産業保健 Q&A

<Q1> 一般健康診断は何を診断するのですか?
<Q2> 健康診断後の「医師による意見聴取」とは?
<Q3> 「事後措置」とは?
<Q4> 健康管理の観点から残業(時間外労働)時間のチェックは?
<Q5> 「二次健康診断等給付」とは?

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Q1 一般健康診断は何を診断するのですか?

一般健康診断については、常時使用する労働者を対象に1年以内ごとに1回定期に実施することと労働安全衛生法第66条、労働安全衛生規則第44条に規定されていますが、どのような検査を実施すればよいのでしょうか。また、医師が必要ないと認めたときは、省略することができるのでしょうか。

A1

一般健康診断の検査項目は、労働安全衛生規則第44条に規定されています。検査項目の一覧は下記の表のとおりです。また、医師が必要ないと認めたときは、省略することができる規定もあります。

検査項目 省略条件
1.既往歴および業務歴の調査 省略不可(特に喫煙歴および服薬歴は聴取)
2.自覚症状および他覚症状の有無の検査
3.身長、体重、胸囲、視力、聴力
(1000Hzおよび4000Hz)の検査
身長については、20歳以上の者は医師の判断に基づき省略可。
胸囲については、40歳未満の者(35歳の者を除く)および妊娠中の女性、BMIが22未満で胸囲の自己測定結果を申告した者は医師の判断に基づき省略可。
聴力検査は、45歳未満の者(35歳および40歳の者を除く)については、医師が適当と認めた方法に代えることができる。
4.胸部エックス線検査および喀痰検査 喀痰検査は、胸部エックス線検査で病変がない者、結核発病のおそれのないと診断された者は医師の判断に基づき省略可。
5.血圧の測定 省略不可
6.貧血検査(血色素量、赤血球数) 40歳未満の者(35歳の者を除く)は医師の判断に基づき省略可。
7.肝機能検査(AST,ALT,γ‐GTP)
8.血中脂質検査
(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
9.血糖検査またはHbA1c
10.尿検査(尿糖、尿蛋白) 省略不可
11.心電図検査(安静時) 40歳未満の者(35歳の者を除く)は医師の判断に基づき省略可。

 


Q2 健康診断後の「医師による意見聴取」とは?

定期健康診断の結果については、健診機関の医師により、「要再検」、「要精密検査」など診断がなされますが。それとは別に、労働安全衛生法に基づき、産業医に意見を聴くとされていますが、どのようなことを実施すればよいのでしょうか。

A2

労働安全衛生法第66条の4の規定により、事業者は定期健康診断において、異常の所見(有所見)があると診断された労働者について、産業医等の医師から意見を聴くことが求められています。産業医の選任義務のある事業場(労働者数が50人以上の規模の事業場)においては産業医に意見を聴くこととなりますが、労働者数50人未満の規模の事業場については産業医の選任義務がないので、「地域産業保健センター」を活用して医師による意見を聴くことになります。

意見の聴取は健康診断実施後3か月以内に行う必要があります。
意見の聴取方法は医師に健康診断個人票の「医師の意見欄」を記入することにより行います。
意見については、①就業区分およびその内容についての意見、②作業環境管理および作業管理についての意見の2点になります。
① 就業区分およびその内容についての意見は、下記の区分例を参考にしてください。
就業区分 内容 就業上の措置の内容
通常勤務 通常の勤務でよいもの 特段の制限も配慮も要さない
就業制限 勤務に制限を加える必要
がある者 勤務による負荷を軽減するため、労働時間の短縮、出張の制限、時間外労働の制限、労働負荷の制限、作業の転換、交替作業の禁止、高所作業の禁止、就業場所の変更、深夜業の禁止、深夜業回数の減少、昼間勤務への転換等の措置を講じる。
要休業 勤務を休む必要がある者 療養のため、休暇、休職等により一定期間勤務させない措置を講じる。
② 作業環境管理および作業管理についての意見
健康診断の結果、作業環境管理および作業管理を見直す必要がある場合には、作業環境測定の実施、施設または設備の設置、改善および作業方法の見直し、改善その他の適切な措置について意見を求めます。

「健康診断実施後の流れ」pdfを参照願います。


Q3 「事後措置」とは?

