iii 特殊健康診断

Q3-iii-15 塩化ビニルの胸部レントゲン検査の意義と検査結果の評価は?
Q3-iii-15.
塩化ビニルを10年以上使用している労働者について、特定化学物質健康診断において、胸部レントゲン検査を実施する意義を教えて下さい。
また、その2次検査においては、どのような所見であれば塩化ビニルによる身体影響ではないといえるのかを教えて下さい。

A3-ⅲ-15
塩化ビニル(クロロエチレン)は肝血管肉腫が有名ですが、疫学的研究で、肺がんが有意に増加した、という報告もあり(新しい文献では否定的なものもありますが)、健康診断において実施する意義は肺がんの精査になります。
また、肺がんを疑う所見の場合、所見の特徴によって塩化ビニルによる身体影響ではないと言う事は難しく、影響があるかどうかは、結局のところ曝露があったのかどうか、で判断される事になります。

Q3-ⅲ-14 特定化学物質健康診断の尿中代謝物検査結果はどのように評価するのか?
Q3-iii-14.
エチルベンゼンの健康診断を実施したところ、労働者2名について尿中マンデル酸の量が、0.5g/l~1.5g/l でした。他の項目について所見はありませんでした。
エチルベンゼンについては尿中代謝物の分布区分が示されていませんが、どのように評価するのですか?また、二次健診を実施する場合、どのように実施するのですか?

A3-ⅲ-14
1)尿中代謝物検査の分布区分について
有機溶剤中毒予防規則において規定される有機溶剤の場合、代謝物検査に分布区分があり、それにより曝露量を推定できるようになっています。
しかしながらエチルベンゼンが1%超の場合、特定化学物質になるので、分布区分は法律上ありません。また、学術的にも、「スチレンの代謝物→マンデル酸」、「エチルベンゼンの代謝物→マンデル酸」と、一つの分子から一つの分子に変化するのは同じですが、尿だけではなく、呼気等でも体外に出ることから、マンデル酸だけでエチルベンゼンの曝露量を推定する実験・データが少なく、特定できません。また、スチレンの発がん性はマンデル酸までの代謝経路中にあるスチレンオキシドであるため、マンデル酸の量を診る意味がありますが、エチルベンゼンにはそのようなものはありません。
結論ですが、エチルベンゼン曝露作業者において、マンデル酸が出ているか出ていないか、が重要であり、出ているなら直接作業環境測定結果などを見て評価し、マンデル酸の量によっては特に評価しないということになります。

2)二次健診の実施方法は以下になります。
①作業条件の調査
②医師が必要と認める場合は「神経学的検査」「肝機能検査又は腎機能検査」

①については、「労働者の当該物質へのばく露状況の詳細について、当該労働者、衛生管理者、作業主任者等の関係者から聴取することにより調査するものであること」とあり、具体的には「前回の特殊健康診断以降の作業条件の変化、環境中のエチルベンゼンの濃度に関する情報、作業時間、ばく露の頻度、エチルベンゼンの発生源からの距離、呼吸用保護具の使用状況等について、医師が主に当該労働者から聴取することにより調査するものであること。このうち、環境中のエチルベンゼンの濃度に関する情報の収集については、当該労働者から聴取する方法のほか、衛生管理者等からあらかじめ聴取する方法があること」とあります。しかし、健診実施中にこれらを行う事は難しく、専属の産業医ならともかく、健診時の診察医としては、保護具の使用状況(マスクをつけているか)、作業頻度、作業時間を聴取し、産業医へ情報提供して産業医の総合判断にゆだねるのが良いと思います。(仮の判定として、マンデル酸が上昇しており、エチルベンゼン以外の有機(スチレン等)の使用がなければ、管理B(2)でよいと思います)
②については、エチルベンゼンは中枢神経系に作用し、鎮静・閉眼・知覚鈍麻が指摘されており、鎮静・閉眼が診察しにくいことから、知覚鈍麻、特に神経の長い下肢の腱反射(膝蓋腱反射は膝疾患がないことを確認して行う)を診ればよいと思います。
また中枢神経系であることから、両側は不要で、片側でよいと思います。
肝機能についてはAST/ALT、γ-GTPになります。
腎機能については、BUN、Cre、尿蛋白になります(BUNはなくてもよい、尿細管障害のため)

Q3-ⅲ-13. 特化則の第三類物質の健康診断は必要か?
Q3-iii-13.
特定化学物質障害予防規則における第三類物質の健康診断は必要なのでしょうか。

A3-ⅲ-13.

