県南さんぽだより 第50号
2016/1/1発行 発行所:県南地域産業保健センター 発行人:大西 慶造
「距離170キロ、制限時間46時間のトレイルレースを完走!!」
龍ヶ崎労働基準監督署 青山 努
(前茨城労働局労働基準部健康安全課長、元龍ヶ崎労働基準監督署長)
◇ご挨拶
龍ヶ崎労働基準監督署管内の企業の皆さん、お元気ですか。龍ヶ崎労働基準監督署の青山です。
平成27年3月末、茨城労働局労働基準部健康安全課長を最後に、定年を迎えました。龍ヶ崎署には2回勤務し、合計7年間、皆様方に大変お世話になりました。この場をお借りして、お礼申し上げます。
平成27年4月からは再任用職員として、龍ヶ崎署で、週に4日間、窓口での相談や事業場の労務管理、安全衛生管理等の指導の仕事をしています。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
◇ウルトラトレイルマウント富士(UTMF)に挑戦
私は現役時代から趣味でマラソンをしていますが、現在も相変わらず走り続け、全国各地の大会に出場しています。
皆さんは「ウルトラトレイルマウント富士」(通称「UTMF」と言います。)というレースがあるのをご存じでしょうか?富士山の周囲の山々のコースを170キロメートル、制限時間が46時間以内で走るというトレイルレースです。何度か、テレビでも放送されたことがありますので、ご覧になった方もいるかもしれません。
このUTMFには現役時代の平成26年4月に初挑戦しました。この時は、あまりの寒さに低体温症になって、夜中に山の中で動けなくなり、55キロ地点で無念のリタイアをしました。そして、平成27年9月に、リベンジを果たすべく2回目の挑戦をしました。 今回の大会は平成27年9月25日金曜日の午後1時にスタートし、3日後の9月27日日曜日の午前11時が制限時間となっていました。コースは河口湖八木崎公園をスタートし、反時計回りに富士山の周りを1周するというものでした。スタートする9月25日はあいにくの雨模様で、天気予報でも3日間、雨マークで、前途多難な雲行きでした。
雨の中、午後1時に、約1400人のランナーが一斉にスタートしました。スタートして1、2キロのロードを走り、最初の山である足和田山の登り口の手前まで来たところで、突然、ストップしてしまいました。雨のため、コースの路面がドロドロになっているので、危険防止のため、数人ずつしか登らせないよう人数制限をしていました。スタート直後から、大きなタイムロスが出て、暗雲が漂い始めていました。ここで、長時間待たされ、やっと足和田山の登り口にたどり着きましたが、たくさんのランナーとドロドロの路面で、大渋滞でその後もなかなか順調には前に進みませんでした。
レースでは1日目の夜、深夜に20キロ以上の3つの山越え(雪見岳、熊森岳、長者ヶ岳)をしなければならない区間が厳しかったです。真っ暗な山の中をヘッドランプの明かりを頼りに前に進みましたが、ドロドロのコースでなかなか前に進めず、70キロ地点の富士宮のエイドに向かう途中で、制限時間をオーバーしてしまいました。2年連続のリタイアかと諦め、やっとのことで、富士宮のエイドに着いたところ、ここで、関門の制限時間が1時間延長されたことが知りました。周りのランナーが次々とエイドを出発して行くので、私も取り敢えず、次のエイドまでは行くかと水とスポーツドリンクを補給し、エイドを出発しました。私にとっては、ここが最大のピンチでした。ちなみに、大会に参加した半数近くの参加者がここで関門アウトになってしまいました。
その後は、関門時間を気にしながら、1つ、1つ、次のエイドを目指して走り続けました。日中は妻と次男がインターネットの位置情報※(※選手の各関門の通過時刻がインターネットで確認できる情報)で現在の位置を確認しながら、エイドに駆けつけ、食べ物の差し入れや、応援をしてくれたのが大きな力になりました。
2日目の夜は120キロ地点のすばしり付近で迎えました。残りは約50キロで、3分の2を過ぎているとはいえ、石割山と杓子山という最後の難関が控えていました。今回の大会で一番辛かったのはこの3日目でした。夜中の石割山では泥だらけのコースで滑りながら、大渋滞に苦戦しました。その後、深夜の杓子山の山中では、参加者が疲労と睡魔のため、山のあちこちに倒れるように横になって眠っていました。真っ暗な山の中をヘッドランプの明かりを頼りに歩いていると、突然、倒れたように寝ているランナーが現れ、何度もびっくりしました。