定期健康診断の実施後の措置について、どのように進めればよいでしょうか。

A3

事業者は、労働安全衛生法第66条の5の規定により、労働安全衛生法第66条の4に基づき行った意見聴取で得た意見により、具体的に就業上の措置を講じなければなりません。
定期健康診断の実施後の措置としては、
① 診断区分(医療措置区分)判定に基づく措置
② 就業措置区分判定に基づく措置
③ 保健指導区分判定に基づく措置
以上の3つに整理されます。
①について、「要精密検査」、「要治療」の診断区分(医療措置区分)判定の場合、受診勧奨を行うこととなります。
②について、「条件付き通常勤務」、「就業制限」、「要休業」の判定の場合、それらの具体的な内容に即し措置を講じることとなります。
③について、「食事指導」、「運動指導」等の判定の場合、労働者に応じた生活習慣の改善指導を行うこととなります。

「健康診断実施後の流れ」pdfを参照願います。


Q4 健康管理の観点から残業(時間外労働)時間のチェックは?

残業時間や休日勤務など超過勤務がどのくらいになれば、健康管理面で対処しなければならないでしょうか。
また、具体的には、どのように進めればよいでしょうか。

A4

労働安全衛生法では、いわゆる「過重労働」による脳・心臓疾患の発症を予防するため、長時間にわたる労働により疲労の蓄積した労働者に対して労働者の申出により、事業者は医師等による「面接指導」を実施することが義務づけられています。
面接指導対象者として、労働時間について週40時間を超える時間外労働時間・休日労働時間の合計が1月当たり100時間を超えた場合、3ヶ月でみて1月当たり80時間を超えた場合は、疲労の蓄積のおそれもありますので、上記の「面接指導」の実施を検討してください。
労働安全衛生法では、下記の労働者を対象にしています。
●面接指導対象者 時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる労働者
(事業者は労働者から面接指導の申出を受けて面接指導を実施の義務)

長時間の労働(時間外・休日労働時間が1月当たり80時間超)により、疲労の蓄積が認められ、又は、健康上の不安を有している労働者
(事業者は申出を受けて実施の努力義務)
事業場において定めた基準に該当する労働者
(事業場の規定により実施)
※例えば、時間外・休日労働時間が月45時間を超えたら面接指導対象
なお、地域産業保健センターでは、平成20年4月より面接指導の相談窓口を開設しています。
産業医のいない50人未満の事業場の長時間労働者への面接指導のお申込みに、産業医の資格を持った医師等が対応します。

面接指導をうけるには費用はかかりません。

面接指導の結果、医師の意見を参考に、事業者は、労働時間の短縮・時間外労働の制限・労働負荷の制限・作業の転換等就業上の措置を講じることとなります。


Q5 「二次健康診断等給付」とは?

定期健康診断の実施後、労災保険請求により、二次健康診断等給付を受けることができると聞きましたが、どのような内容でしょうか。

A5

下記1.又は2.のいずれかに該当する方が、労災保険請求により、二次健康診断等給付を受けることができます。

  1. 一次健康診断の結果において、
    (1) 血圧の測定
    (2) 血中脂質検査
    (3) 血糖検査
    (4) 腹囲の検査又はBMI(肥満度)の測定
    以上の4つの検査について異常の所見があるとされた方
  2. 上記の4つの検査のうち、1つ以上の項目で異常なしの所見があるが、それらの検査項目について、就業環境等を総合的に勘案すれば、異常の所見が認められると産業医等から診断された方
    • 労災保険制度に特別加入されている方及び既に脳血管疾患又は心臓疾患の症状を有している方は対象外となります。
    • 産業医等とは、事業場に選任されている産業医、地域産業保健センターの医師及び小規模事業所が共同選任した産業医の要件を備えた医師等をいいます。

二次健康診断等給付

  1. 二次健康診断
    脳血管及び心臓の状態を把握するために必要な検査
  2. 特定保健指導
    二次健康診断の結果に基づき、脳・心臓疾患の発症の予防を図るため医師等により行われる保健指導

 

 

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