特定化学物質障害予防規則における第三類物質の健康診断については、必要ありませんが、事故が発生してばく露した場合は、特化則第42条の緊急診断が必要となります。特化則等の特殊健康診断の他に、労働安全衛生規則第45条において、特定業務従事者の健康診断に係る規定があります。この規定に該当する場合は、一般的健康診断と同じ健康診断を実施することになります。
Q3-ⅲ-12. じん肺健診はどの病院でも受けられるか
Q3-iii-12.
じん肺健診は、普通の病院で受診しても良いでしょうか。

A3-ⅲ-12.
じん肺の健診項目を行える病院であれば受診可能ですが、胸部エックス線写真を見て、じん肺の所見を判断できるかどうかが問題であるため、じん肺健診を行っている病院で受診することをお勧めします。

Q3-ⅲ-11. 有機溶剤等健康診断個人票は法定様式を使わないといけないか?
Q3-iii-11.
健康診断実施後、事業主が有機溶剤健康診断個人票を保管する場合、医療機関作成の有機則関係/様式第3号の書式を使わないと規則違反になりますか。 様式第3号に準じた個人票でもよいのでしょうか。

A3-ⅲ-11.

有機則の所定様式に準じた医療機関作成の個人票でも問題ありません。外の健康診断個人票も同様です。法令様式というのは、法律で様式を定めていますが、全く同じ様式でなければ駄目ということはなく、法令様式に準じた書式を自社で作成しているケースも多くあります。
Q3-ⅲ-10. じん肺健康診断の結果票(H22.7.1改正)は入手できるか?
Q3-iii-10.
平成22年7月1日にじん肺健康診断の判定基準が見直され、健康診断結果等の様式が変わるとききました。結果票はどこで入手できますか。

A3-ⅲ-10.
「じん肺健康診断結果証明書」は、厚生労働省のホームページから入手できます。
► じん肺健康診断結果証明書(excel)

Q3-ⅲ-9. 特化物の健診は、周辺作業者も問診個人票が必要か?
Q3-iii-9.
有機溶剤やじん肺の健診は、周辺作業者も問診個人票を作成していますが、特化物健診でも作る必要がありますか?

A3-ⅲ-9.
特化物の健診は、「製造、取り扱い」する作業者が対象となります。このため、近くで作業する者は対象とはなりません。

Q3-ⅲ-8. 特化物の特殊健康診断で「常時従事する労働者」とはどのような場合か?
Q3-iii-8.
特化則第39条では、「常時従事する労働者」に特殊健康診断を実施するとされていますが、どの程度が該当しますか?

A3-ⅲ-8.
特定化学物質障害予防規則第39条の「常時従事する労働者」とは、「継続して当該業務に従事する労働者」のほか、 「一定期間ごとに継続的に行われる業務であってもそれが定期的に反復される場合には該当する」とされています。 したがって、当該業務に従事する時間や頻度が少なくても、定期的に反復される作業であれば、特殊健診の対象になります。 なお、有機溶剤の特殊健診における「常時従事する労働者」も同様に考えることになります。

Q3-ⅲ-7. 派遣労働者の有機溶剤健診結果の取り扱いについて
Q3-iii-7.
派遣元から、派遣社員の有機溶剤健診結果を提出するよう求められました。どのような決まりがありますか?

A3-ⅲ-7.
派遣労働者の健康診断は、一般健康診断は派遣元に、特殊健康診断は派遣先に、実施する義務があります。 派遣先では、特殊健診を行ったときは、健診結果を記載した書面を派遣元に送付しなければなりません (労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律 第45条第10項)。 また、医師の意見も同様に通知しなければなりません(同条第14項)。結果に基づいた事後措置も、派遣先が講じます。 派遣元には受けた書面を保存する義務があります。したがって、派遣先労働者の有機溶剤健診結果は、 派遣元に書面で遅滞なく送付しなければならないことになります。

Q3-ⅲ-6. じん肺健診は、一般健診のX線検査で代用出来るか?

Q3-iii-6.

じん肺健診は、一般健診のX線検査で代用できませんか?

