いばらき産保ニュース 第16号

発行日:2008/2/27
ホームページ:https://ibarakis.johas.go.jp/
発  行:独立行政法人 労働者健康福祉機構
茨城産業保健推進センター 所長 小林 敏郎


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【コラム:水戸南町だより】

新着情報

使用報告のない石綿「トレモライト」を検出/総務省が再調査を検討

アスベスト(石綿)のうち、従来、国内では使われていないとされてきたトレモライトが東京都、横浜市、千葉市、新潟市の公共施設12カ所と民間施設2カ所の計14カ所で検出されていたことが、今月13日分かりました。 アスベストとしてはクリソタイル(白石綿)、アモサイト(茶石綿)、クロシドライト(青石綿)がよく知られています。しかしトレモライトについては、アモサイトやクロシドライト同様角閃石族に含まれ、毒性が強いとされているものの、これまで使用が報告されず、国内では使われていないと思われてきました。 検出されたトレモライトは、断熱・吸音材の「ロックウール」などに高濃度で含まれており、広く使われてきた可能性もあります。 これまで総務省や文部科学省の依頼で、地方自治体がアスベストの使用状況を調査してきましたが、多くはトレモライトを調査対象としてこなかったとみられます。このため総務省は、トレモライトを含めた調査の検討を始めています。 (2月14日 毎日新聞などより)
【解説:石綿の種類】
石綿障害予防規則及びその施行通達では、「 石綿の種類には、アクチノライト、アモサイト(茶石綿)、アンソフィライト、クリソタイル(白石綿)、クロシドライト(青石綿)及びトレモライトがあること」(平成17年3月18日基発第0318003号)と定義しています。 蛇紋石族に属しているクリソタイルを除く角閃石族の5種類の鉱物は、肉眼的にも顕微鏡的にも繊維状を示さないものがありますので、それらのうち顕微鏡レベルで長さと幅の比が3以上のアスペクト比をもつ繊維状のものを石綿と、WHOやILOは定義しています。 今まで世界で使われた石綿の9割以上が蛇紋石族石綿のクリソタイルです。角閃石族石綿では、アモサイトとクロシドライトが吹付け石綿として過去に大量に使われていましたが、トレモライトなどはこれまで国内での使用が報告されてきませんでした。 「石綿粉じんのばく露防止マニュアル」(建災防)にも、「トレモライトとアクチノライトは、いずれも蛇紋岩中に存在することが多く、クリソタイルやタルクあるいはバーミキュライトといった鉱物に不純物として認められる場合もあるので、注意が必要である。」という記載がありますが、使用報告がなかったので、 日本国内にはクリソタイル、アモサイト、クロシドライトの3種類しか存在しないという誤解が生じていたようです。 厚生労働省も今月6日、労働基準局安全衛生部化学物質対策課長名で、「分析調査においては、対象をクリソタイル等の石綿に限定することなく、トレモライト等を含むすべての種類の石綿とするよう」にと、分析調査の徹底を求める通達を発しています。
この通達「石綿障害予防規則第3条第2項の規定による石綿等の使用の有無の分析調査の徹底等について」(基安化発第0206003号)について詳しくは ↓
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/sekimen/hourei/dl/080206-1.pdf
【関連セミナー案内】
テーマ:作業環境測定結果の見方について~デザインの方法、評価方法を中心に~
日時等:5月29日(木)午後2時~4時 茨城産業保健推進センター研修室
概 要:作業環境測定で内容が理解しにくいデザインや評価方法について、具体的事例を用いて講義。

