健康診断について (2)

茨城産業保健総合支援センター
(茨城県医師会報 平成19年02月号掲載)
先月号の続き

(4) 「特定業務従事者の健康診断」

特定業務従事者の健康診断の細目については、労働安全衛生規則第45条に規定されています。
まず始めに、この健康診断は、定期健康診断であるということを強調させていただきます。
つまり、一般の労働者に対して1年以内ごとに1回行っている定期健康診断を、特定業務に就いている労働者に対しては、新たに配置するときとその後6ヶ月以内ごとに1回行うという規定です。
それを、「特定業務従事者の健康診断」と呼んでいます。
ですから、その健診項目は、前述の(3)「定期健康診断」の健診項目と全く同じです。
そして、その健診項目を省略できる場合の規定は、「定期健康診断」と同じ扱いになる場合と、「特定業務従事者の健康診断」に固有の扱いになる場合とがあります。
まず、「定期健康診断」と全く同じ扱いについて申し上げます。
それは、「身長の検査」「喀痰検査」「尿中の糖の有無の検査」「貧血検査、肝機能検査」「血中脂質検査」「血糖検査」「心電図検査」です。これらの項目についての省略の基準は、(3)「定期健康診断」をご覧下さい。
次に、特定業務従事者の健康診断に固有の省略基準をご説明します。
まず、4.胸部エックス線検査と喀痰検査については、1年に1回で足りると定められています。
また、次の5項目については、前回の健康診断でこの項目を受けており、かつ、医師が必要でないと認めるときは省略できると規定されています。

  1. 貧血検査
  2. 肝機能検査
  3. 血中脂質検査
  4. 血糖検査
  5. 心電図検査

また、前回の健康診断で、オージオメーターを使用して1,000Hz及び4,000Hzに係る聴力の検査を行っている者については、次回の健康診断においてはオージオメーターを使用せずとも、医師が適当と認める方法で行うことができます。
また、45歳未満の者についての聴力検査は、前回の健康診断でオージオメーターを使用していなくても、次回も医師が適当と認める方法で行うことができます。ただし、35歳、40歳の年度の健康診断については、その年度の1回目健康診断においては、オージオメーターを使用することが必要です。
なお、雇い入れ時の健康診断を、6ヶ月以内に受診している者の場合は、その者が受けた項目については省略して定期健康診断を実施することができます。また、後述する海外勤務労働者の健康診断や特殊健康診断を6ヶ月以内に受診している者の場合も、同様に受けた項目を省略して定期健康診断を実施することができます。

(5) 「特定業務」とは

特定業務とは、労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げてある、次の14業務です。

  1. 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
  2. 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
  3. ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務
  4. 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
  5. 異常気圧下における業務
  6. さく岩機、鋲(びよう)打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
  7. 重量物の取扱い等重激な業務
  8. ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
  9. 坑内における業務
  10. 深夜業を含む業務
  11. 水銀、砒(ひ)素、黄りん、弗(ふつ)化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
  12. 鉛、水銀、クロム、砒(ひ)素、黄りん、弗(ふつ)化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
  13. 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
  14. その他厚生労働大臣が定める業務

さて、この特定業務の定義は、いまひとつ具体性にかけるように思います。そこで、これに関する通達を探しましたが、昭和23年まで遡ってやっと行き合えました。
労働省労働基準局長と労働省婦人少年室長の連名になる、昭和23年8月12日付け基発第1178号通達「労働基準法施行規則第18条、女子年少者労働基準規則第13条及び労働安全衛生規則第48条の衛生上有害な業務の取扱基準について」がそれです。
この当時は、労働安全衛生法は存在していませんで、労働安全衛生の基準は労働基準法の中に含まれていました。労働安全衛生規則も労働基準法に付属していました。(旧)労働安全衛生規則第48条の衛生上有害な業務が(現行)労働安全衛生規則第13条第1項第2号に引き継がれているのです。