A3-ⅲ-6.
一般健康診断のX線撮影は間接撮影で、じん肺健診は直接撮影です。 じん肺の所見は間接撮影ではチェックできません。したがって、代用はできません。

Q3-ⅲ-5. 石綿工事を監督する職員の健康診断
Q3-iii-5.
吹付けされた石綿が劣化して飛散しないように、石綿を封じ込めする作業を外部業者に委託しましたが、作業状況を監督する職員についても石綿に関する特殊健康診断の必要はあるでしょうか。但し、常時作業を監督する必要はなく、時折、作業を監視するだけです。

A3-ⅲ-5.
石綿等を取り扱い、又は試験研究のため製造する業務に常時従事する労働者及び在籍労働者で、過去においてその事業場で石綿を製造し、又は取り扱う業務に常時従事したことのある労働者については、石綿障害予防規則第40条の規定により、雇入れ時又は当該業務への配置替えの際及び定期(6ヶ月以内ごとに1回)に、石綿に係る健康診断を受けなければならないことになっています。
では、具体的に「石綿等を取り扱う作業」とはどのような作業でしょうか。
厚生労働省のリーフレットには、「石綿にばく露する可能性がある作業」として以下のようなものを挙げています。

  1. 石綿鉱山又はその附属施設において行う石綿を含有する鉱石又は岩石の採掘、搬出又は粉砕その他石綿の精製に関連する作業
  2. 倉庫内等における石綿原料等の袋詰め又は運搬作業
  3. 以下の石綿製品の製造工程における作業
    • 石綿糸、石綿布等の石綿紡績製品
    • 石綿セメント又はこれを原料として製造される石綿スレート、石綿高圧管、石綿円筒等のセメント製品
    • ボイラーの被覆、船舶用隔壁のライニング、内燃機関のジョイントシーリング、ガスケット(パッキング)等に用いられる耐熱性石綿製品
    • 自動車、捲揚機等のブレーキライニング等の耐摩耗性石綿製品
    • 電気絶縁性、保温性、耐酸性等の性質を有する石綿紙、石綿フェルト等の石綿製品(電線絶縁紙、保温材、耐酸建材等に用いられている。)又は電解隔膜、タイル、プラスター等の充填剤、塗料等の石綿を含有する製品
  4. 石綿の吹付け作業
  5. 耐熱性の石綿製品を用いて行う断熱若しくは保温のための被覆又はその補修作業
  6. 石綿製品の切断等の加工作業
  7. 石綿製品が被覆材又は建材として用いられている建物、その附属施設等の補修又は解体作業
  8. 石綿製品が用いられている船舶又は車両の補修又は解体作業
  9. 石綿を不純物として含有する鉱物(タルク(滑石)、バーミキュライト(蛭石)、繊維状ブルサイト(水滑石))等の取扱い作業
  10. 上記Ⅰ~Ⅸの石綿又は石綿製品を直接取扱う作業の周辺等において、間接的なばく露を受ける可能性のある作業

「封じ込め作業」とは、吹付け石綿層をそのままにし、その表面に薬液を塗布し塗膜を形成したりして飛散を防止する工法ですが、その際、石綿繊維が飛散するおそれがありますので、石綿取扱い作業に該当します。
またご質問のように、直接石綿等は取り扱わないものの、粉じんにが発散する場所において作業を監督する業務も、上記のⅩのように「周辺等において、間接的なばく露を受ける可能性のある作業」とされています。
実際に、このような周辺における業務(周辺業務)に従事していた者にも胸膜プラークや石綿関連疾患を患ったという臨床例が認められています。
このため、従来は石綿等を直接取り扱う業務に限られていた健康診断の義務付けについて再検討がなされ、平成21年4月1日からは健康診断の対象業務を、「石綿等の取扱い又は試験研究のための製造に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務」に改められる予定です。
厚生労働省が周辺業務の範囲として例示しているのは、①車両・船舶内の区切られた空間における石綿を取り扱う業務、②石綿の吹き付け作業、③石綿製品が被覆材または建材として用いられている建物などの解体作業、④石綿製品の製造工程における作業の4つです。
従って今後は、これら業務の周辺で作業をしていた場合は、石綿を取り扱わない別業務であっても石綿則による健診の対象となります。
但し、こうした場合であっても「常時従事する」労働者が対象ですから、臨時に作業を監視する程度では、健康診断の義務づけはないものと思われます。

Q3-ⅲ-4. 取り扱いをやめても特殊健康診断が必要な物質とは
Q3-iii-4.
特定化学物質など何種類かの化学物質を取り扱っています。
こうした物質のうち、過去に取り扱ったことがあるだけで、取り扱いをやめた後も特殊健康診断を定期的に行わなければないない物質がありますが、何故ですか。

