定期健康診断等の項目の改正について(労働安全衛生法に基づく)

茨城労働局より
~平成20年4月1日から施行~

(さんぽいばらき 第31号/2008年3月発行)

事業者は、労働安全衛生法第66条に基づき、労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければならないことになっていますが、毎年1回ないし2回実施していただいている定期健康診断の結果においては、脂質異常症や高血圧、糖尿病など脳・心臓疾患等につながる所見を有する労働者が増加しており、業務によって生じた脳・心臓疾患により労災認定される件数が近年高止まりしています。
さらに、中高年の男性を中心に肥満者の割合が増加傾向にありますが、肥満者の多くは、糖尿病、高血圧、脂質異常症等の危険因子を複数併せ持ち、これらの危険因子が重なるほど、作業関連疾患である脳・心臓疾患を発症する危険が増大することが医学的に判明しているところです。

このような状況を踏まえ、平成19年7月6日、労働安全衛生規則の一部を改正する省令(厚生労働省令第96号)が官報に掲載され、健康診断項目の追加・変更が行われました。

  1. 健康診断項目の追加・変更
    1. 実施項目に「腹囲」の検査を追加する
    2. 実施項目の「血清総コレステロール」を「低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール」に変更する
  2. 健康診断項目の省略基準の策定と変更
    1. 腹囲の検査の省略基準
      医師の判断により省略可とするもの

      • 40歳未満(35歳を除く。)の者
      • 妊娠中の女性その他の者であって、その腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映していないと判断された者
      • BMIが20未満である者
      • BMIが22未満であって、自ら腹囲を測定し、その値を申告した者
    2. 尿糖の検査の省略基準を削除(すなわち、尿糖検査は省略付加〔必須〕となります。)
  3. その他
    1. 腹囲の簡易な測定方法について
      • 着衣の上から測定を行うことも可能(実測値から1.5cm差し引いた値を記載)
      • 健診会場において、労働者が自己測定することも可能
    2. 喫煙歴、服薬歴の聴取の徹底を通知
      問診(既往歴及び業務歴の調査)等の際に、喫煙歴、服薬歴の聴取を徹底するよう通知

※健康診断項目の新旧対照表は下図のとおり

【新旧対照表】 (労働安全衛生法における健康診断の新旧項目)

  • 定期健康診断項目についての新旧対照表です。
  • 雇入時健康診断は、●1及び●2の項目も必須にとなります。また、喀痰検査はありません。
  • 特定業務従事者の健康診断及び海外派遣労働者の健康診断の省略基準等については、

都道府県労働局又は労働基準監督署までお問い合わせください。

【旧】 【新】
診察等 問診(既往歴及び業務歴の調査)
(喫煙歴及び服薬歴) ※1
身体計測(身長) ●1 ●1
(体重)
(腹囲) ●2 ※2
視力
聴力
自覚症状及び他覚症状の有無の検査
血圧
胸部エックス線検査
喀痰検査 □1 □1
貧血検査 血色素量 ●2 ●2
赤血球数 ●2 ●2
肝機能検査 GOT ●2 ●2
GPT ●2 ●2
γ-GTP ●2 ●2
血中脂質検査 血清総コレステロール ●2
血清トリグリセライド ●2 ●2
HDLコレステロール ●2 ●2
LDLコレステロール ●2
血糖検査 空腹時血糖 ●2 ●2
ヘモグロビンA1c (□2) (□2)
尿検査 蛋白
●3
心電図検査 ●2 ●2

○  必須項目
□1 胸部エックス線検査により病変及び結核発病のおそれがないと診断された者について医師の判断に基づき省略可
□2 血糖検査については、ヘモグロビンA1cで代替も可(平成10年12月15日 基発第697号)
●1 20歳以上の者については、医師の判断に基づき省略可
●2 40歳未満(35歳を除く。)の者については、医師の判断に基づき省略可
●3 血糖検査を受けた者については、医師の判断に基づき省略可
※1 喫煙歴及び服薬歴については、問診等で聴取を徹底する旨通知(平成20年1月17日 基発第0117001号、保発第0117003号
※2 ●2に加えて、①妊娠中の女性その他の者であって、その腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映していないと診断されたもの、②BMIが20未満である者、③自ら腹囲を測定し、その値を申告した者(BMIが22未満である者に限る。)は、医師の判断に基づき省略可。

この件に関する解説は、新しい職場健康診断 をご覧ください。