2021年5月号『心身の健康に森林浴を!』

 森は、若葉のみずみずしい緑色に包まれてきました。森の中で大きく深呼吸すると、清々しい空気で体中が満たされ、爽快感でいっぱいになります。日本は、森林が国土の3分の2を占めており、世界でも有数の森林国です。人は癒しを求めて無意識に森を訪れていることもありますよね。


1 樹木が自分を守るフィトンチッドは人にも良い効果

 自分で移動することができない樹木は、外敵から攻撃を受けても、逃げることができません。そのため、自分を守る手段として、傷ついたときに病原菌の感染を防いだり、害虫などを寄せ付けない揮発性物質を放出しています。それが、フィトンチッドです。

 人が、フィトンチッドを吸い込むことにより、心と体の両方に良い影響があることが、様々な研究からわかっています。

 

2 森林浴の効果

 樹木は幹や葉からフィトンチッドを大気中に放出しています。その量は、樹木の種類により異なっており、一般には広葉樹より針葉樹に多いと言われていますが、国内では、トドマツ、ヒノキ、スギなどに多いと言われています。ちなみに、ウッドチップやヒノキボールなどの樹木の加工品や精油、住宅に使われる木材もフィトンチッドが含まれていますから、効果が期待できます。

 具体的には、次に挙げるような効果が得られます。

① 空気の浄化

 森の中には、さまざまな動植物の死骸や多様な物質の堆積物があって、本来であればこれらの匂いが気になるはずですが、それが気になりません。フィトンチッドには、大気中の有害な物質を吸収して分解したり、ほこりを大気中から取り除いたりする働きがあるからです。森では、浄化されたきれいな空気を吸うことができます。

② リラクゼーション

 緑色の景色を見て、草木の匂いを感じるだけでも、気分は落ち着くものですが、特に森林浴は、コルチゾールという「ストレスホルモン」の唾液中の濃度を低下させたり、緊張感や疲労感を緩和し、血圧や脈拍数を低下させたりするなど、心理的、身体的に、リラックスした状態となることが知られています。

③ 免疫力が向上

 がん細胞やウイルスを攻撃するナチュラルキラー細胞の活性が低下すると、病気になりやすくなります。森林浴は、このナチュラルキラー細胞を活性化し、免疫力を向上させること等、様々な病気を予防してくれる効果があると言われています。

 

3 時期

 森のフィトンチッドの量は6月から8月にかけて多くなります。夜のうちに樹木から放出し、朝方から漂い始め、濃度が最も高いのは、正午頃です。森林浴は、たった1時間くらいでも効果があるので、わざわざハイキングスポットまで出かけなくても、近所の森の中を散策するだけでも恩恵がありそうですね。

 胸いっぱいに森の空気を吸い込んでみませんか?

 


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