いばらき産保ニュース 第27号

発行日:2008/8/6
ホームページ:https://ibarakis.johas.go.jp/
発  行:独立行政法人 労働者健康福祉機構
茨城産業保健推進センター 所長 小林 敏郎


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新着情報

仕事の満足感低下、成果主義は成功せず/労働白書

厚生労働省は、7月22日、2008年版「労働経済の分析」(労働経済白書) -働く人の意識と雇用管理の動向-を発表しました。
今回の白書は、開始60年目で初めて「働く人の意識」を分析テーマと しています。 働くことに関する意識とその変化に関して、長期雇用につながる正規従業員 として就職したいのにパートや派遣などの非正規労働者として働く人(不本意 な就業者)について、企業が1990年代の景気低迷以降、人件費削減のために 採用を正規から非正規にシフトして非正規が増えた結果、労働者の仕事の満足感 が長期的に低下していると分析しています。
また、企業が年功型賃金制度に代わって導入してきた業績・成果主義的賃金 制度について、「厳しい経営環境の下で人件費削減的な目的も少なくなかった」 とし、正規従業員の中高年層で、賃金格差の拡大と仕事に対する意欲の低下が みられるとしています。
このことから白書では、賃金制度の見直しも企業経営における重要な課題に なると考えられる、特に長期勤続者が多い50歳台の労働者の意欲の低下に適切 に対処することは、我が国の長期雇用慣行を有効に機能させていくうえでも重要 であると指摘しています。
白書について詳しくは↓(要約版)
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/08-2/index.html

【関連セミナー案内】

  • テーマ:行動分析学の視点に基づく職場の人間関係改善法
    日時:10月2日(木)14時から16時茨城産業保健推進センター
    概要:ストレス予防策として、人間関係の改善が叫ばれます。 本研修会では、行動分析学の視点から、職場の人間関係の改善法として どのようなものが考えられのか検討します。
酸素欠乏症・硫化水素中毒災害/酸素濃度等の測定の未実施が原因

厚生労働省は、7月15日、平成19年に全国で発生した休業4日以上の酸素 欠乏症等による労働災害の発生状況をとりまとめ、発表しました。
それによれば、酸素欠乏症等による労働災害の発生件数が10件、休業4日 以上の被災者数が12名と、発生件数、被災者数ともに平成15年に次いで低く なっていますが、被災者に占める死亡者の割合は42%と、依然として高い状況 にあります。
酸素欠乏症や硫化水素中毒は、死に至ることもあるたいへん危険なものです。
しかし、作業環境測定、換気、送気マスク・空気呼吸器等呼吸用保護具の 使用などの措置を的確に実施すれば、確実に発生を防ぐことができます。

【関連セミナー案内】

  • テーマ:職場巡視のポイントと課題の把握の仕方
    日時:9月25日(木)14時から16時アサヒビール(株)茨城工場(守谷市)
    概要:産業医のもっとも重要な業務である職場巡視について、実際に工場内 を巡回しながら様々な安全・衛生対策を理解し、さらに職場巡視の ポイントや課題の把握の仕方について討論を行います。
  • テーマ:作業環境測定機器の取り扱いと簡易な作業環境測定方法について
    ~粉じん計、酸素濃度計、騒音計、照度計、風速計、ガス検知管、 熱中症指標計など~
    日時:10月1日(水)14時から17時茨城産業保健推進センター研修室
    概要:日常の測定によく使われる騒音計、デジタル粉じん計、検知管、 酸素濃度計、微風速計、スモークテスター、温湿度計等の使い方を 説明し、実際に触って測定する研修を行います。
新型インフル流行で社員の欠勤4割/厚生労働省が影響想定

