2020年12月号『働く人が知っておきたいお酒の基本』
年の瀬です。美味しいお料理とお酒をゆっくりと楽しむ時間が増えますね。
今年は激動の年になり、いろいろな思いと共に
お酒の量も多くなる方もいるのではないでしょうか。
今回はそのお酒についてお伝えしようと思います。
1 お酒の量
お酒とは、酒税法でアルコール分1度(1%)以上の飲料と定義しています。
節度ある適度な飲酒の量を1日に純アルコールで20g程度と
厚生労働省は「健康日本21」の中でうたっています。
★純アルコール量の計算の仕方
純アルコール量(g) = お酒の量(ml) × 度数または%/100 × 0.8(比重)
例)アルコール5%のビール350mlを飲んだ場合
純アルコール量(g) = 350 × 5/100 × 0.8 = 14
⇒純アルコール量は14gとなります。
自分が飲んでいるお酒の量と比較してみましょう。
お酒好きの方にとっては、この量をどのようにお感じになるでしょうか。
2 アルコールの分解
アルコールは、ほとんどが肝臓で分解されます。
分解の速さは個人差が大きいのですが、
その平均は、男性で1時間に約9g、女性で約6.5g程度です。
自分が飲んだお酒が、分解にどれくらい時間がかかるか
計算できると思います。
例えば、女性がビールを350ml飲むと、
純アルコール量が約14gなので、分解までに
2時間くらいかかります。また、男性が日本酒を1合飲むと、純アルコール量が約22gなので、
2時間30分くらいです。次の日のお仕事に支障が出ない量が大事です。
3 お酒と生活習慣病
少量のお酒は、血圧を下げたり、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を増やすなどの
効果がありますが、飲みすぎは肝臓に負担をかけるだけでなく、血圧を上げたり、中性脂肪や
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を上げます。
血糖値も上がるので高血糖状態になりやすく、生活習慣病を進めてしまいます。
お酒によって自制心が下がり食欲が増すので、食べすぎなどの問題も起こします。
お酒の量と死亡率の関係を示したJカーブというものがあり(図)
男女とも1日純アルコール量で19gまでだったら、死亡のリスクは
飲酒しない人よりも低くなっています。
出典:eヘルスネット,飲酒とJカーブ
4 健康的な飲み方とは
①飲み過ぎない
自分の適量を知り、お酒の席では早めにお茶などに切り替えましょう。
②ゆっくり飲む
分解する速度は思っていたより遅いと思われた方が多いと思いますが、
飲むペースが速いと肝臓に負担をかけます。ゆっくりと味わいながら飲みましょう。
③おつまみを上手にとる
空腹の時にお酒を飲むと、アルコールが胃を素通りして
小腸に流れるので、アルコールの吸収が速くなり、
血中濃度の上昇が速くなるといわれています。
おつまみと一緒にゆっくり飲むと、アルコールが胃に留まる
時間が延びて、吸収が遅くなり、血中濃度も低く抑えられます。
またアルコールを分解するとき、肝臓はたんぱく質を必要とすることから、
たんぱく質の豊富な食べ物をおつまみにしましょう。
☆たんぱく質が豊富な食べ物例:枝豆、焼き鳥、豆腐、卵焼き、チーズ等
④1週間に2日はお酒を休む
お酒を飲むと肝臓には中性脂肪が蓄積されますし、胃や腸といった消化管の粘膜も
荒れてくるので、これら臓器の修復のため週に2日程度の休肝日を作ることが必要です。
5 お酒好きとアルコール依存症の境目
自分の体調に合わせて飲む量をコントロールできるのが、普通のお酒好きの方です。
コントロールできずに大量に飲み続けて、自分の健康、仕事や生活に悪影響が出ても、
飲酒を優先させる状態がアルコール依存症です。この状態は病気なので治療が必要です。
6 お酒とお薬の関係
アルコールが残っているときにお薬を飲むと、
その効果が増強する場合があるので、注意が必要です。
参考資料
アルコールの基礎知識,eヘルスネット
薬とアルコールの相互作用,北海道薬剤師会
飲酒の基礎知識,アルコール健康医学協会ホームページ
アルコール依存症について,久里浜医療センターホームページ