退社間際の有給休暇の請求は可能か

産保亭扇太

――― 横丁のご隠居さん人情相談 労務管理編 第3回
与太郎 「ご隠居さんいるかい」
ご隠居  「与太郎じゃあないか。正月早々、何かようかい?」
与太郎 「おいら、妖怪じゃないぞ。ほら、ちゃんと足も付いている」
ご隠居 「そうじゃない。何の用か、ていうことを聞いてんだ」
与太郎 「年次有給休暇って知っているかい?」
ご隠居 「ああ、知っているとも。6ヶ月以上勤務すると、最低10日間は給料を貰って休みが取れるという権利のことだ」
与太郎 「おいらの叔父さんのことなんだが、会社を辞めることになった。残っている有給休暇を全部使いきって、その最後の日で退職しようとしたら、会社の方では認めないって言っているそうなんだ。そんなのありかい?」
ご隠居 「わしは蟻ではないが、蟻は働き者のたとえじゃ」
与太郎 「ご隠居さんも冗談を言ってら。早く、本題にもどしてよ」
ご隠居 「すまん。ところで与太郎は、年次有給休暇の時季変更権というのをしっているかい?」
与太郎 「いいや」
ご隠居 「簡単にいうと、会社の業務に重大な支障がある場合には、会社は、請求された休暇の時季を変更できるということだ」
与太郎 「じゃあ、叔父さんは有給休暇を取れないっていうことかい」
ご隠居 「いや。会社には時季変更権がある。しかし、時季変更というからには、退職日をこえての変更はありえない。つまり、他に変更できる日がないということは、時季変更権を使うこともできないというわけだ」
与太郎 「なるほど。でも、それでは会社も気の毒だな」
ご隠居 「たしかにそうだ。例えば、業務引継ぎの必要があるときはそうだろうな」
与太郎 「そんな時はどうしたいい?」
ご隠居 「そうだな、退職日を繰り下げて、業務引継ぎなどのため、数日出勤して貰うっていう方法がある。ただし、解雇でない限り会社が一方的に退職日を決めることはできないから、よく話し合うことが大切かな」
与太郎 「それを聞いて安心した。安心したら腹が減った」
ご隠居 「朝、なにを食べたんだい?」 
与太郎 「七草粥」 
ご隠居 「どおりで。七草粥と年次有給休暇の消化は早い方がいい」 

おあとがよろしいようで