いばらき産保ニュース 第22号

発行日:2008/5/19
ホームページ:https://ibarakis.johas.go.jp/
発  行:独立行政法人 労働者健康福祉機構
茨城産業保健推進センター 所長 小林 敏郎


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【新着情報】
【センターからのお知らせ(お役立ち情報等)】
【新着教材情報】
【産業保健Q&A】
【主なセミナー案内】
【コラム:水戸南町だより】

新着情報

休職者がいる企業は6割強、1企業平均9.5人/メンタルヘルスの実態と対策

うつ病や統合失調症など、メンタルヘルス(心の健康)に問題を抱え、 1ヶ月以上休職している社員がいる企業の割合が約6割に上ることが、 民間調査機関の「労務行政研究所」の調査で分かりました。
休職者は働き盛りの20~30代で増加が目立ち、同研究所は、「中高年を 中心に人員が削減される中、若い世代の仕事量が増え、責任も大きくなり、 ストレスが強くなっているからでは」と分析しています。 調査は1~3月に、全国の上場企業など約4,100社を対象に実施し、 250社から回答を得ました。調査によると、1ヶ月以上の休職者がいるのは 62.7%。企業規模が大きいほど高率になる傾向があり、従業員1,000人以上 の大企業では9割を超えました。 また休職者が「いる」とする企業に、休職者の人数を尋ねると平均は 9.5人で、中位数は2人でした。前回調査では平均4.4人,中位数2人 でしたので、平均では倍以上に増えたことになります。
一方、休職者が職場に完全復帰した割合を「9割以上」とした企業は 全体の20.4%。小規模の企業ほど復帰が厳しくなっており、300人未満の 企業の約3割が「全員復帰できなかった」と答えています。
メンタルヘルス対策は、大企業では100%近くが実施していましたが、 300人未満では57%にとどまっています。 同研究所は「職場復帰には早期発見、早期治療が大切。相談窓口の設置 など支援態勢の充実が求められる」と話しています。 (5月3日産経新聞などより)
労務行政研究所↓
https://www.rosei.or.jp/

【参考:こんな職場は要注意!】

  • 「おはよう」のあいさつがなく、みんな淡々と仕事を始める
  • 机が近い人でもメールでやり取りし、直接話をしない
  • 昼食は一緒にいかない。気づくと自分の机で一人で食べている
  • 深夜残業が続く人がいても声をかけない
  • 困っている人がいても「手伝おうか」の一言がない
  • 何度頼んでも、誰もきちんと対応してくれない
  • 新しいことに参加してくれない
  • 自分の役割や業務ではないと、仕事を押しつけ合っている
  • お互いにかかわれない、踏み込めない空気が漂っている
    (毎日新聞2008年4月17日「夕刊特集ワイド」より)

【関連セミナー案内】

  • テーマ:自前で行うメンタルヘルス研修 日時:7月11日(金)18時30分から20時30分茨城産業保健推進センター
    概要:産業保健スタッフが自力でメンタルヘルス研修を行うことが
    出来るための基本的で実戦的な知識、研修方法、研修教材及び ツール等をご紹介します。

【メンタルヘルス・ケースカンファレンス】

  • 平成20年6月2日(月)14時40分から16時まで
    同8月4日(月)14時40分から16時まで
    同 10月6日(月)14時40分から16時まで
    同 12月1日(月)14時40分から16時まで
    平成21年2月2日(月)14時40分から16時まで

産業保健の場で起こるメンタルヘルスに関する様々な問題に対し、 提供者と参加者が意見を出し合い、対話を重ねながら、より良い 解決を考えてゆきます。
産業看護職、人事労務担当者等対象。
会場は、茨城産業保健推進センター研修室。