特定健康診査等の実施に関する協力について
/厚生労働省労働基準局長と保険局長が連名で通達

高齢者の医療の確保に関する法律(以下「高齢者医療確保法」という)に基づき、平成20年4月から、医療保険者は40歳以上の加入者に対し、糖尿病等の生活習慣病に着目した健康診査(以下「特定健康診査」という。)と保健指導を実施することが義務付けられます。
労働安全衛生法に基づく健康診断を受診した者については、高齢者医療確保法において、その結果を医療保険者が受領することにより、特定健康診査の全部又は一部を行ったものとすることとされています。 つまり、定期健康診断と特定健康診査を重複して行う必要はありませんが、高齢者医療確保法の規定により、定期健康診断の実施者である事業者は、当該定期健康診断の結果等を速やかに医療保険者に提供する必要があります。 このことに関し、平成20年1月17日、厚生労働省労働基準局長と保険局長は連名で「特定健康診査等の実施に関する協力依頼について(依頼)」(基発第0117001号、保発第0117003号)を発出し、定期健康診断の実施者である事業者と医療保険者との緊密な連携・協力について通知しています。
詳しくは↓
http://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-49/hor1-49-1-1-0.htm
【関連セミナー案内】
テーマ:産業保健における口腔疾患~生活習慣と口腔疾患、その予防について
日 時:5月22日(木)午後2時~4時 茨城産業保健推進センター研修室
概 要:最近注目されているこうした口腔疾患と生活習慣との関連、従業員の歯科健診(産業歯科健診)の意義と 効果について実例をもって説明。

労災死亡事故で派遣元、派遣先双方に賠償命令/東京地裁

製缶会社で勤務中に労災事故死した派遣労働者(当時22歳)の両親が、雇用主の人材派遣会社と派遣先である製缶会社などに計1億9,200万円の賠償を求めた訴訟で、東京地裁は今月13日、両社に約5,170万円の支払いを命じました。 被告側は、派遣会社が製缶会社から請け負った業務に従事していたもので、労働者派遣ではないと主張していましたが、判決では「(労働者)と実質的に使用従属の関係にあった」と、直接雇用関係のない製缶会社にも安全配慮義務違反を認めました。 (2月13日 毎日新聞など)
【メモ:労働者派遣と請負】
労働者派遣とは、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。」(法2条1号)と労働者派遣法で定義されています。 要するに労働者派遣は、1人の労働者について、雇用主である派遣元と直接使用する派遣先が分離している形態をいい、派遣元企業と派遣労働者の雇用契約、派遣元企業と派遣先企業との労働者派遣契約、派遣先企業での指揮命令を受けての派遣労働者の就労という、三者間の契約関係を特質としています。 これに対し請負は、注文主の注文に従って、請負事業者が自らの裁量と責任の下に自己の雇用する労働者を使用して仕事の完成に当たるもので、注文主が請負事業者の労働者を指揮命令して業務に従事させるということは一切あり得ません。 問題となるのは、形式的には請負契約がなされていても、自ら労働者を指揮監督をせずに、注文先が実質的に指揮命令して業務を遂行しているケースです。 「偽装請負」とも呼ばれていますが、労働者派遣法に違反するとともに、労働者が注文先の指揮命令に従って注文先の業務に従事していたと認めらられる場合は、労働者派遣法45条の読み替え規定により、注文先(派遣先)に対して派遣労働者の安全衛生を確保する特例的な義務が課せられるほか、この裁判例のように安全配慮義務が求められることがあります。 これまでにも、派遣労働者に対する派遣先の安全配慮義務違反が問われた裁判例としてはアテスト(ニコン熊谷製作所)事件(東京地判平17.3.31)があります。 ニコンの熊谷工場に派遣された男性がうつ病を発症して自殺したのは、長時間勤務と劣悪な勤務環境が原因だとして、遺族が派遣会社ニコンと業務請負会社ネクスター(現アテスト)に損害賠償を求めた訴訟で、 東京地裁は両社に計約2,480万円の支払いを命じました。
【セミナー予告:受講申込については、後日ホームページ等で案内します】
テーマ:「労働契約法と労務管理~安全配慮義務、労働契約の締結から変更、終了まで~」
日 時:7月24日(木)午後2時~5時 茨城県立図書館視聴覚ホール
概 要:長時間労働や「パワハラ・いじめ」等による精神疾患について、会社に対し安全(健康)配慮義務違反を問う個別労働関係紛争が増大するなか、昨年成立した「労働契約法」にも使用者の安全配慮義務等が明記されました。 セミナーでは、産業保健関係者向けに労働契約法の内容を説明します。

