「騒音対策について」

三菱化学(株) 人事部健康開発センターグループマネージャー
茨城産業保健総合支援センター 産業保健相談員 武田 繁夫
(さんぽいばらき 第28号/2007年3月発行)

職場環境の快適化に向けて職場ではいろいろな取り組みがなされてきているが、快適化を妨げる大きな要因として騒音がある。ここでは、厚生労働省が示している「騒音障害予防のためのガイドライン」(平成4年10月1日、基発第546号以下 以下「ガイドライン」という)等を元に、騒音対策の進め方を紹介したい。なお、ガイドラインは、「労働衛生のしおり」に全文が掲載されている。

1. 騒音作業

ガイドラインでは、労働安全衛生規則の規定に基づき、定期に、等価騒音レベルを測定することが義務づけられている屋内作業場や、各種の測定結果から等価騒音レベルで85db(A)以上になる可能性が大きい作業場を、「騒音作業」とし、騒音に係る作業環境測定や健康診断の実施などを求めている。しかし、職場の騒音対策を進める場合は、労働安全衛生法第28条の2で求めているように、騒音作業だけに限定することなく騒音レベルの測定等を実施し、労働者へのリスクを評価した上で対象作業や場所を決めていくことが必要である。

2. 騒音のリスク評価

  1. 作業環境測定
    ガイドラインでは屋内作業場と屋外作業場に分けて、作業環境測定の実施方法が定められている。屋内作業場では、作業場の平均的な騒音レベルを測定するA測定と、音源に近接する場所において作業が行われる場所で、騒音レベルが最も大きくなると思われる時間に、当該作業が行われる位置において測定を行うB測定を併せて実施することとしている。また、屋内作業場以外の作業場では、B測定のみを実施する。測定結果は、表1の作業環境測定結果の評価基準によって評価し、表2の管理区分ごとの対策に従って必要な対策を実施する。

    表1 作業環境測定結果の評価基準
    B測定
    85db(A)
    未満
    85db(A)以上
    90db(A)未満
    85db(A)
    未満
    A測定
    平均値
    90db(A)
    以上
    第 I 管理区分 第 II 管理区分 第 III 管理区分
    85db(A)以上
    90db(A)未満
    第 II 管理区分 第 II 管理区分 第 III 管理区分
    90db(A)以上 第 III 管理区分 第 III 管理区分 第 III 管理区分
    備考1 「A測定平均値」は、測定値を算術平均して求めること。
      2 「A測定平均値」の算定には、80db(A)未満の測定値は含めないこと。
      3 A測定のみを実施した場合は、表中のB測定の欄は85db(A)未満の欄を用いて評価を行うこと。

    表2 管理区分ごとの対策
    管理区分 対策
    第I管理区分  第Ⅰ管理区分に区分された場所については、当該場所における作業環境の継続的維持に努めること。
    第Ⅱ管理区分 第Ⅱ管理区分に区分された場所については、当該場所を標識によって明示する等の措置を講ずること。
    施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、その結果に基づき、施設又は設備の設置又は整備、作業工程又は作業方法の改善その他作業環境を改善するため必要な措置を講じ、当該場所の管理区分が第I管理区分となるよう努めること。
    騒音作業に従事する労働者に対し、必要に応じ、防音保護具を使用させること。
    第Ⅲ管理区分
    1. 第Ⅲ管理区分に区分された場所については、当該場所を標識によって明示する等の措置を講ずること。
    2. 施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、その結果に基づき、施設又は設備の設置又は整備、作業工程又は作業方法の改善その他作業環境を改善するため必要な措置を講じ、当該場所の管理区分が第 I 管理区分又は第 II 管理区分となるようにすること。なお、作業環境を改善するための措置を講じたときは、その効果を確認するため、当該場所について作業環境測定を行い、その結果の評価を行うこと。
    3. 騒音作業に従事する労働者に防音保護具を使用させるとともに、防音保護具の使用について、作業中の労働者の見やすい場所に提示すること。
  2. 騒音ばく露量の測定
表3 騒音の許容基準
中心周
波数
(Hz)
 各曝露時間に対する
許容オクターブバンドレベル(db)
480分 240分 120分 60分 40分 30分
250 98 102 108 117 120 120
500 92 95 99 105 112 117
1000 86 88 91 95 99 103
2000 83 84 85 88 90 92
3000 82 83 84 86 88 90
4000 82 83 85 87 89 91
8000 87 89 92 97 101 105
( 日本産業衛生学会 : 2006 )

日本産業衛生学会では、表3に示した騒音の許容基準値を示しており、「この基準以下であれば、1日8時間以内の曝露が常習的に10年以上続いた場合にも、騒音性永久閾値移動を1kHz以下の周波数で10db以下、2kHz以下で15db以下、3kHz以上の周波数で20db以下にとどめることが期待できる」としている。
ガイドラインでは作業場の評価を行っており、日本産業衛生学会の許容基準では労働者への健康影響の評価を行っている。両者の結果は、一致しないケースもあり、それぞれの特長を生かして、評価を行うことが必要である。また、作業環境測定やばく露量の測定で基準値以下であったとしても、快適職場づくりの観点から、騒音レベルは出来るだけ低くなるようにすることが求められる。