健康診断の未受診、20歳代と女性非正社員で多く/連合総研調査

連合総研が今月13日に公表した「勤労者の仕事と暮らしについての アンケート調査(勤労者短観)」結果によると、20歳代と女性の非正社員で 健康診断の未受診率が高いことがわかりました。
この1年で健康診断(地域健診、自費健診含む。以下同じ)を受けていない 人の割合は、20歳代の男性で28.9%、同女性で38.2%にものぼりました。
雇用形態別では女性正社員11.3%に対し、女性非正社員は32.6%が受診して いませんでした。また、女性非正社員は、「会社の健康診断」は半数以下に とどまり、「地域の健康診断」が14.9%と他の層に比べて高い比率となっています。 調査対象は、首都圏および関西圏に居住する20歳代から50歳代までの 民間企業に勤務する者774名(有効回答数)。 (時事通信)
調査結果は↓
http://www.rengo-soken.or.jp/houkoku/kinroukurashi/enquete/No.15/15gaiyou.pdf
【健康診断の実施率・受診率は】
一般定期健康診断の実施率は、平成17年の労働安全衛生基本調査の結果 78.5%でした。平成12年の調査では85.4%でしたので、ここ数年で実施率が 低下しています。
1,000人以上の大規模事業場では実施率がほぼ100%で推移しているのに 対し、小規模事業場で減少率が高くなっています。 また、定期健康診断の受診率は、平成14年の産業振興財団の実態調査で 87.9%、平成12年の労働安全衛生基本調査では87.5%でした。 受診率に関しては規模間の格差はほとんどありませんから、20歳代の男性で 28.9%、同女性で38.2%が未受診という調査結果は、有所見率が50%を超えている 現在、深刻に受け止める必要があると思います。

【関連セミナー】

  • テーマ:労働契約法と労務管理~安全配慮義務、労働契約の締結から変更、終了まで~ 日時:7月24日(木)14時から17時茨城県立図書館視聴覚ホール
    概要研修では、安全(健康)配慮義務、労働契約の締結から変更、終了まで、 これまでの基本的な判例などを基に、産業保健スタッフ等として理解 しておくべき事項について具体的に解説します。
  • テーマ:産業保健における口腔疾患~生活習慣と口腔疾患、その予防について
    日時:5月22日(木)14:00~16:00茨城産業保健推進センター
    :7月31日(木)18:30~20:30県西生涯学習センター
    概要:最近注目されている口腔疾患と生活習慣との関連について。 また、従業員の歯科健診(産業歯科健診)を行うことで、 作業能率の向上や医療費の削減につながることなどを、実例で説明。
アスベストで石綿肺/元従業員遺族、9,900万円損賠求めスズキを提訴

工場での作業で、石綿やアルミなどの粉じんを吸い、じん肺の一種である 石綿肺にかかって死亡したのは、会社側が安全配慮義務を怠ったためだとして、 スズキ(浜松市)の元従業員3人の遺族が、同社に計9,900万円の損害賠償を 求める訴訟を今月8日、地裁に起こしました。
訴状によると、元従業員3人は69年から70年に入社。大須賀工場(掛川市) で働き、86~92年に定年退職し、その後肺気腫や肺がんなどで死亡しました。 2人は労災認定を受けています。 3人のうち2人は3~4週間に1回、石綿を断熱材として使っていた炉の 解体作業などを担当。他の1人もアルミの溶解作業などに携わりました。 工場では粉じんを除去する措置が取られておらず、防じんマスクの必要性など の安全教育も行われていなかったとしています。 (毎日新聞ほか)
【解説】
アスベストによる健康被害に関する訴訟は、トンネルじん肺訴訟や炭鉱じん肺訴訟 などにくらべ、まだそう多くはありません。
アスベスト訴訟弁護団によれば、現在、第1審係属中の事件も含めて16件です。 16件のうち14件が職業ばく露で、8件は造船関係、4件が石綿製造関係ですから、 今回のように自動車会社を訴えるのは極めて稀なケースだともいえます。 アスベストによる健康被害の特徴は、潜伏期間の長さです。石綿肺や肺がんで 15~20年以上、悪性中皮腫では20~50年とされています。 これまでの訴訟の半分を占めるのが造船関係であることから見ても分かるように、 かつての日本の高度経済成長を支えた産業で、多く発生しています。
従いまして、今後は石綿製造関係、造船関係以外の産業・業種にも拡大する 可能性があります。
【関連セミナー】
テーマ:防じんマスクの適正な選び方・有効な着用方法
日時:7月3日(木)14時から16時30分(株)小松製作所茨城工場
概要:防じんマスクの選択に当たっての留意点やフィッティングテスターを使って 顔面とマスク面体との密着性を確認する方法(実技)を研修します。 工場内を巡視して、粉じんによる健康障害防止対策について学習します。

センターからのお知らせ(お役立ち情報等)

