2020年10月号『「疲れ」を感じるときには。』
日本は疲労大国とも言われています。「過労死」の問題は、時折世間を騒がせています。
さて、「疲れ」とはいったい何でしょうか。
疲れを感じていても働き続けるとどうなるのでしょうか。
【1】「飽きた」は休養へのサイン
「疲れ」とは、運動や仕事のし過ぎなどで、心と体が本来の力を発揮できなくなってしまう
状態をいいます。疲れの正体は脳の疲労が関係しています。
体の活動が激しくなると、脳の自律神経の中枢での処理が増えます。
その結果脳の細胞で活性酸素が発生し、自律神経の機能が果たせなくなってきます。
いわゆる「脳疲労」で、「体が疲れた」というシグナルを出すことで、
人間は「疲労感」を感じます。
つまり「疲れ」とは、体の異常を教えてくれるサインなのです。
どんな仕事や勉強でも「飽きた」と感じる瞬間がどこかで発生するものです。
脳は「飽きる」という指令によって、その作業をやめさせたり、違うことをさせたり
しようと仕向けるのです。
「飽きる」「疲れる」「眠くなる」は休業へのサインとみていいと思います。
【2】 疲労感が隠れてしまうとき
長時間働いても疲れを感じないときがあります。
仕事に充実感・達成感を感じたり、任せられた仕事が面白いように進んだり、
上司や同僚に褒められたり、昇進という報酬が期待できるときなどは疲れを感じません。
仕事以外でも趣味に没頭するときやランナーズハイも同じような状態です。
そのようなときは脳内に多幸感や快感を引き起こす麻薬のようなホルモンが分泌されています。
疲労感がわからなくなっている危険な状態でもあり、脳や心臓などの内臓に疲労が
蓄積してしまうこともあります。
こういう状態が続くと様々な病気や過労死などを引き起こすことがあるので、
自分で本当は疲れていないか、よく観察する必要があります。
【3】 体が疲れてくると、心も疲れてきます
慢性的な疲れは普段の小さなストレスに過剰に反応するようになってしまったり、
攻撃性が強くなったりします。例えば同僚から受けているいつものいやみが、
疲れている時だと2倍にも3倍にも強く感じ、心が正常ではいられなくなります。
心の疲れは体にストレス反応を引き起こします。
その結果、免疫力を低下させて感染症にかかりやすくしたり、
二次的に様々な病気を誘発します。
【4】 疲労を解消するには?
疲労を解消するには、もちろん休養ですが、セロトニンという心地よさを感じるホルモンの
分泌を促すことも効果がありますので、お勧めをご紹介します。
①朝5分以上、太陽の光を浴びる
疲れの回復には、朝太陽の光を浴びることが大事です。
太陽の光を浴びることで、目が覚め、
夜になると眠くなるホルモンをしっかりと分泌します。
②軽い運動をする
朝の疲れない程度の軽いウォーキング。5分以上でセロトニンが活性化してきます。
③睡眠時間はしっかりととる
睡眠は体と心を休めます。誰でも自分にとって快適な睡眠時間がありますが、
ある調査では睡眠時間が7-8時間の人は一番寿命が長い、という結果もでています。
④ペットとじゃれる
ペットとじゃれると、ストレスホルモンである
コルチゾールの値が減ります。
アニマルセラピーなどとも呼ばれています。
⑤泣く
皆さんは泣いたあとに、とてもすっきりしたことがありませんか?
人が泣いているときのコルチゾールを測定してみると、値が下がっています。
つまり泣くとストレスが解消されます。
自分の体や心の疲れ具合をよく観察して、積極的な休養やストレス解消をしていきましょう。
それが病気やケガを防ぐコツです。
参考資料:有田秀穂,疲れない人の脳,三笠書房
下園壮太,疲労という観点で人を見る発想,産業精神保健28(1)
梶本修身,すべての疲労は脳が原因,集英社文庫
工藤孝文,疲れない大百科,ワニブックス
植地貴弘, 睡眠時間の確保について,ER型救急医のネットワーク