センターからのお知らせ(お役立ち情報等)

地産保用面接指導チェックリスト/登録産業医向けに開発

現場の状況を充分には把握していない医師でも、改正労働安全衛生法に基づく面接指導を適切に行えるよう、産業医学振興財団はこの度、新たに「地産保用面接指導チェックリスト」を作成しました。 すでに産業医学振興財団は、「長時間労働者への面接指導チェックリスト(医師用)」を作成し、ホームページで情報公開しています。今回新たに作成した「地産保用面接指導チェックリスト」は、内容をより簡易にしたもので、地産保の登録医など現場経験のあまりない産業医向けに作成されたものです。 同財団によれば、3月頃にはチェックリストが各地域産業保健センターに送付される予定です。但し、 般の事業場では本来のチェックリストを使用することが望ましいとして、当面、地産保用チェックリストのホームページ掲載は 行わないとのことです。
一般事業場用の「長時間労働者への面接指導チェックリスト(医師用)」については↓
/insurance/topics/checklist.html
【解説:地域産業保健センターとは】
産業医の選任義務のない労働者50人未満の事業場の事業主や労働者を対象に、健康相談・保健指導等の産業保健サービスを無料で提供する機関です。 厚生労働省が、概ね労働基準監督署管轄ごとに、地元郡市医師会に委託して業務を行っています。
茨城県内の地域産業保健センターの設置状況は↓
https://ibarakis.johas.go.jp/chiikisanpo#list

心の健康づくり事例集/職場におけるメンタルヘルス対策

職場におけるメンタルヘルス対策を立てる上で、メンタルヘルス対策を積極的に行っている事業場の事例を知ることは、きわめて重要です。 この度、中災防が厚生労働省の委託を受けて実施した「メンタルヘルス対策支援事業」の中の事例を紹介したパンフレット(13ページ)が出来あがりました。 パンフレットを希望する方は、「心の健康づくり事例集 希望」と明記(明示)して、当センターまでメール、 FAX等でお申込ください(無料)。
【働く人の心の健康相談室のお知らせ/茨城産業保健推進センター】
勤労者がストレスから心の健康を守りよりより生活を送って頂くため、心の健康対策として「働く人の心の健康相談室」を 開設しています。 ご相談は無料でお受けし、専門のカウンセラーが対応いたします。面談、電話とも可能です。
働く人の心の健康相談室のご利用について
詳しくは↓
https://ibarakis.johas.go.jp/consultation/mendan/kokoro-2
【関連セミナー案内】
テーマ:ストレスケアとしてのリラクゼーションの技法を学ぶ~自律訓練法など~
日時等:20年3月4日(火)午後2時~4時 産業保健推進センター
概 要:自律訓練法を始めとするリラクゼーションの技法を紹介するとともに、 自律訓練法の習得方法について臨床心理士が指導

日本産業衛生学会 関東産業看護部会 研修案内(資料代2,000円)

日本産業衛生学会関東産業看護部会は3月8日(土)午後1時30分から、『健康行動理論』に関する研修会を開催します。
講師は、松本千明先生(医学博士・公衆衛生学修士)
生活習慣病の予防と治療には対象者の行動変容が不可欠です。対象者に行動変容を促す場合にどこにポイントをおいて 働きかけたら良いか、学習します。

お願い! 産業保健に関するアンケート

当茨城産業保健推進センターでは、20年度、新規に以下の事業を検討しています。
ご利用について皆様のご意見を承りたいと存じますので、是非、アンケートにご協力ください。
下記の事業について、利用を希望する方は「利用したい」に、利用を希望しない方は「利用しない」に○を付けるかいずれかを 明記してください。
また、ご意見をお寄せ下さい。 いずれの事業も参加無料です。