禁煙週間のテーマ「子どもをたばこから守るために」
/平成20年度「世界禁煙デー」

5月31日の「世界禁煙デー」にちなみ、5月31日(土)から6月6日(金) まで禁煙週間の取り組みが行われます。
平成20年度においては、喫煙及び受動喫煙による健康影響の重要性等 についての普及啓発を積極的に行います。 また5月30日(金)午後1時から、科学未来館みらいCANホール (東京都江東区)において、厚生労働省、(社)日本医師会等の共催で 「世界禁煙デー記念シンポジウム」が開催されます。 シンポジウムでは「子どもをたばこから守るために」をテーマとして、 受動喫煙防止対策を中心とした喫煙の問題について、専門家を招いて 議論を深めることとしています。 シンポジウムの参加申し込みは、「世界禁煙デー記念シンポジウム事務局」
TEL:03-3597-1134
Fax:03-3597-1097
メール:no-tobacco2008@intergroup.co.jpまで。
WEB、FAX、Eメール等で受け付けています。
「世界禁煙デー」、及びシンポジウムについて詳しくは↓
http://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/kin-en/08.html
【厚生労働省ホームページ等による情報提供】↓
http://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/main.html
【関連セミナー】
テーマ:企業における喫煙対策と禁煙支援について
日時:7月17日(木)14時から16時文部科学省研究交流センター
概要:わが国における喫煙の実態、受動喫煙の健康への影響及び企業における 喫煙対策・禁煙支援をどのように進めたらよいかを説明します。

統合失調症の体験を漫画に/苦労をコミカルに表現

精神障害の統合失調症を発症した京都市の女性(22)が、偏見や誤解の多い この病気に理解を深めてもらおうと、体験をコミカルに表現した漫画の冊子を つくりました。
ペンネーム「真澄こと葉」さん。05年3月に統合失調症と診断されました。 今は落ち着き、通院しながらリハビリに励んでいますが、症状が悪かった 当時の自分と向き合うため、昨年末に描き始めました。
漫画のタイトルは「しっちょったぁ~!!!」。症状が出ている状態を 意味させる造語だそうです。 他者への気遣いができず、優しく接してもらってもなぜか「キレ」て 暴れてしまう患者の内面や、家族がうつ病になったり、自分が多重人格だと 騒いで周囲に迷惑をかける様子などを、コメディータッチで描いています。
「自分は治療を受けて前向きに進んでいるそれは自信を持っていいはずだ そういう姿勢自体が大切なんじゃないかと私は思う」と結んでいます。
漫画はA5判、38ページ。100円。女性が就労訓練などで通う精神障害者 社会復帰施設「からしだね館」で販売しています。
問い合わせは、からしだね館(TEL075‐574‐2800)。
(5月13日京都新聞より)

新着図書・教材情報(無料貸出し)

  • 新入社員のためのこんなときどうする?仕事のマナー~電話編・コミュニケーション編・職場の基本マナー編(全3巻DVD34~42分)
    【概要】
    職場でのあいさつの大切さ、電話の受け方・かけ方・お辞儀から名刺交換まで、 “社会人の基本”を、クイズ、ポイント解説、ロールプレイを交え自社内で 研修できる教材です。
  • メタボ撃退!実践シェイプアップ~行動変容編・実践編(全2巻DVD20~23分)
    【概要】
    メタボリック・シンドロームは防ぐことが可能な病気です。自分の身体に向きあい、 今一度、あなたにあった方法でシェイプアップを実践しましょう。健康づくりの ノウハウ満載!!
  • 石綿工事の事前準備~石綿の特性と使用状況(DVD14分)
    【概要】
    解体・改修工事では、作業を始める前にその建築物に石綿含有の建築材料が あるかどうか事前に調査(スクリーニング)しなければなりません。 作業計画は、石綿の作業レベルが判明してから策定します。
  • 石綿障害予防規則にみる事業者の責任~事業者が知っておくべき石綿作業のすべて(DVD17分)
    【概要】
    事業者は石綿による労働者の肺がん、中皮腫その他の健康障害を予防するため、 作業方法の確立、関係施設の改善、作業環境の整備その他、必要な措置を 講じなければなりません。
  • 脊髄損傷者の社会参加マニュアル(NPO法人日本せきずい基金発行154頁)
    【概要】
    年間5,000名近くの新たな脊髄損傷患者が生れています。 職場復帰や復学がにまでは至らなくとも、多くの人が社会復帰を果たしています。 本書は脊髄損傷者が社会参加して行くやために必要な知識やノウハウを集約し、 社会復帰事例を示したものです。
    なお、せきずい基金では、本マニュアルを希望者に無料配布しています。
    詳しくは同事務局(電話:042-366-5153、FAX:042-314-2753、メール:jscf@jscf.org)まで。