  1. 検診結果に基づく評価
    騒音作業に従事する労働者に対して、オージ尾メーターによる聴力測定を実施する必要があるが、騒音作業に従事していない人も定期健康診断で1000Hz及び4000Hzの音に係る聴力検査を実施する必要がある。聴力レベルに基づく管理区分(後述)による要観察者と要管理者の割合や、4000Hzだけが聴力低下を起している人の割合を比較することによって、騒音の影響が考えられる職場を把握することも可能である。

3. 健康診断

表4 聴力レベル基づく管理
聴力レベル 区分 措置
高音域 会話音域
30db未満 30db未満  健常者 一般的聴覚管理
30db以上
50db未満
要観察者
(前駆期の症状が認められる者)
第 II 管理区分にされた場所等においても防音保護具の使用の励行、その他必要な措置を講ずる。
50db以上 30db以上
40db未満
要観察者
(軽度の聴力低下が認められる者)
40db以上 要管理者
(中等度以上の聴力低下が認められる者) 
防音保護の使用の励行、騒音作業時間の短縮、配置転換、その他必要な措置を講ずる。
備考

  1. 高音域の聴力レベルは、4,000Hzについての聴力レベルによる。
  2. 会話音域の聴力レベルは、3分法平均聴力レベルによる。

ガイドラインでは騒音作業に常時従事する労働者に対し、その雇入れの際または当該作業への配置換えの際に雇入時等健康診断を、また6ヶ月に1回定期にオージオメーターによる聴力測定等を義務付けている。雇入時等の健康診断は、適正配置を行ったり、業務によって聴力の影響があったかを判断するために必要な検査であるので、必ず騒音作業に従事する前に実施することが必要である。オージオメーターによって各周波数ごとの聴力測定を実施した場合は、表4の聴力レベルに基づく管理区分によって評価を行い、必要な措置を実施する。

4. 騒音対策

表5 代表的な騒音対策の方法
分類 方法 具体例
騒音源
対策
低騒音化 発生源の 低騒音型機械の採用
発生原因の除去 給油、不釣合調整、部品交換等
遮音 防音カバー、ラギング
消音 消音器、吸音ダクト
防振 防振ゴムの取り付け
制振 制振材の装着
能動制御 消音器、ダクト、遮音壁等
運転方法の改善 自動化、配置の変更等
伝播経路
対策
距離効果 配置の変更等
遮蔽効果 遮蔽物、防音壁、防音室
吸音 建屋内部の防音処理
指向性 音源の向きをかえる
能動制御 消音器、ダクト、遮蔽壁など
受音者
対策 
遮音 防音監視室、囲い
作業方法の改善 作業スケジュール調整、遠隔操作など
耳の保護 耳栓、イヤーマフ
能動制御 消音ヘッドホン
( 作業環境における騒音の管理より引用 )

一番大切なことは、設計段階から低騒音の機器の導入を図ったり、騒音発生源を作業者から隔離できるようなレイアウトを考えるなど、当初から騒音を考えた対策を行うことである。いったん設置した機器の騒音対策は、費用がかかったり、作業性が悪くなるなど問題がある。
代表的な騒音対策の方法を表5に示したが、危険性又は有害性等の調査等に関する指針(平成18年3月10日 公示第1号)では、リスク低減措置を実施する際には、次に掲げる優先順位で行うこととしており、騒音対策でも同様の考え方で対策を行うことが必要である。

  1. 危険な作業の廃止・変更等、設計や計画の段階から労働者の就業に係る危険性又は有害性を除去又は低減する措置
  2. インターロック、局所排気装置等の設置等の工学的対策
  3. マニュアルの整備等の管理対策
  4. 個人用保護具の使用
    なお、耳栓に頼らざるを得ない場合には、耳栓チェッカーなどの機器を用いて耳栓の遮音量の測定を実施し、遮音が不十分な場合には、耳栓のサイズや耳に合った型式のものに変更するなどの対策が必要である。

5. 教育

ガイドラインでは、常時騒音作業に労働者を従事させようとするときは、騒音の人体に及ぼす影響や、適正な作業環境の確保と人体に及ぼす影響や、適正な作業環境の確保と維持管理などの教育を実施することとしている。作業前の教育だけではなく、定期的に教育を実施していくことが大切である。


参考書籍
作業環境における騒音の管理 : 労働省安全衛生部労働衛生課編 : 中央労働災害防止協会
現場に役立つ騒音対策 : スウェーデン労働環境基金 原編、アメリカ合衆国労働省労働安全衛生局 編、山本剛夫 監訳 : 労働科学研究所