石綿障害予防規則が制定されました

(さんぽいばらき 第23号/2005年7月発行)
茨城労働局

平成17年2月24日制定 施行:平成17年7月1日
これまで石綿の作業に係る規制については、特定化学物質等障害予防規則(特化則)により規制されてきたところですが、昨年10月1日よりクリソタイル(白石綿)等の石綿を含有する建材、摩擦材、接着剤の製造が禁止されたことにより、今後は、石綿を含有する建築物の解体作業時に発散される石綿からのばく露防止が対策の中心となります。
これらの石綿ばく露防止対策は、石綿の製造や使用の場面ではなく、建築物の解体作業など、すでに使用されている石綿を除去する場面におけるものが中心となり、他の特定化学物質とは措置の内容が大幅に異なることとなります。
このため、建築物等の解体等の作業における対策の強化や石綿等が吹き付けられた建築物等における措置等の充実を図るとともに、特化則から分離し、「石綿障害予防規則」(石綿則)が制定され、平成17年7月1日より施行されます。
主要なポイントは下記のとおりです。

石綿等が使用されている建築物等の解体等の作業における石綿ばく露防止対策

*表1に解体される建築物等の種類ごとの関係規制の適用の有無を示す。

表1 建築物等の解体等における石綿等の除去等に対する規制の体系
解体等の対象  石綿等を塗布し、注入し、または貼り付けた建築物等
a.石綿等が吹き付けられた建築物等 b.石綿等が貼り付けられた建築物等(粉じんを著しく飛散するおそれのあるもの) c. a.、b.以外の建築物等
実施すべき
事項
耐火建築物または準耐火建築物 その他
事前調査
作業計画
計画の届出
作業の届出  
特別教育
作業主任者
保護具等
湿潤化
隔離
作業者以外
立入禁止
関係者以外
立入禁止
注文者の
配慮

b.は、石綿含有保温材、石綿含有耐火被覆材、石綿含有断熱材を示すものである。


*表2に建築物における施行部位の例を示す。

表2 建築物における施工部位の例
施工部位 石綿含有建築材料の種類
天井/壁 内装材 スレートボード、けい酸カルシウム板第一種、パルプセメント板
天井/床 吸音断熱材 石綿含有ロックウール吸音天井板、石綿含有吹付け材
天井結露防止材 屋根折版用断熱材、石綿含有吹付け材
床材 ビニル床タイル、フロア材
外壁/軒天 外装材 窯業系サイディング、スラグせっこう板、押出成形セメント板、スレートボード、スレート波板、けい酸カルシウム板第一種
耐火
被覆材
吹付け石綿、石綿含有吹付けロックウール、石綿含有耐火被覆板、けい酸カルシウム板第二種
屋根材 スレート波板、住宅屋根用化粧スレート
煙突材  石綿セメント円筒、石綿含有煙突断熱材

 

(1)事前調査 石綿則第3条、第8条
  1.  事業者は、建築物等の解体等の作業を行うときは、あらかじめ、石綿の使用の有無を目視、設計、図書等により調査し、その結果を記録しておかなければならない。
    ただし、石綿等が吹き付けられていないことが明らかで、石綿が使用されているとみなして対策を講ずる場合、分析調査の必要はない。
  2.  建築物等の解体等の工事の発注者は、工事の請負人に対し、当該建築物等における石綿の使用状況等(設計図書等)を通知するよう努めなければならない。
(2)作業計画 石綿則第4条関係

事業者は、石綿が使用されている建築物等の解体等を行うときは、あらかじめ次の事項が示された作業計画を定め、当該作業計画により作業を行わなければならない。

  1.  作業の方法および順序
  2.  石綿粉じんの発散を防止し、または抑制する方法
  3.  労働者への石綿粉じんのばく露を防止する方法
(3)届出 労働安全衛生規則(安衛則)第90条、石綿則第5条関係
  1.  耐火建築物または準耐火建築物における吹付け石綿の除去作業については、工事開始の14日前までに所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。
  2.  次の作業については、工事開始前までに所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。
    1. 石綿含有保温材、石綿含有耐火被覆材、石綿含有断熱材の解体等の作業
    2. 1以外の吹付け石綿の除去作業
(4)特別教育 安衛則第36条、石綿則第27条関係

事業者は、石綿が使用されている建築物の解体等に従事する労働者に次の科目について教育を行わなくてはならない。

  1. 石綿等の有害性
  2. 石綿等の使用状況
  3. 石綿等の粉じんの発散を抑制するための措置
  4. 保護具の使用状況
  5. その他石綿等のばく露の防止に関し、必要な事項
(5)作業主任者 石綿則第19条、第20条関係

事業者は、特定化学物質等作業主任者技能講習を修了した者から、石綿作業主任者を選任し、次の事項を行わせなければならない。

  1. 作業に従事する労働者が石綿粉じんにより汚染され、またはこれらを吸入しないように、作業の方法を決定し、労働者を指揮すること。
  2. 局所排気装置、プッシュプル型換気装置、除じん装置等を1月を超えない期間ごとに点検すること。
  3. 保護具の使用状況を監視すること。
(6)保護具等 石綿則第14条、第44条から第46条関係
  1.  石綿を含む建材等の解体等をするときは、労働者に呼吸用保護具(防じんマスク)、作業衣または保護衣を使用させなければならない。
  2.  保護具等は、他の衣服から隔離して保管し、廃棄のために容器等に梱包したとき以外は付着したものを除去した後でなければ作業場外に持ち出してはならない。
(7)湿潤化 石綿則第13条関係

石綿を含む建材等の解体等をするときは、著しく困難な場合を除き、それらを湿潤なものとしなければならない。

(8)隔離・立入禁止等 石綿則第6条、第7条、第15条関係
  1.  吹付け石綿の除去を行うときは、当該作業場所をそれ以外の作業場所から隔離しなければならない。
  2.  石綿含有の保温材、耐火被覆材、断熱材の解体等を行うときは、当該作業に従事する労働者以外のものが立ち入ることを禁止し、その旨を表示しなければならない。
    また、特定元方事業者は、関係請負人への通知、作業の時間帯の調整等必要な措置を講じなければならない。
  3.  その他の石綿を使用した建築物等の解体等の作業においても、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、その旨を表示しなければならない。
(9)注文者への配慮 石綿則第9条関係

建築物等の解体工事等の注文者は、作業を請け負った事業者が、契約条件等により必要な措置を講ずることが出来なくなることのないよう、解体方法、費用等について法令の規定の遵守を妨げるおそれのある条件を付さないよう配慮しなければならない。

石綿等が吹き付けられている建築物の管理

石綿則第10条関係

  1.  事業者は、その労働者を就業させる建築物に吹き付けられた石綿が損傷、劣化等によりその粉じんを発散させ、労働者がその粉じんにばく露するおそれがあるときは、当該吹付け石綿の除去、封じ込め、囲い込み等の措置を講じなければならない。
  2.  事務所または工場の用に供される建築物の貸与者は、当該建築物の貸与を受けた2以上の事業者が共用する廊下の壁等に吹き付けられた石綿等が損傷、劣化等によりその粉じんを発散させ、労働者がその粉じんにばく露するおそれがあるときは、1と同様の措置を講じなければならない。

石綿含有製品の計画的な代替化の促進

石綿則第1条関係

事業者は、石綿を含有する製品の使用状況等を把握し、当該製品を計画的に石綿を含有しない製品に代替するようつとめなければならない。


情報誌「さんぽいばらき」第23号掲載(茨城労働局安全衛生課 作成)