関連機関

茨城産業保健総合支援センター

労働者健康安全機構

茨城労働局

厚生労働省

茨城県医師会

土浦市医師会

土浦地産保通信


土浦地産保通信(第12号)

平成28年1月15日
新年、明けましておめでとうございます。土浦地産保通信は、これからも随時、皆様に産業保健に関するニュースや役に立つ情報をお届けしたいと考えております。
この通信はEメールでも送付可能です(PDF文書添付)。希望される場合は、当センターまで連絡してください(アドレスは下蘭にあります)。

ニュース

軽井沢スキーバス転落バス運行会社、健康診断受けさせず
産経新聞は15日、長野県軽井沢町のスキーバス転落事故で、事故を起こしたバス運行会社「イーエスピー」(東京都羽村市)が、運転手に労働安全衛生法で定められた健康診断を受けさせていなかったとして関東運輸局から13日に道路運送法に基づく行政処分を受けていた、と報じています。また、別の新聞は、東京労働局が15日、労働関係法令違反の有無を調べるため、このバス会社と旅行会社に立ち入り調査を開始したとも伝えています。
今回の事故で、運転手の健康状態との因果関係を判断するのは早計ですが、7日には、東京都小金井市で回送中の路線バス運転手が、座席であおむけになった状態でアパートに突っ込む事故もあり、注目されるところです。
疾病が交通事故の要因となるおそれがあることは、よく知られています。トラック運転者等は、不規則な勤務形態から、糖尿病などの生活習慣病を患う人も多く、これらの疾病を要因とした事故も発生しています。国土交通省は、こうした事故を「健康起因事故」と称し、生活習慣や就労環境の悪化がメタボや高血圧症(⇒脳血管疾患、心血管疾患)を招き、乗務中に失神・意識障害などの症状が発症して事故につながるとしています。
運輸交通業における労働者の定期健康診断の有所見率平成15 年から24 年までに国土交通省に報告された事業用自動車の健康起因事故件数の推移は、下図のとおり増加傾向にあり、健康起因事故を防止するためには、定期的な健康診断による健康状態のチェックを欠かさないことが重要です。
ちなみに国土交通省によれば、運輸交通業における労働者の定期健康診断の有所見率は、全産業平均の有所見率に比べて10 ポイント以上高く、約64%となっています。(図の出典:国土交通省「健康管理マニュアル」より引用。件数には、健康状態の急変等を確認し、乗務をとりやめたものも含まれます。)

関連情報

トラック事業者ら、8割強で労働基準関係法令違反
自動車運転者を使用する事業場に対する平成26年の監督指導、送検の状況
先月25日、厚生労働省は全国の労働局や労働基準監督署が行った「自動車運転者を使用する事業場に対する平成26年の監督指導、送検の状況」を発表しました。
今回、監督指導を行った事業場は3,907事業場。このうち8割強(3,240事業場)で労働基準関係法令違反がありました。この主な違反をみてみると、労働時間が2,187事業場(56.0%)と半分を占め、割増賃金が951事業場(24.3%)、休日が252事業場(6.4%)と続いています。また、「労働時間等の改善基準」告示(注)違反が認められた事業場は全体の6割強(2,373事業場)で、トラックの主な違反をみてみると、最大拘束時間が1,517事業場(54.9%)、総拘束時間が1,198事業場(43.3%)、休息時間が1,188事業場(42.7%)となっています。
違反内容の第1位となった長時間労働については、業界の構造的な問題に加え、改善基準告示で定められている拘束時間や休息時間など自動車運転者特有の管理が複雑であり、事業者の理解が不十分なことにも起因しているものと思われます。また、割増賃金違反についても“出来高払い”制を理由に割増賃金を支払していない例が見られます。
いずれにしてもトラック、タクシーなどの自動車運転者は、依然として長時間労働が問題となっており、脳・心臓疾患の労災認定件数がもっとも多い職種です。今回の調査結果に健康管理に関する言及はありませんでしたが、脳・心臓疾患発症を予防するには、健康診断の適正な実施とその後のフォローが大切なことは言うまでもありません。
(注)「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)のこと。トラック運転者に係る改善基準告示では、遵守すべき1ヵ月の総拘束時間が原則293時間で、労使協定を締結した場合320時間以内、1日の総拘束時間は13時間以内を基本とし、延長する場合であっても16時間以内となっています。
詳しくはこちらをご覧下さい。 (厚生労働省のHPにリンクします。)
【穴埋めコラム めざせ衛生管理者〜過去問の実戦的解説 その10】
今回は、衛生管理者試験の過去問題から有害業務(有機溶剤)について学びましょう。
問題)有機溶剤に関する記述のうち、正しいのは次のうちどれですか?
  1. 有機溶剤の蒸気は、呼吸器から吸収されやすいが、皮膚から吸収されることはない。
  2. 有機溶剤は、脂溶性が低いため、脂肪などの多い脳には入りにくい。
  3. 二硫化炭素による健康障害として顕著なものは、再生不良性貧血などの造血障害である。
  4. トルエンによる健康障害として顕著なものは、網膜細動脈瘤を伴う脳血管障害である。
  5. 酢酸メチルによる健康障害では、視力低下、視野狭窄などが見られる。
解説)
少し難しかったかな。再生不良性貧血を起こす物質として有名なのはベンゼンで、トルエンは中枢神経系に作用します。有機溶剤の慢性中毒の症状は、多彩であると同時にあいまいなものが多いのですが、そのほとんどが蓄積毒性=慢性中毒の危険を持っています。

土浦地域産業保健センターでは、国の補助事業として

  • メンタルヘルスを含む労働者の健康相談(不調者への保健指導等)
  • 健康診断の結果についての医師から意見聴取(有所見者の健康保持についての意見)
  • 長時間労働者に対する面接指導(医師等による指導)
  • 医師、保健師等の個別訪問による保健指導(健康相談、労働者への教育等)

 等の支援を行っております。どうぞ、ご利用ください。


発行者:独立行政法人労働者健康福祉機構
 茨城産業保健総合支援センター 土浦地域産業保健センター
発行責任者:コーディネーター 野口 清
 〒300-0052 土浦市東真鍋町2-5真鍋事務所庁舎内
  電話:029-825-2911   FAX:029-825-2912   E-mail: アドレスibarakis.johas.go.jp
※ この通信は、これまでに土浦地産保をご利用いただいた事業場に発信しております。

※衛生管理者試験過去問の正解は、5.です。