【産業看護職のためのスーパービジョン】
心理相談やカウンセリングを行っている産業看護職のためのスーパーヴィジョンです。 事例についての理解を深め適切な対応を行うためにはスーパーバイザーによるスーパービジョンが欠かせません。 原則として毎月1回、当センターの専門のカウンセラーがスーパーヴィジョンを受けつけます。要予約です。
利用したい       利用しない

【経営者のためのメンタルヘルス実地相談】
メンタルヘルスの専門家が事業場に伺い、企業のメンタルヘルス対策について支援します。
基本的なプログラムは以下のとおりです。簡単な講演にも応じられます。
・メンタルヘルス対策の必要性
・メンタルヘルス対策のはじめ方
・メンタルヘルス不全者への対応
・コミュニケーションスキルの習得等

利用したい       利用しない

【メンタルヘルス・ケースカンファレンス】
参加者が提示するメンタルヘルス事例について、全体で討を行い、最後に当センターの産業保健相談員(産業医学担当)が総括とアドバイスを行います。
原則として毎月1回、対象は産業看護職など若干名。事例がなくとも参加できるようにします。

利用したい       利用しない

【新規事業に関するご意見】

【アンケートの回答方法】
このまま返信メールで、又はFAX(029-227-1335)で、茨城産業保健推進センター(担当 野口)あて。様式は任意です。

新着図書・教材情報(無料貸出し)

  • パワー・ハラスメント~働きやすい職場づくりを目指して
    (VHS版全2巻セット)
    第1巻 パワー・ハラスメントとは何か (約20分)
    第2巻 パワー・ハラスメントを生まない職場づくり (約20分)
    【概要】
    何がパワハラで、何がパワハラでないのか。「職場環境調整義務」を負う管理者に不可欠なパワハラの基礎知識を解説。
  • 「社内いじめ」とパワーハラスメント(VHS版全2巻セット)
    第1巻 全社員がパワハラ・社内いじめの加害者・被害者(約25分)
    第2巻 ケースドラマ&解説 パワハラと社内いじめ(約25分)
    【概要】
    一向に減らない職場でのパワー・ハラスメント(パワハラ)。その類型も多様化・悪質化しています。
    快適な職場環境を作るために欠かせないパワハラ、そして社内(職場)いじめ対応のポイントを全従業員向けに解説。
  • ケースで学ぶ パワー・ハラスメント対応(VHS版全2巻セット)
    第1巻 パワハラがなくなる話し方・接し方 (約20分)
    第2巻 どこからがパワハラか (約20分)
    【概要】
    9つのケースドラマ・解説を通して、「パワハラ」と「正当な指導」のボーダーラインに気づき、 ケースバイケースでの対応のヒントを得ることができます。

産業保健Q&A

有機溶剤による腎障害と判断するには

【質問】
テトラクロルエチレンやトリクロルエチレンは、高濃度ばく露により肝障害や腎障害を引き起こすとされていますが、これら有機溶剤による腎障害と、その他の原因による腎障害の鑑別点を教えてください。
【回答】
一般に有機溶剤による全般の健康障害の発症機序は、皮膚または粘膜(眼・呼吸器・消化器)に付着することにより その部位で作用するほか、長期間の反復吸収によってその種類により特有な代謝をうけ臓器特有(標的臓器)の毒性(特異毒性)を 発現するものがあります。 腎障害もその一つですが、腎障害は標的臓器としての蓄積性障害あるいは排泄過程での障害であろうと考えられます。
有機溶剤を多量に飲んだときの所見としては、腎の壊死・変性や尿細管の混濁腫張が見られるとされ、また慢性中毒実験の際の所見での主たる病変は尿細管障害であるとされています。 有機則に定められた物質のうちで腎機能障害が知られており、健診で医師が必要と認めたときに腎機能検査(尿蛋白検査)を必要とするものとしては、・・・