(6) 「特定業務」の詳細

以下、この古色蒼然たる通達を引用します。なお、読みにくい部分は一部修正しています。

  1. 高熱体を取り扱う業務とは、溶融又は灼熱している鉱物、煮沸されている液体等摂氏100度以上のものを取り扱う業務をいいます。
    著しく暑熱な場所とは、労働者の作業する場所が乾球温度摂氏40度、湿球温度摂氏32.5度、黒球寒暖計示度摂氏50度又は感覚温度摂氏32.5度以上の場所をいいます。
  2. 低温物体を取り扱う業務とは、液体空気、ドライアイスなどが皮膚に触れ又は触れるおそれのある業務をいいます。
    著しく寒冷な場所とは、乾球温度摂氏零下10度以下の場所をいいます。空気の流動がある作業場では、気流1秒当たり1メートルを加える毎に、乾球温度摂氏3度の低下があるものとして計算します。
    冷蔵倉庫業、製氷業、冷凍食品製造業における冷蔵庫、貯氷庫、冷凍庫等の内部における業務等が本号に該当します。
  3. ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務とは、ラジウム放射線、エックス線、紫外線を用いる医療、検査の業務、可視光線を用いる映写室内の業務、金属土石溶融炉内の監視業務等です。
    なお、その他の有害放射線とは、紫外線、可視光線、赤外線等であって強烈なもの、及びウラニウム、トリウム等の放射能物質をいいます。
  4. 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所とは、植物性(綿、糸、ぼろ、木炭等)動物性(毛、骨粉等)鉱物性(土石、金属等)の粉じんを、作業する場所の空気1立方センチメートル中に粒子数1000個以上、又は1立方メートル中15ミリグラム以上含む場所をいいます。
    特に遊離硅石を50パーセント以上含有する粉じんについては、その作業する場所の空気1立方センチメートル中に粒子数700個以上、又は1立方メートル中10ミリグラム以上を含む場所をいいます。
  5. 異常気圧下における業務とは、高気圧または低気圧下における業務をいいます。
    高気圧下における業務とは、圧気工法による業務(注1)や、各種潜水器を用いた潜水作業(注2)をいいます。
    (注1)潜函工法、潜鐘工法、圧気シールド工法等の圧気工法においては、作業室、シャフト等の内部が大気圧を超えますので、これが該当します。
    (注2)ヘルメット式潜水器、マスク式潜水器その他の潜水器(アクアラング等)を用い、かつ、空気圧縮機若しくは手押しポンプによる送気又はボンベからの給気を受けて行う業務が該当します。
    また低気圧下における業務とは、海抜3千メートル以上の高山における業務です。
  6. 身体に著しい振動を与える業務とは、衝程70ミリメートル以下及び重量2キログラム以下の鋲(びよう)打機は含みませんが、それ以外のさく岩機、鋲打機等を使用する業務はすべて該当します。
    (注)この健康診断は、前述の通り、定期健康診断の項目を実施します。
    この健康診断とは別に、振動工具取扱の業務に関する特殊健康診断があります。それについては次号以降の掲載になると思いますが、「チエンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針」という通達に基づく健康診断です。紛らわしいのですが、この「指針」に基づく健康診断は、特殊の項目についての特殊健康診断です。
  7. 重量物を取扱う業務とは、30キログラム以上の重量物を労働時間の30パーセント以上取扱う業務、及び20キログラム以上の重量物を労働時間の50パーセント以上取扱う業務をいいます。
    重激な業務とは、上記に準ずる労働負荷が労働者にかかる業務をいいます。
    (注)この健康診断とは別に、「職場における腰痛予防対策指針」に基づく特殊健康診断があります。
  8. 強烈な騒音を発する場所とは、100デシベル以上の騒音がある作業場をいいます。
    (注)この健康診断とは別に、「騒音障害防止のためのガイドライン」に基づく特殊健康診断があります。
  9. 坑内における業務については、通達に解説はありませんでした。
  10. 深夜業を含む業務については、通達に解説はありませんでした。
    (注)深夜業の定義は、労働基準法第37条において、午後10時から午前5時までと定められています。
  11. 水銀、(中略)石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務については、通達に解説はありませんでした。
  12. 鉛、(中略)アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所とは、以下の数値以上に有害物が空気中に存在する場所のことです。
    鉛=0.5mg/m3(注、鉛の産業衛生学会の2006年5月現在の許容濃度は0.1mg/m3)、水銀=0.1mg/m3、クローム=0.5mg/m3、砒素=1ppm、黄燐=2ppm、弗素=3ppm、塩素=1ppm、塩酸=10ppm、硝酸=40ppm、亜硫酸=10ppm、硫酸=5g/m3、一酸化炭素=100ppm、二硫化炭素=20ppm、青酸=20ppm、ベンゼン=100ppm、アニリン=7ppm
  13. また、その他これに準ずるものとは、鉛の化合物、水銀の化合物(朱のような無害なものを除く)燐化水素、砒素化合物、シアン化合物、クローム化合物、臭素、弗化水素、硫化水素、硝気(酸化窒素類)アンモニヤ、フォルムアルデヒド、エーテル、酢酸アミル、四塩化エタン、テレビン油、芳香族及びその誘導体、高濃度の炭酸ガスをいいます。ただし分量軽少で衛生上有害でない場合は該当しません。

(次号に続く)