口腔保健と健康づくり・新しい口腔検診法
茨城県歯科医師会 会長 志賀 正三
(さんぽいばらき 第31号/2008年3月発行)
茨城県は、北関東3県の中で、唯一太平洋に面し、良港にめぐまれ、農業生産は全国で上位を占め、日立をはじめ鹿嶋・神栖の工業地域、東海・大洗の原子力施設、つくば研究都市等、各産業部門における就労者数も約150万人を数え、全国的にも大変注目される県です。
しかし、産業保健での法的根拠に基づく歯科医師の活動は、歯牙酸蝕症の特殊歯科健康診断に限定されており、歯科検診が一般定期健康診断に含まれないため、歯科医師が事業場を訪れる機会も乏しく、また労働関係諸団体との接触も少なかったため、就労者の歯及び口腔の健康についてアピールする機会が今まであまりありませんでした。しかし、近年の産業構造の変化に伴い、産業保健の現状も労働災害の防止、有毒な化学物質への曝露等の職業性疾病予防対策から、心身の健康づくりに主眼を置いた取り組みに移行していく中で、生活習慣病対策の一環として、口腔保健の持つ意義が見直されようとしています。
本年4月からは40歳以上の被保険者・被扶養者を対象にメタボリックシンドローム対策として、特定健診・特定指導も実施されますが、歯及び口腔の検査項目はなく、事業場での肥満対策、禁煙対策をはじめ、THPの展開においても、口腔の管理がその根底にあるにもかかわらず含まれていないことは誠に残念なことです。
このような環境の中で、我々、茨城県歯科医師会では、新設された8020・6424情報センターを核に、歯・口腔に対する情報を県民及び就労者の方々に配信するだけでなく、産業保健においては、今年も昨年に引き続き好評であった「歯と口腔の健康出前教室」を実施し、虫歯・歯周病等の予防はもちろん、メタボリックシンドローム予防としての運動・食事指導や、メンタルヘルス等とも関連のある口腔機能(咀嚼・発音・嚥下・味覚・唾液)についても、講演だけでなく、唾液検査やガムを使用した口腔機能検査、また、ブラッシングをはじめ各種指導等を加えバラエティーに富んだ内容で、広く県内の事業場の就労者の方々に歯と口腔の大切さをアピールしていくしだいです。
特に、全国にさきがけ唾液・ガムを使用した口腔検査法は、今までの歯科検診法とは異なり、一般健康診断時と同時に多人数の検査が可能であり労働損失を発生することなく、安価で時間もかからず迅速に、場所もとらず、判定が即時に可能な新しい口腔検査法として、注目されており、是非、産業医・産業看護職・衛生管理者等の産業保健スタッフをはじめ、各事業場の安全衛生委員会の委員の皆様にもお試し頂き、事業場での産業衛生活動に役立たせて頂きたいと期待しております。
今後とも、茨城県の労働災害の発生防止、そして産業保健活動の益々の発展を祈り、我々、茨城県歯科医師会会員1300名も産業保健スタッフの一員として産業保健の向上に寄与し、”こころにゆとり からだに余裕 みんなでつくる 健康職場”をめざしていきますので、今後とも茨城県歯科医師会にご協力、ご支援をお願い申し上げます。