産業保健Q&Aの続きは、こちらをご覧下さい。
産業保健に関するご相談は、 こちらから

これから受講できるセミナー案内(無料)「2008年」

  • 3月4日(火) 14:00~16:00 :茨城産業保健推進センター
    テーマ「ストレスケアとしてのリラクゼーションの技法を学ぶ~自律訓練法など~」 実力アップ(Ⅲ-7‐(1)1単位)
  • 3月12日(水) 10:00~12:00 :つくば国際会議場(つくば市竹園2-20-3)
    テーマ「『ラインケア支援の方策マニュアル』を用いた管理職教育とその効果について(平成18年度調査研究結果報告)」  日医(基礎(後期)2単位,生涯(専門)2単位)
    ※ 応募を締め切りました。
  • 3月15日(土) 10:00~11:30 :茨城県立医療大学実習棟(阿見町阿見4669-2)
    テーマ「アジア諸国における産業看護職の活躍」 実力アップ(Ⅰ-1‐(3)1単位)
    ※ セミナー修了後、産業看護職の交流会(11:30~13:00)を予定しております。
  • 4月17日(木) 14:00~16:00 :茨城産業保健推進センター
    テーマ「メンタルヘルス疾患による休職者の職場復帰について」 日医(基礎・後期2、生涯・専門2)
  • 4月19日(土) 13:00~17:00 :茨城産業保健推進センター
    テーマ「職業性ストレス簡易調査票の使い方を学ぶ」 実力アップ(Ⅳ-5-(3))
  • 4月25日(金) 18:30~20:30 :鹿嶋勤労文化会館(鹿嶋市宮中325-1)
    テーマ「企業保健室の漢方について」 日医(基礎・後期2、生涯・専門2)
  • 5月14日(水) 18:30~20:30 :茨城産業保健推進センター
    テーマ「産業・医療の場で使われる放射線と健康への影響について」 日医(基礎・後期2、生涯・専門2)
  • 5月22日(木) 14:00~16:00 :茨城産業保健推進センター
    テーマ「産業保健における口腔疾患~生活習慣と口腔疾患、その予防について」 実力アップ(Ⅳ-3-(1))
  • 5月29日(木) 14:00~16:00 :茨城産業保健推進センター
    テーマ「作業環境測定結果の見方について~デザインの方法、評価方法を中心に~」
    日医(基礎・後期2、生涯・専門2)

注:「日医認定」とあるのは、日本医師会認定産業医制度の単位認定研修(生涯研修)です。
「実力アップ」とあるのは、日本産業衛生学会産業看護職継続教育実力アップコース認定(基礎コース修了者)です。

コラム水戸南町だより

高機能ヘルスメーターが売れている?/まずは運動から始めよう

高機能ヘルスメーターが売れているそうです。それだけ価格も高いが、体形が気になり始めた男性を中心に人気を呼んでいて、家電量販店に設けられたヘルスメーター売り場には、1万円を超える高機能商品がズラリと並んでいるそうです。
そもそも「ヘルスメーター売り場」なんていうものが存在しているのも不思議な気がしますが、最近のヘルスメーターは体重や体脂肪はもちろん、体内年齢や太りにくい体質を示す骨格筋率など測定項目が多彩になっているのが特徴だそうで、購入者層はズバリ40~50代の男性とのこと。 4月からはメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の予防・改善を目的とした特定健康診査・特定保健指導が義務づけられたことの影響とする見方が専らですが、これまで体脂肪など気にしなかったお父さんたちが、健康管理に”目覚めた”とすれば良いことには違いありません。 メタボリックシンドロームの診断基準はご存知のとおりですが、腹囲(男性85cm、女性90cm)については意義を唱える方も多いようです。また、少し太り気味の方が長生きするというデータも次々と出されています。
例えば、わが国ではBMI25以上を肥満としていますが、BMI25前後の人が最も長寿であるとか、または22程度の人と比較して差はないというデータもあるようです。 むしろ極端な痩せ過ぎと太り過ぎが問題で、男性であればBMIが25~27程度まではほとんど差がないと見るべきなのでしょうか。