A3-ⅲ-4.
特定化学物質を製造若しくは取扱うなど、有害な業務に従事する労働者に対しては、安全衛生法第66条第2項前段の規定により、雇入れの際、当該業務への配置換えの際及びその後、原則として6月ごとに1回、定期に医師による健康診断(特殊健康診断)を実施しなければなりません。
また、同条同項後段により「有害な業務で、政令に定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする」とあり、ご質問はこのことを指しているものと推測します。
ところで世の中には何万種類もの化学物質がありますが、その中には人体に有害な物質が、未知のものを含めてたくさん存在します。
中でも、発がんをはじめ、神経や循環器・呼吸器その他重要な健康障害を生じることが判明している、または疑いが強い物質については、その程度により製造禁止物質、第一類特定化学物質、第二類特定化学物質、第三類特定化学物質に分類・指定されています。
ちなみに、第一類特定化学物質とは微量でも健康障害をもたらすもので、取り扱いは特に厳重であり、製造には厚生労働大臣の許可が必要となっています。
また、第二類特定化学物質は慢性障害を予防すべき物質で、発生源を密閉する装置または局所排気装置の設置などが義務付けられております。第三類特定化学物質は設備からの大量漏洩事故による急性健康障害を防止するための、一定の管理が必要とされている物質のことです。
この中で特殊健康診断が義務付けされているのは、製造禁止物質、第一類特定化学物質及び第二類特定化学物質(エチレンオキシドを除く)に限られますが、そのうち発がん性が疑われている物質については、過去に製造若しくは取扱う業務に常時従事させたことがある労働者で、現在も会社で使用されている者についても、製造、取扱い等をやめた後も同様の健康診断を実施しなければなりません。
こうした物質を、特定化学物質障害予防規則では「特別管理物質」と総称し、長期にわたって管理する必要があることから、特別管理物質にかかる健康診断個人票につきましては、他の物質と異なり30年の長期にわたり保存することも義務付けられています。
ご承知のように、発がんなどは症状が現れるまでに長い時間がかかる場合があり、こうした障害を生じる可能性がある物質については、取り扱いをやめたあとも継続した健康管理が必要だという理由からです。
特別管理物質は以下のとおりです。(安全衛生法施行令第第22条第2項)

  1. ベンジジン及びその塩
    の2 石綿
    の3 ビス(クロロメチル)エーテル
  2. ベータ-ナフチルアミン及びその塩
  3. ジクロルベンジジン及びその塩
  4. アルフア-ナフチルアミン及びその塩
  5. オルト-トリジン及びその塩
  6. ジアニシジン及びその塩
  7. ベリリウム及びその化合物
  8. ベンゾトリクロリド
  9. エチレンイミン
  10. 塩化ビニル
  11. オーラミン
  12. クロム酸及びその塩
  13. クロロメチルメチルエーテル
  14. コールタール
  15. 三酸化砒(ひ)素
  16. 三・三-ジクロロ-四・四-ジアミノジフエニルメタン
  17. 重クロム酸及びその塩
  18. ニツケルカルボニル
  19. パラ-ジメチルアミノアゾベンゼン
  20. ベータ-プロピオラクトン
  21. ベンゼン
  22. マゼンタ
  23. 第1号若しくは第1号の3から第7号までに掲げる物をその重量の1パーセントを超えて含有し、第1号の2に掲げる物をその重量の0.1パーセントを超えて含有し、又は第8号に掲げる物をその重量の0.5パーセントを超えて含有する製剤その他の物(合金にあっては、ベリリウムをその重量の3パーセントを超えて含有するものに限る)
  24. 第9号から第22号までに掲げる物を含有する製剤その他の物で、厚生労働省令で定めるもの
Q3-ⅲ-3. 有機溶剤健康診断について検査項目の省略は可能か
Q3-iii-3.
トルエン、アセトンなどの有機溶剤を使用していますので、年に2回、特殊健康診断を実施していますが、毎回、同じ検査を行わなければならないのでしょうか。年2回の検査のうち1回については、検査項目を省略することは可能でしょうか。