厚生労働省は7月29日、新型インフルエンザが国内で大流行した場合に 想定される社会への影響をまとめ、初公表しました。
想定によると、海外からウイルスが日本に侵入するまで2~4週間程度 かかると設定。従業員が、自身の感染、あるいは家族の看病で欠勤する 割合は、大流行時に最大40%に及び、欠勤日数は10日間程度と試算 しています。 その場合、企業活動への影響が最も大きく、電気、ガソリンなど一時 供給停止、輸入の停止や原材料・物資の供給中断、資金調達や決済業務 で混乱が生じるなど、様々な分野に支障がでる可能性を示しています。
一方厚生労働省は、一般企業に対し、感染拡大の抑制の観点から不要不急 の事業の自粛を求めると同時に、電気や水道などの社会機能の維持を担う 企業には業務継続を要請していますが、具体的な対策を取る企業は1割程度 と少ないことも分かりました。
新型インフルエンザ発生時の社会経済状況の想定(一つの例)↓
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/07/dl/s0730-13f.pdf
第8回新型インフルエンザ専門家会議資料一覧↓
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/07/s0730-13.html
新型インフルエンザ対策関連情報(厚生労働省)↓
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/index.html

「仕事を優先したい」が5.3%に半減/内閣府世論調査

内閣府は7月24日、「仕事と生活の調和に関する特別世論調査」の結果を 発表しました。 「仕事」「家庭生活」「地域・個人の生活」の関わり方をたずねたところ、 「仕事を優先したい」人は前年の11.2%から5.3%に半減。実際に「仕事を 優先している」人は22.2%で、前年(27.7%)から5ポイント減っていました。 一方、「家庭生活と地域・個人の生活をともに優先したい」人は9.7%から 14.4%に、実際そうしている人も7.2%から9.0%に増加しました。

【ワーク・ライフ・バランスとは】
仕事と仕事を離れた個人の生活の両方について、どちらかが犠牲に なることなく、それぞれをバランスよく充実させていこうという考え方。 ここでいう生活とは、家庭生活に限らず、スキルアップを目指した 学習活動や地域への貢献活動などを含む広義の生活を指します。 仕事だけでなく、同時に生活が満たされることで、企業活動における 個人の生産性や能力が高まるとともに、社会の活性化につながり、結果 として少子化・人口減少といった問題を解決していくことになると考え られています。

【関連セミナー案内】

  • テーマ:長時間労働対策に関する面接指導の手法とその実践
    日時:8月28日(木)受付終了 10月7日(火)18時30分から20時30分日立メディカルセンター
    概要:これまで行ってきた面接指導の経験を基に、小規模事業場等を対象 とした面接指導を行うに当たっての留意事項、小規模事業場ならではの 問題点などを参加者といっしょに考えます。

センターからのお知らせ(お役立ち情報等)

小規模企業の経営者のための産業保健マニュアル/労働者健康福祉機構

従業員が50人未満の小規模事業場の経営者の方々が、従業員の健康を守る ために行わなければならない事項をQ&A形式で分かりやすくまとめた、 「小規模企業の経営者のための産業保健マニュアル」が、このたび改訂 されました。 同マニュアルは、「単独型小規模事業場」向けのほか、工業団地・卸団地、 商店街など「地域集積型小規模事業場」向け、「請負・資本関係型小規模 事業場」向けなど5種類あります。 それぞれをPDFファイルとしてご用意しておりますので、労働者健康福祉 機構ホームページよりダウンロードして下さい。↓
https://www.johas.go.jp/sangyouhoken/johoteikyo/tabid/1297/Default.aspx

うつ病を脳血流から客観的に評価
/SPECTを用いた評価法の研究開発結果を公表

独立行政法人労働者健康福祉機構では、今般、「勤労者のメンタルヘルス」 分野において、脳血流SPECTを用いた労働者のうつ病と疲労蓄積度の客観的 評価法の研究開発(香川労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長:小山文彦) の成果を取りまとめ、発表しました。 SPECT(単光子放射線コンピュータ断層撮影装置)を用いて、うつ病に罹患 した労働者の脳血流を検討したところ、うつ病患者25例中18例で、左前頭葉 に相対的血流低下が認められ、その寛解期には現在までに75%の症例において 同部位の血流回復が認められました。 この結果は、うつ病の発症時には脳血流が低下し、寛解期には回復する ことを示し、脳血流によるうつ病の発症と寛解の客観的な評価が可能である ことを示唆しています。
詳しくは ↓
http://www.research12.jp/press-SPECTp.pdf