私は制限時間に余裕もなかったことから、仮眠する時間もなく、ひたすら、次のエイドを目指して暗い山を進んでいました。しかし、3日間、一睡もせずに、走り続けて来ましたが、さすがに疲労困憊状態で、意識も朦朧として来ました。真っ暗な林道を進みながら、明け方、霧も出てきたこともあり、前が見えなくなってしまいました。ふらふらとしていて、何度か道を間違えそうになったので、その後は、後続のランナーの背中に「小判サメ」のようにぴったりとついて走る作戦にしました。夜が明け、最後のエイドの富士小学校に到着しました。ここまで来ると、残りの距離は約15キロで、霜山を1つ越えるだけとなったので、やっと完走が見えてきました。
ここからは最後の力を振り絞って、霜山を登り切り、ゴールを目指しました。ゴール手前2キロ付近で、次男が待っていてくれ、ゴールまで伴走してくれました。ゴールタイムは44時間22分16秒、3日間の長い長い旅が終了しました。2年越のUTMFの完走を無事に達成することが出来ました。涙こそ出ませんでしたが、嬉しい、嬉しいゴールでした。
今回の大会は3日間、雨だったことで、コースコンディションが最悪の状態となり、過去の大会史上最悪の41.5%の完走率となりました。
しかし、60歳を超えて、3日間、不眠不休で170キロも走り続けることが出来たのは、健康な体と家族の手厚いサポートがなければ、完走はできなかったと思っています。そして、これからも元気で走り続けたいと思っています。そのためには健康管理により一層注意して生活していこうと思っています。
170キロのコースには、12か所のエイドがあり、そこで、地元の名産品である精進湖すい豚、ゆば丼、富士宮やきそば、みくりやそば、すその水ギョーザ等々が提供されました。きついレースでしたが、エイドでの温かい食べ物とスタッフの応援が大きな力になりました。ただ、今回は3日間、ずっと雨模様だったので、綺麗な富士山を見ることは出来ませんでした。とても残念です。
このUTMFについては、大会のホームページがあるので、興味のある方はご覧ください。
「ストレスチェック制度」の実施にあたって
茨城産業保健総合支援センターからのお知らせ
◆平成26年の労働安全衛生法の改正により新たに策定された「ストレスチェック制度」(以下「ストレスチェック」を「SC」と記す。)については、平成27年12月1日より施行され、労働者数50人以上の規模の事業場にそのSC実施が義務づけられました。厚生労働省から、「SC実施プログラム」、「医師向けの面接指導マニュアル」なども公表されています。
◆SC制度においては、「一次予防」、「二次予防」、「三次予防」が使われていますが、それらは、予防医学で用いられている用語です。SC制度においては、一次予防を、労働者自身のストレスへの気づき及び対処の支援並びに職場環境の改善を通じた、メンタルヘルス不調の未然防止、二次予防を、メンタルヘルス不調の早期発見及び適切な対応、三次予防を、メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰支援と定義しています。
◆SC制度の目的は、一次予防が目的です。メンタルヘルス不調を予防するという一次予防の取組みがSC制度の根幹になります。その具体的な方法として、個々の労働者への対策としては、SCによって高ストレスと判定された労働者に面接指導を行い、面接した医師が必要と判断した場合は就業制限等の配慮が必要な旨の意見を述べ、事業者は必要に応じ就業上の措置を実施することで、メンタルヘルス不調の予防を図ることになります。
◆なお、50人未満の小規模事業場の皆様は、SC実施について努力義務となっています。50人未満の小規模事業場でSCを実施する場合、助成金制度や医師による高ストレス者に対する面接指導の実施等支援措置がありますので、当地域産業保健センターまでご相談ください。
◆厚生労働省から公表された「SC実施プログラム」は、事業場で実施するものです。個人でSCを体験したい場合は、HP『こころの耳』に掲載している「5分でできる職場のSC」をご利用ください。
◆また、産業医学振興財団より、『嘱託産業医のためのSC実務Q&A』(定価2200円+税)が発行されています。この書籍は、産業医としてSC実施にあたり実務的に必要なポイントをQ&A形式に解説していますが、DVD付きで関連書式が利用でき、事業場でSCを担当する方や、衛生委員会の委員、産業看護職や心理職の方々も役に立つ書籍になっており、参考になるかと思います。
「編集後記」
昨年も、数多くの方に支えられました、誠に有難うございました。私たちも昨年の出来事を今年に活かし、地域のみなさんにより一層の信頼を頂けるよう努力してまいります。今年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。