A3-ⅲ-3.
事業者は、法令で定められた有機溶剤業務に従事する労働者に対しては、雇入れの際、当該業務への配置替えの際およびその後6月以内ごとに1回定期に、業務の経歴の調査、既往歴の調査、有機溶剤による自覚症状及び他覚症状、有機溶剤の代謝物の検査結果、尿中の蛋白の有無その他の検査を実施しなければなりません。
しかし、54ほどある有機溶剤の種類によって検査項目が異なるほか、特定の有機溶剤について実施すべき検査項目があったりもします。
また、物質によっては検査の省略も可能ですが、大変複雑になっていますので、有機溶剤の種類ごとに必ず実施すべき項目、特定の有機溶剤について実施すべき項目、医師が必要と判断した場合に実施しなければならない項目及び検査項目の省略について説明します。
〔必ず実施すべき項目〕
有機溶剤の種類に関わらず、必ず実施すべき項目は以下のとおりです。

  1. 業務歴の調査
  2. 有機溶剤による健康障害等下記についての既往歴の調査
    • 有機溶剤による健康障害
    • 有機溶剤による自覚症状及び他覚症状(下表1~22の症状)
    • 有機溶剤の代謝物の検査結果
    • 尿中の蛋白の有無
    • 血色素量、赤血球数、GOT、GPT、γ-GTP、眼底検査の所見
    • 貧血、肝機能、眼底、腎機能(尿中蛋白の有無の検査を除く)
    • 神経内科学的検査の所見
  3. 有機溶剤による自覚症状または他覚症状と通常認められる症状の有無の検査
  4. 尿中の蛋白の有無の検査

〔特定の有機溶剤について実施すべき項目〕
以下は、別表の左欄に示した有機溶剤について、それに応じた項目について別表右欄に掲げる下記の検査を実施すべきとされています。

  1. 尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査
  2. 肝機能検査(GOT・GPT・ガンマ-GTP)
  3. 貧血検査(赤血球数・血色素量)
  4. 眼底検査

〔医師が必要と判断した場合に実施しなければならない項目〕
以下の検査は、医師が必要と認める場合に行わなければならないことになっています。

  1. 作業条件の調査
  2. 貧血検査
  3. 肝機能検査
  4. 腎機能検査(尿中の蛋白の有無の検査を除く)
  5. 神経内科学的検査

次に、上記5の「尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査」については、前回の定期健康診断で同検査を受けたものについて、医師が必要でないと認めるときは、これを省略することができます。つまり、年2回の検査のうち1回については医師の判断で省略することが出来ることになります。
これの省略の基準については、通達「有機溶剤中毒予防規則第29条及び鉛中毒予防規則第53条に規定する検査のための血液又は尿の採取時期及び保存方法等並びに健康診断項目の省略の要件について」で示されております。
► 詳細を見る

それによれば、次に示す条件をすべて満たす場合、医師が必要でないと認め、尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査の実施が省略できるとされています。

  1. 前回の健康診断を起点とする連続過去3回の有機溶剤健康診断において、異常と思われる所見が認められないこと。
  2. 「尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査」については、前回の当該検査を起点とする連続過去3回の検査の結果、明らかな増加傾向や急激な増減がないと判断されること。
  3. 今回の当該健康診断において、下表に掲げる自覚症状又は他覚症状のすべてについて、その有無を検査し、その結果、異常と思われる所見がないこと。
    ただし、これらの症状が、有機溶剤以外の要因によると判断される場合は、この限りでない。
  4. 作業環境の状態及び作業の状態等が従前と変化がなく、かつその管理が適切に行われていると判断されること。

従いまして、トルエン、アセトンを使用する場合、トルエンについては、上記1~4の検査のほか、5の「尿中の有機溶剤の代謝物である尿中馬尿酸の量の検査」を行い、医師が必要と判断した場合に実施には、これらに加え9~13の検査を実施します。
また、尿中馬尿酸の量の検査は、連続過去3回の有機溶剤健康診断において異常と思われる所見が認められないこと他を条件に、年2回の検査のうち1回については医師の判断で省略することが出来ることになります。
次にアセトンについては、上記1~4の検査を行うほか、「尿中の代謝物の量の検査」等の検査は行いません。但し、医師が必要と判断した場合には、9~13の検査を実施することになります。

