じん肺法 改正
(情報誌“さんぽ いばらき” 17号より)
平成15年4月から、じん肺健康診断の検査の1つとしてじん肺患者に対する「肺がんに関する検査(胸部らせんCT検査、喀痰細胞診)」の実施が事業者に義務付けられました。
また、健康管理手帳の交付要件が「じん肺の管理区分3」から「じん肺の管理区分2又は3」となるとともに、健康管理手帳を交付された方(じん肺)は国の費用負担で「肺がんに関する検査」を受けることができるようになりました。
なお、健康管理手帳の交付を受けるには、都道府県労働局長への申請手続きが必要となります。
1.肺がんに関する検査の対象者と時期について(事業場におけるじん肺健診項目の改正)
じん肺管理区分が管理2または管理3である労働者については、定期に行われるじん肺健康診断の際に、合併症の検査の1つとして「肺がんに関する検査」を行うことになります。
上記の内、じん肺管理区分が管理2で現在、悲粉じん作業に常時従事している労働者については、定期のじん肺健康診断が3年以内毎に1回であるので、そのじん肺健康診断の行われない年には、労働安全衛生法に基づく一般の定期健康診断(1年以内毎に1回実施)の機会を捉え、定期外のじん肺健康診断として「肺がんに関する検査」を行うことになります。なお、この場合には、じん肺法第12条に基づくじん肺管理区分の決定等の手続きをとる必要はありません。
区分 | 健康診断区分 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 |
常時粉じん作業に従事している労働者[管理2又は管理3であるものを除く] | じん肺健康診断 | ○ | – | – | ○ | – |
肺がんに関する検査 | × | × | × | × | × | |
常時粉じん作業に従事させたことがあり、現に粉じん作業に従事していない | じん肺健康診断 | ○ | – | – | ○ | – |
肺がんに関する検査 | ○ | ○(*) | ○(*) | ○ | ○(*) | |
常時粉じん作業に従事している管理2の労働者 | じん肺健康診断 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
肺がんに関する検査 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
じん肺管理区分が管理3である労働者 | じん肺健康診断 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
肺がんに関する検査 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
※この表は肺がんに関する検査の実施年が分かるように簡略化したものであり、法律上の実施義務とは異なる場合があります。また、上記の表における「じん肺健康診断」とは従来から実施している健診項目によるじん肺健康診断を意味しています。なお、*印の肺がんに関する検査については、一般健康診断等の機会を捉えて実施することになります。
2.肺がんに関する検査の内容について
「胸部らせんCT検査」と「喀痰細胞診」の2つを行うことになります。
「らせんCT」は「ヘリカルCT」とも呼ばれ、エックス線カメラがベッドに横になった受診者を中心にらせん状に回り、身体の輪切り状の写真を撮影できる機械です。従来のCTと異なり、1断面毎に息を止める必要がないなどの特徴があります。これにより、早期の肺がんが見つかる可能性が高くなります。
「喀痰細胞診」は痰を採取して、その中にがん細胞などの異常な細胞がないかを調べる検査です。
3.健康管理手帳にかかるじん肺健康診断の改正 (離職者にたいする健康管理手帳制度の改正)
従来から離職者でじん肺管理区分が3と判定された方については、本人の申請に基づき健康管理手帳を交付し、国の費用で年1回のじん肺健康診断を実施していましたが、管理2の方についても健康管理手帳の交付を行い、これに基づいてじん肺健康診断を実施することになりました。
なお、この場合の健康診断においても、原則として、「肺がんに関する検査」を実施することとなります。
従いまして、じん肺管理区分が「管理2」の離職者の方で、健康管理手帳の交付を希望される方は、茨城労働局安全衛生課、若しくは最寄りの労働基準監督署まで問い合わせ願います。
- 管理2と管理3では、じん肺健康診断の検査項目が異なっています(ただし、肺がんに関する検査である「喀痰細胞診と胸部らせん CT検査」は両方実施します)。
- 健康管理手帳に基づくじん肺健康診断は茨城労働局長の指定する医療機関で、指定する日時に受診していただくことになります(健康診断の日時等は、健康管理手帳を交付後に通知します)。
- 健康管理手帳の神聖に必要となる資料・書類は以下のとおりです。
- 健康管理手帳交付申請書(申請のための所定様式。茨城労働局や最寄りの監督署で配布)
- 都道府県労働(基準)局長の交付したじん肺管理区分決定通知書(写)
- 上記の管理区分決定に使用したじん肺健康診断結果証明書
- 退職していることを証明する書類
- なお、従来から健康管理手帳の交付を受けている方の所持している健康管理手帳についても、健康診断項目が変わることから、 新しい手帳に合本する(古い手帳に新しい手帳を貼り付ける)手続きが必要となります。従来から健康管理手帳の交付を受けている方には5月に茨城労働局から通知を送り、この手続きをお知らせしております。手続きがお済みでない方は、早急に手続きをお願いいたします。
健康管理手帳の申請・問い合わせ先
茨城労働局 労働基準部 安全衛生課
〒310-8511 水戸市北見町1-11 TEL 029-224-6215
4.施行期日について
上記1及び2に関する改正 平成15年4月1日
上記3に関する改正 平成15年1月20日
Q&A
Q:改正されたじん肺法施行規則第11条を読むと、定期健康診断において「肺がんにかかっていない」と診断された場合は、じん肺法第9条の定期外健康診断は不要なはず」なのに、なぜパンフレット等では必ず実施するという趣旨で記載されているのでしょうか?
A:ご指摘のとおり、「(絶対に)肺がんにかかっていない」と診断されれば不要ですが、管理2の労働者に対して「(絶対に)肺がんにかかっていない」と断言できる場合は皆無か、きわめて珍しいケースとなります。
よって、管理2の労働者の大半は「肺がんにかかっている疑い有り」となると考え、このような記載内容としたものです。
<<喫煙について>>
「たばこ」はいろいろながん、高血圧、狭心症、心筋梗塞などさまざまな病気の危険因子とされています。そのため、じん肺の所見のある方が「たばこ」を吸うと、さらに肺がんのリスクが高くなるとされていますので積極的に禁煙を心がけましょう。
また、平成15年5月9日付基発第0509001号により、職場における受動禁煙の防止のために講ずべき措置を定めた新たな「職場における禁煙対策のためのガイドライン」も示されています。
(従来のガイドラインである平成8年2月21日付基発第75号はこれにより廃止されました)。