話が急に変わりますが、多くの日本人(本土日本人)は、旧モンゴロイドと新モンゴロイドとが同化したものであるとする説が存在するのはご存知でしょうか。 新・旧とはモンゴロイドを形質的特長から分けた表現方法にすぎませんが、新モンゴロイドは、旧モンゴロイドに比べると一般に一重まぶた、彫りが浅く、体毛が少ない、唇が薄い、耳垢が乾いており、手足の短いずんぐりした体型であるなどの特徴を持っています。
これは氷河期時代のシベリアで寒冷適応した結果で、卓越したマンモスハンターとして広大なシベリアを駆け回った彼ら新モンゴロイドは、その寒く厳しい環境で生き延びるため、生活文化のみならず自身の体も変化させてしまいました。 もっとも今日では同化がすすんでおり、純粋な意味での新・旧モンゴロイドは存在しないと思いますが、彫りの少ない顔立ちでは、熱を発散する面積が少ないので寒冷仕様であり、手足の短いずんぐりした体型も皮下脂肪を貯め込むことで、寒さから身を守る働きをしたものと考えられます。 また新モンゴロイドは、酒に弱い下戸といわれる特徴的な体質を持っています。
これはつい飲み見過ごして寝てしまい、凍死するのを防ぐ役割を果たしたとの説もありますが、はたして2万年前のシベリアに”赤提灯”があったかどうかは、考古学上定かではありません。 このように体脂肪 には、本来身体機能を維持する上で、きわめて重要な役割があったわけであり、太り気味のほうが長生きするというのも頷ける話です。 確かに、痩せ気味の方がスタイルは良いわけですが、無理して痩せる必要がないというのは免罪符がもらえたようで、チョイメタ親父にとってはすごく嬉しい話です。

しかしこれで安心してはいけません。 いま問題になっているのは、脂肪などの過食、運動不足などで内臓脂肪が過剰に蓄積した「内臓脂肪型肥満」です。
内臓の脂肪は主に腸間膜にあり、腹部CTスキャンでどれだけ蓄積されているか正確に判定でき、内臓脂肪面積が100cm2以上の場合、内臓脂肪型肥満と判定します。 内臓脂肪が蓄積されると、内臓脂肪細胞では高血圧や糖尿病、高脂血症の原因物質などが盛んにつくられ始め、体内に放出されます。
一方、そのような影響から身を守る物質(アディポネクチン)も内臓脂肪細胞でつくられますが、内臓脂肪の蓄積とともに減少してしまいます。
つまりBMIが25以下でも、内臓脂肪型肥満が見られる”かくれ肥満”は注意が必要だということです。 ちなみに、少々太っていてもよく運動している人は、標準体重であっても少ししか運動していない人に比べて死亡率が低いことも知られています。 アメリカ・ハーバード大のパッフェンバーガー博士によれば、各年齢層における相対的な全死亡危険率は、全部の年代層で、日頃の身体活動度が高い方が危険率が減る傾向があり、50歳代を例にとると、週に2,000kcalの運動をしている人は、500kcal未満の人に比べて半分になっています。
1週間に2,000kcalのエネルギーを消費するには、毎日、60分間歩く必要があります(※)が、そう遠くない昔、シベリア平原にマンモスを追いかけていたご先祖様を少しは見習って、内臓脂肪を減らすため、毎日歩くことから始めましょう。

※ 徒歩の場合の消費カロリーは、0.076~0.082×体重×歩いた時間(分)です。
体重70Kgの人が、毎日60分間づつ1週間歩くと、0.076~0.082×70×60×7=2,233~2,408Kcalになります。


次回の第17号は、平成20年3月上旬配信予定です。
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