2022年10 月号『「過敏性腸症候群」でお悩みではないですか?』

 大腸がんや潰瘍性大腸炎などのような腸の病気がないのにも関わらず、慢性的な腹痛が起ったり、下痢・便秘などの便通異常がおこることを、過敏性腸症候群といいます。仕事や生活上のちょっとしたストレスによってこのような症状を経験する方も多いと思います。


1.原因

 精神的ストレス、過度な緊張、腸内細菌叢(※)の変化などが関係していると考えられていますが、はっきりとした原因はわかっていません。命を脅かす病気ではありませんが、本人にとっては、悩みになります。

※「腸内細菌叢」「ちょうないさいきんそう」

 「腸内細菌叢」は、人間等の動物の腸壁に常在する細菌のことで、まるで草が生い繁っている「叢(くさむら)」の様に見えるためこのように呼ぶ。腸内に生息している細菌は、1000種以上で、総数はおよそ100兆から~1000兆個。腸内細菌叢の重量は約1kg~2kgあり、生体ごとに種類や量、菌の偏りが異なる。腸内細菌叢は、腸内細菌の働きによって、「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」に分かれる。

2.症状

 何らかのストレスが加わると、その刺激で腸の動きがおかしくなり、お腹の「痛み」や「お腹が鳴る」「膨満感」「おならがよく出る」などの不快感、下痢や便秘などです。激しい腹痛があったり、下痢と便秘を交互に繰り返すこともあります。

 電車の中などトイレのないところに長時間いられない、人前で発表したり、試験を受ける前に腹痛を催すなど、日常生活を送る上で本人にとっては、とても困る症状なので、対処が必要になります。排便後、痛みが緩和されることが多く、また睡眠時には症状が現れないという特徴もあります。

3.どんな人がなりやすい?

 感情表現が苦手な人ほどなりやすい、とも言われていて、自分の喜怒哀楽をうまく言葉で表現できない、感情を自覚できない傾向の人がなりやすいことがわかっています。

 辛いという気持ちを意識したり、怒りや悲しみを言葉で表現できないので、代わりに身体が”辛い”と表現することで症状が起こるとも言われいます。受診した病院の医師から、心療内科などを紹介され治療する方もいます。

4.脳と腸は密接な関係?

 脳と腸は、関連が深くその関係を「脳腸相関」と呼びます。脳の状態が、腸に影響を及ぼし、腸の状態も脳に影響を及ぼす現象です。例えば、ストレスを感じると腸の動きに影響します。逆に腸内環境が変わることで、不安になったりリラックスしたりと脳に影響します。

 腸内環境を整えることで、腸の正常な働きを活発化させると、自律神経のバランスが整い、ストレスによる交感神経が優位になる(イライラ、怒る、あせる)ことを防ぐことができます。

 

5.治療方法には、「生活習慣の改善」「薬物療法」などがあります。

 食事療法は、刺激物を避けながら食物繊維を積極的に摂取します。ヨーグルトなどの発酵食品は、症状の軽減に有効です。運動療法では、適度な運動を取り入れ、腸の動きを整えます。薬物療法では、腸の働きを調整するお薬や、便の硬さを調整するお薬、また腸内細菌叢を整えるお薬などが、症状によって、処方されます。

 1人で悩まずに、主治医の先生へ御相談ください。腸の状態をコントロールすることで、社会生活が快適になるかもしれません。


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