2021年7月号『頭痛とつきあう』

 「頭痛もち」という方は意外と多く、常に鎮痛薬を持ち歩いているという方はよくいます。日本人の3から4人に1人は頭痛を感じることがあるそうです。

 歴史的な偉人にも頭痛はあったようで、夏目漱石や芥川龍之介などは、その作品から頭痛に悩まされたことが推察されますし、樋口一葉の残された日記からも、頭痛が頻発していたことが分かる文章があるそうです。それを知ると、偉人も自分と同じ人間だと、親しみが湧いてきます。

 多くの人が体験している又は、悩んでいる頭痛についてお伝えいたします。

 

1 頭痛の種類

  
 頭痛は、大きくわけると一次性頭痛と二次性頭痛に分けられます。一次性頭痛とは、いわゆる「頭痛もちの頭痛」で、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛などです。二次性頭痛とは、「原因のある頭痛」のことで、髄膜炎、クモ膜下出血、脳腫瘍など重篤な病気の症状として現れるものです。

2 先ずは医療機関の受診

 頭痛に悩む人の多くは、薬局で鎮痛剤を購入して服用してその場をしのいでいると思われますが、重大な病気が潜んでいることもあるので、先ずは一度、頭痛外来や内科などの医療機関を受診し、命に関わる頭痛ではないという診断をしてもらい、指導を受けることが大事です。

3 片頭痛

 ズキンズキンと心臓の鼓動に合わせて痛むのが特徴で、吐き気があったり、光・音・気圧や温度の変化に対して敏感になることがあります。女性ホルモンとも関係があるため、20から40代女性に起こりやすい頭痛とも言われており、女性の方が男性よりも3.6倍多いというデータもあります。救急車を呼ぶほどひどくなる方もいますので、あなどれません。

 片頭痛の原因は明らかではありませんが、何らかの原因で脳の血管が拡張し、それを取り巻く神経を刺激し起こるとも言われています。

片頭痛対処法 

 ①冷やす

 血管が拡張して痛みが起こることが多い片頭痛は、「冷やす」ことで痛みが軽減されることがある。痛みを感じたら、こめかみの脈打つ部分を冷却シートや氷枕などで冷やす。

 ②カフェインなどを含んだコーヒーなどを飲む

 血管を収縮させる作用のある、カフェインを含んだコーヒーなど飲む。

 ③片頭痛の誘因となるものを避ける(誘因は人それぞれ違う)

 誘因となるものには、空腹、肉・ソーセージ、月経前、音、乳製品、チョコレート、運動、         ワイン、紅茶、寝すぎ・寝不足、チーズ、曇り・雨、光、ストレス等がある。

 ④前兆を感じた場合に鎮痛薬を飲む

 生あくび、キラキラした光が見える、ものがだぶって見えるなどの前兆がある人も多く、前兆に気が付いた場合に、若しくは頭痛に気付いたら、すぐに鎮痛薬などを飲む。

 

4 緊張型頭痛

 緊張型頭痛は、長時間のパソコン、メール、車の運転による首や肩の凝りからくる頭痛で、筋肉の緊張、血流の低下などによって蓄積した疲労物質が、神経を刺激して痛みを発生させます。頭全体が、重くなって圧迫されるような痛みです。首や肩の凝りなどをなるべく回避するような生活が重要です。

緊張型頭痛の対処法

 ①温める

 首や肩を温めることで血行がよくなる。ゆっくり入浴することもおすすめ。

 ②正しい姿勢

 猫背は首の筋肉の負担を増やし、筋肉の緊張をもたらす。正しい姿勢が大事。

 ③こまめな休憩

 作業中に休憩を入れることで、筋肉の血流を促す。

 ④日常的な運動

 じっとしていることが、血流を悪くするため、適度な運動を行って、筋肉をほぐす。

 

5 頭痛体操

 頭痛に効果がある体操をご紹介します。

(出典:埼玉精神神経センター・埼玉国際頭痛センター長 坂井 文彦 先生,一人で悩まずに「治す」「防ぐ」頭痛体操のすすめ!)

①片頭痛予防のための「コマ体操」

 頭と首を支えている筋肉と神経をストレッチし、その刺激がリズムに乗ってストレッチ信号として送られる。脳の痛みの回路にリズムが送られ、痛み調節系のセロトニンが活性化する。

足を肩幅に開き、正面を向き、頭は動かさず、両肩を大きく回す。座ったままでも効果があり1日2分でOK。

 

 

②緊張型頭痛のための「肩グルグル体操」

 肩を回すことで肩僧帽筋をストレッチして血行を良くし、首や肩の凝りを緩和させる。頭痛の最中に行えば痛みの緩和に、頭痛のないときに行えば予防になる。

 

両ひじを90度程度に曲げ、肩を中心にして、前から後ろへ「上着を脱ぐ」感じで大きく5回まわす。後ろから前へ5回まわす。前後合わせて10回を2セット行う。

 


6 気を付けたい薬物乱用頭痛

 鎮痛薬の飲みすぎで、逆に頭痛が増えたり、薬が効きにくくなる薬物乱用頭痛があります。それを避けるためには、1日に数回飲んでも1日と数えて、月に10日を越えないようにしましょう。

頭痛に悩まされている方、薬のみに頼らず、日常生活の工夫で、うまくセルフケアできるといいですね。


参考資料
日本頭痛協会ホームページ,頭痛講座
大野英樹,Doctors File頭痛,
稲垣 美恵子,頭痛on-line,片頭痛と女性との関係
坂井文彦,「片頭痛」からの卒業,講談社現代新書


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