2020年11月号『感染症とは何か』

 人類の歴史は感染症との闘いでした。現代においても新しい感染症が発生するたび、世界中が
 対応に追われます。SARS、新型インフルエンザ、エボラ出血熱などは記憶に新しいのでは
 ないでしょうか。 そしてこの度の新型コロナウイルス感染症は、経済までをも揺るがす勢いです。
 また、数年ごとに新しい感染症が流行することは今後も避けられないと思われます。
 そこで今回は「感染症の基本」についてお伝えいたします。


 1 感染症とは

 環境中に存在する病原体が人の体内に侵入することで引き起こされる病気です。

 2 感染症と抵抗力の関係

 病原体が体に侵入しても、感染症となるかどうかは、病原体の感染力と体の抵抗力との
 バランスで決まります。 個人の抵抗力が強ければ、病原体があっても発症しませんし、
 発症しても重症化しません。その反対で、毒性が弱い感染症でも、抵抗力が落ちていれば、
 命の危機となることもあります。

 3 病原体の種類 

 病原体の特徴について一覧表に示します。                      

病原体の
大きさ
種類名 大きさ 特徴 病名

大きい

小さい

寄生虫 2μm
 ~10m
体内に寄生して栄養分を奪う。体の外につくノミやダニも含まれる。目に見えるものも多い。 アニサキス、サナダムシ、ギョウチュウ、ノミ、ダニ
真菌(カビ) 5μm
 ~10μm
人の細胞にとりつくと菌糸を伸ばして成長する。 水虫(白癬菌)、
カンジタ
細菌 1μm
 ~5μm
単細胞生物。人の細胞に侵入したり毒素を排出して害を及ぼす。 サルモネラ、ボツリヌス、レンサ球菌
ウイルス 20nm
~数百nm
細胞を持たず、単独では増殖できないため人などの細胞内に侵入して自身のコピーを作り増える。 新型コロナ、エボラ出血熱、ノロ、インフルエンザウイルス、風邪の大半

                            (1nm = 0.001μm = 0.000001mm)

 4 粘膜からの侵入に注意

 顔には、鼻の穴、口の中、目など、水分でうるおっている粘膜という組織があって、
 体の中の消化器や呼吸器へとつながっています。
 粘膜は手や足などの硬い皮膚とは違って、バリア機能が低いので細菌等が繁殖したり
 侵入しやすいのです。その侵入口をマスクやゴーグルなどでカバーすると、病原体の侵入を
 少なくすることができます。


 5 手や顔は不潔になりやすい

 手は常に物を触っているので菌類が付着しています。にもかかわらず、人はおよそ
 1時間に20回以上は顔を触っていて、顔に菌類を付着させています。
 直接粘膜を触ることもあるでしょうし、顔の表面についた菌類は息を吸うのと一緒に
 体内に取り込まれていきます。マスクがあることで顔に菌類の付着を少なくします。


 6 予防できるものは予防する

 冬の乾燥や気温の低下は、多くのウイルスの動きを活発にします。新型コロナウイルス感染症と
 他のウイルスなどの同時感染などが、ないとは言い切れません。
 インフルエンザのように毎年流行するようなものは、有効なワクチンがありますので、
 接種することで心配の種を一つでも消去しておくといいかと思います。


 7 感染症に負けない体づくりが重要

 病気に対する抵抗力 = 免疫力です。免疫力の高さを表すバロメーターの一つに、
 体温があり、平熱が高め(36.5℃以上)の方は、感染症にかかりにくいといわれています。
 体温が低め(36.0℃以下)の方は、筋力をつけると平熱が上がりますので適度な運動を
 とりいれてみましょう。

 免疫力を上げる方法は「健康保健だより5月号」に掲載していますので、ご覧ください。



 新型コロナウイルス感染症とのつきあいは、「闘い」から
 「共存」へと人々の意識が
変化してきています。
 ワクチンや特効薬と呼べるものがまだない中、
「新しい生活様式
 の励行」と「免疫力の強化」で共存していきましょう。


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