産業保健Q&A

産業保健Q&A従業員の健康診断はどこで受けたらよいか
~「臨床検査精度管理事業」に参加しているかいなかも選択肢に

【質問】
従業員の健康診断を行いますが、どこで受けるのがよいでしょうか。 決まりのようなものはあるのでしょうか。
【回答】
従業員の健康診断は、労働安全衛生規則に定める項目について検査ができる 機関であれば、病院、診療所、健康診断機関又は総合的な労働衛生をサービス している機関など、どこで受診してもけっこうです。
なお、検査項目は、今年4月から始まった「特定健診制度」に伴い、 新しく「腹囲」「LDLコレステロール」が追加になり、「総コレステロール」が廃止 されていますから、お申込の際には確認された方がよいと思います。
しかし労働安全衛生規則に基づく健康診断業務を行う健康診断機関だけでも、 全国には1,000以上あるそうです。どこで受けたらよいか迷う場合もありますが、・・・

産業保健Q&Aの続きは、こちらをご覧下さい。
産業保健に関するご相談は、 こちらから

これから受講できるセミナー案内(無料)「2008年」

  • 5月22日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「産業保健における口腔疾患~生活習慣と口腔疾患、その予防について」
    実力アップ(Ⅳ-3-(1))
  • 5月29日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「作業環境測定結果の見方について~デザインの方法、評価方法を中心に~」
    日医(基礎・後期2、生涯・専門2)
  • 6月2日(月)14:40~16:00:茨城産業保健推進センター
    メンタルヘルス・ケースカンファレンス
  • 6月5日(木)14:00~16:00:ダイヤ分析センター(稲敷郡阿見町)
    テーマ「屋外作業場等における個人サンプラーを用いた有害物質ばく露濃度の測定」
    日医(基礎・実地2、生涯・実地2)
  • 6月11日(水)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「職業性腰痛の予防と対応」
  • 6月19日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「WBGT(湿球黒球温度)指数を使った熱中症対策」
    日医(基礎後期1・実地1、生涯専門1・実地1)
  • 6月20日(金)18:30~20:30:ワークヒル土浦(土浦市木田余東台4-1-1)
    テーマ「産業・医療の場で使われる放射線と健康への影響について」
    日医(基礎・後期2、生涯・専門2)
  • 7月3日(木)14:00~16:30:(株)小松製作所茨城工場(ひたちなか市長砂163-46)
    テーマ「防じんマスクの適正な選び方・有効な着用方法」
    日医(基礎・実地2、生涯・実地2)
  • 7月10日(木)14:00~17:00:日立ハイテクノロジーズ那珂事業所(ひたちなか市市毛882)
    テーマ「産業医の職場巡視について(実習)」
    日医(基礎・実地3、生涯・実地3)
    ※日程が6月26日(木)から変更になりました
  • 7月11日(金)18:30~20:30:茨城産業保健推進センター
    テーマ「自前で行うメンタルヘルス研修」
    日医(基礎後期2、生涯専門2)
  • 7月17日(木)14:00~16:00:文部科学省研究交流センター(つくば市竹園2-20-5)
    テーマ「企業における喫煙対策と禁煙支援について」
    実力アップ申請中
  • 7月24日(木)14:00~17:00:茨城県立図書館(水戸市三の丸1-5-38)
    テーマ「労働契約法と労務管理~安全配慮義務、労働契約の締結から 変更、終了まで~」
    日医(基礎後期3、生涯更新2、専門1)
  • 7月31日(木)18:30~20:30:県西生涯学習センター(筑西市野殿1371)
    テーマ「産業保健における口腔疾患~生活習慣と口腔疾患、その予防について」
    実力アップ(Ⅳ-3-(1))
  • 8月7日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「職場における化学物質による健康障害防止に係るリスク評価
    (リスクアセスメント)について」
    日医申請予定

注:「日医認定」とあるのは、日本医師会認定産業医制度の単位認定研修(生涯研修)です。
「実力アップ」とあるのは、日本産業衛生学会産業看護職継続教育実力アップコース認定(基礎コース修了者)です。