〈有機溶剤等〉〈検査項目〉
エチレングリコールモノエチルエーテル(別名セロソルブ)
エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(別名セロソルブアセテート)
エチレングリコールモノブチルエーテル(別名ブチルセロソルブ)
エチレングリコールモノメチルエーテル(別名メチルセロソルブ)
血色素量および赤血球数
オルト-ジクロロベンゼン
クレゾール
クロルベンゼン
クロロホルム
四塩化炭素
1,4-ジオキサン
1,2-ジクロルエタン(別名二塩化エチレン)
1,2-ジクロルエチレン(別名二塩化アセチレン)
1,1,2,2-テトラクロルエタン(別名四塩化アセチレン)
GOT、GPT、γ-GTP(以下肝機能検査という)
キシレン尿中メチル馬尿酸
N・N-ジメチルホルムアミド肝機能検査尿中N-メチルホルムアミド
スチレン 尿中マンデル酸
テトラクロルエチレン(別名パークロルエチレン)
トリクロルエチレン
肝機能検査尿中トリクロル酢酸または総三塩化物
1,1,1-トリクロルエタン尿中トリクロル酢酸または総三塩化物
トルエン尿中馬尿酸
二硫化炭素眼底検査
ノルマルヘキサン尿中2・5ヘキサンジオン
※上記指定の有機溶剤が5%を超えて含有されている物質を製造または取り扱う場合にも検査が必要です。
Q3-ⅲ-2. 半田作業についての健康診断及び暴露例がありましたら教えて下さい。
Q3-iii-2.
(1)「半田作業についての健康診断」について
ある資料の中で金属による中毒の欄に、カドミウム・錫の記載がありその対象業務に半田とありましたので、鉛健診のほかに受けるべき検査があるのかお尋ねします。
(2)「暴露例」について
当院に通院の方で、半田作業を長年しておりその頃から喘息が止まらないため、その作業が原因ではないかとの疑問をお持ちの方がおり、労働災害報告を通してそういった事例があるのかどうか知りたいのです。

A3-ⅲ-2.
(1)「半田作業についての健康診断」について
半田は、錫と鉛の合金です。鉛については、鉛中毒予防規則において、鉛健康診断が義務付けられております。なお、もう一つの成分である錫についての規制は、労働安全衛生法とその関連規則を調べましたが見当たりませんでした。

また、じん肺法においては、はんだ付けの作業は対象となっておりませんので、じん肺健康診断には該当しません。はんだの融点は183℃です。その程度の加熱でのヒュームの発生は、じん肺を心配するほどではないのかもしれません。
(2)「暴露例」について
申し訳ありませんが、半田作業における鉛中毒の発症例は見当たりませんでした。
フラックスの煙に刺激性があります。フラックスとは、半田付けをするときに使う松ヤニ状の薬剤です。フラックスの成分を調べましたが、判明しませんでした。もし、患者さんがお使いのフラックスのメーカーがわかるのでしたら、メーカーにお尋ねになるのも一法かも知れません。

Q3-ⅲ-1. 鉛中毒予防規則による、特殊健康診断について
Q3-iii-1.
合成樹脂製品を製造する工程において、プラスチック材料(鉛化合物を含む)を合成樹脂射出成型機に投入する作業があります。この作業が鉛作業にあたるかどうか、特殊健康診断を受けさせるべきかわかりません。
取扱っているプラスチック材料には、鉛中毒予防規則第1条の4の61番目の鉛化合物(鉛分を1%以上含有する)が含まれています。しかし、当該場所は、同規則第1条5の鉛業務の「へ」の鉛化合物を製造する工程ではなく、「チ」のゴム若しくは合成樹脂の製品を製造する工程における鉛の業務にはあたらず、鉛中毒予防規則に非該当ではないかと思われます。この解釈は間違えでしょうか?

A3-ⅲ-1.

「鉛化合物を含むポリマー」の内容は、有機物の重合体に鉛化合物が含まれていることと思います。ただ、鉛化合物が混合状態なのか化学的に結合状態になっているのかは、わかりません。文面からは、鉛安定剤を原材料に添加というのは、単に混合しているだけで反応過程があるようには思われません。
一次製品のポリマーはふつうパチンコ玉かビーズ玉くらいの大きさです。この段階でホッパーに投入しても作業者が鉛に暴露することは考えにくいです。射出成型機をあけた時に雰囲気もしくは蒸気に鉛が含まれているかどうかは、加工の温度によると思われます。ただ、鉛が溶融あるいは蒸発するような温度(融点320℃、沸点1700℃)では、高分子は焼損しますので、あまり心配はないように思います。確実なのは、作業環境測定で鉛が検出されるか一度調べるのがよいと思います。
こまかな状況がわかりませんので、的がはずれているかもしれません。不足があればお知らせ下さい。

情報・資料