などに言及した内部の活動を行いたいという意見、「中小企業には余裕がない」という現状をよく表す意見などが得られた。

<考察>
事業場の規模別にメンタルヘルス対策のレベルに差があり、実際の対応についても、規模別に違いがある可能性が示唆された。
本調査において、以上の結果を勘案し、事業場規模別のメンタルヘルス対策プランを作成した。今後は、事業場の規模に応じたメンタルヘルス対策が行われることと期待する。
 

表1

表2

表3

報告書全文・PDF 研究成果:事業規模別復職支援対策のしおり・PDF

調査研究