コラム水戸南町だより

タスポは誰のため/それとも禁煙の味方-その2

――会員制「CigaretteBar」のお話し――
新聞記事を見ていたら、こんな記事が目に飛び込んできました。

<たばこ万引き>「タスポ導入で困り」高2の少年盗む仙台(毎日新聞)
今月12日の深夜、仙台市太白区柳生のコンビニエンスストアで、 16歳の少年がたばこ2個(650円相当)を万引きし、現行犯逮捕 されたそうです。 調べに対し少年は、「(『タスポ』導入で)これまでのように自動販売機で たばこが買えなくなったので盗んだ」などと供述しています。 あまりにも短絡的行動に、もう付いていけない感がしますが、片やこうした例も・・

<窃盗>タスポ点検装い売上金盗む、66歳男逮捕広島(5月10日毎日新聞)
大人がこうですから、少年ばかりを責めることもできません。 ちなみに、タスポは北海道など一部の県ですでにスタートしています。 しかし対面販売ではこれまで通り購入できますから、結局、コンビニを 利するだけとの声もあります。

ところで、笹川陽平日本財団会長が「タバコ一箱の値段を1,000円 にすべきだ」と提案し、話題を呼んでいます。時を同じくして、日本学術会議が たばこ税2倍引き上げなどを内容とした要望書を国に出しています。 笹川会長は、ブログでこう述べています。 「たばこと同様、心地よい覚醒感を売りにするコーヒーも安いところで 1杯250円。冷静に双方を比較すれば、至福のひと時を与えるたばこの 1本50円は決して高くはない。」 筆者の好きなコーヒーを引き合いに出されて、思わずうなってしまいました。 喫茶店があるように、喫煙店をつくり、そこでのみ喫煙を認める こととしたらどうでしょう? 喫煙店では語呂が悪いので、「CigaretteBar」とでも。素晴らしい 調度品を用意し、極上のサービスを提供する、喫煙者専門のBarです。

――いらっしゃい、何になさいますか?今日は、キューバ産の いいものがはいってますよ。

などとバーテンダーが言って、うやうやしくたばこを客に差し出します。 客は、まるで厳かな儀式をおこなうように、たばこに火をつけ、 甘く香る煙をくゆらせながら、リッチで芳醇なフレーバーを愉しむ。

――うむ、フルーティーな甘さと複雑なアロマがたまらないな・・・
――お次は、これをいかがですか?森林を連想させる、まろやかな 味わいと重厚な香りが特徴です。お隣の女性にもぴったりです。

こんな非日常的空間を提供してくれるなら、1本50円どころか 100円でも安くないはずです。 「CigaretteBar」は会員制とし、審査を厳しくしたうえで、呼吸器疾患及び 循環器疾患などたばこ関連疾患については公的保険は使えないという条件で 入会が許されます。 もちろん、たばこを万引きするような”不良少年”や、たばこのポイ捨て 禁止条例に違反した大人は利用できません。

日本学術会議の試算によれば、現在のたばこ税を一箱につき180円増税すると、 税収は約1.2兆円増加し、たばこの消費量は4分の1減少し、喫煙者数は 最低でも200万人以上減少することが見込まれます。 これで、伸び続ける国民医療費を抑制するとともに、たばこ増税は数少ない貴重な 財源の一つとなるでしょう。財源の使途としては、福祉や医師不足の解消はもちろん のこと、たばこ農家の転作・転業支援に使うことも十分可能です(笹川会長のブログ でも同趣旨のことを言っています)。 喫煙者が嫌われるのは、受動喫煙等の健康問題もさることながら、臭い、汚い、 格好悪いの3Kが原因です。「喫煙者は最低限のルールとマナーを守ってほしい。 そうすれば、何も文句は言わない。」というのは、いまのところ最大公約数的な意見といえます。 以前、このコラムでたばこは”文化”であると書きました。喫煙問題が、たばこと 健康に関する医学的な観点からのみ焦点となっていますが、たばこのもつ 文化的観点を軽視すると、この問題は解決されないという趣旨からです。 嗜好にはマナーや作法がつきものです。たばこを、高額の税金と健康リスクを 納得した者だけの「嗜好品」の姿に戻すことも一つの解決であり、また嗜好としての 喫煙が生き残る道だと思います。


次回の第23号は、平成20年6月上旬配信予定です。
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