産業看護職研修会/平成20年度受講者募集中

平成20年度産業看護職研修が、8月23日(土)、8月30日(土)の両日、 茨城産業保健推進センターで開催されます。現在、受講者募集中です。
今回のテーマは、産業看護論と産業経済及び労働。
1日目は、産業保健活動の理念と健康管理体制、わが国における労働衛生や 産業看護活動の実態、及び雇用制度と形態等について説明します。
2日目は、労働時間制度の概要、労働形態の変化~報酬形態、勤務形態の 多様化などについて説明します。

新着図書・教材情報(無料貸出し)

今回はお休みです。

産業保健Q&A

職場環境は良好なのに有機健診で異常値

【質問】
トルエンを取り扱っている作業者がおり、有機溶剤健診において尿中馬 尿酸検査を行っていますが、1人だけ再検査をしても分布2の異常値が出て しまいました。
職場環境は良好で、他の作業者には異常はありません。 原因がわからないので、安息香酸を控えてもらい、再検査をしようと 考えています。
安息香酸が含まれている食品のリストがわかりましたら 教えて頂けますでしょうか。

【回答】
トルエンを使用する労働者の特殊健康診断では尿中の馬尿酸量を 測定します。
馬尿酸は、有機溶剤のトルエンの尿中代謝物として、 特殊健康診断での測定項目のひとつになっています。 しかし、前日などに安息香酸塩などが含まれている食品を摂取すると、 トルエン曝露同様に尿中の馬尿酸が増加するので、ばく露状況を正確に 評価するために、食品等の影響を最小限にする必要があります。
安息香酸又は安息香酸塩は防腐保存料として使用されていている 添加物です。食品衛生法の添加物使用基準では、キャビア・マーガリン・ 清涼飲料水・シロップ及び醤油以外の食品に使用してはならないとなって いますが、食品中に自然に由来するものが含まれることがあります。

産業保健Q&Aの続きは、こちらをご覧下さい。
産業保健に関するご相談は、 こちらから

これから受講できるセミナー案内(無料)「2008年」

  • 8月7日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「職場における化学物質による健康障害防止に係るリスク評価 (リスクアセスメント)について」
    日医(基礎・後期2、生涯・専門2)
  • 8月23日(土)13:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「平成20年度産業看護職研修(1)」
    実力アップ(Ⅰ-1-(2)、Ⅰ-1-(3)、Ⅱ-3-(2)各1単位)
  • 8月28日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「禁煙治療の実際について」
    日医(基礎・後期2、生涯・専門2)
  • 8月28日(木)18:30~20:30:茨城産業保健推進センター
    テーマ「長時間労働対策に関する面接指導の手法とその実践」
    日医(基礎・前期2、生涯・更新2)受付終了!
  • 8月30日(土)13:00~16:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「平成20年度産業看護職研修(2)」
    実力アップ(Ⅱ-4-(2)、Ⅱ-4-(3)各1単位)
  • 9月3日(水)14:00~17:00:茨城産業保健推進センター
    テーマ「心肺蘇生法とAED(自動体外式除細動器)を用いた救急蘇生法」
  • 9月4日(木)14:00~16:00:ワークヒル土浦(土浦市木田余東台4-1-1)
    テーマ「局所排気装置・プッシュプル型換気装置のしくみ ~有害物の使用量と換気能力」
    日医(基礎・後期2、生涯・専門2)
  • 9月20日(土)15:00~18:00:茨城県医師会(水戸市笠原町489)
    シンポジウム「メンタルヘルス疾患による休業者の職場復帰対策について」
    日医(基礎・後期3、生涯・専門3)
  • 9月25日(木)14:00~16:00:アサヒビール㈱茨城工場(守谷市緑1-1-1)
    テーマ「職場巡視のポイントと課題の把握の仕方」
    日医(基礎・実地2、生涯・実地2)
  • 10月1日(水)14:00~17:00:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「作業環境測定機器の取り扱いと簡易な作業環境測定方法について ~粉じん計、酸素濃度計、騒音計、照度計、風速計、ガス検知管、 熱中症指標計など~」
  • 10月2日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「行動分析学の視点に基づく職場の人間関係改善法」
    実力アップ申請予定
  • 10月7日(火)18:30~20:30:日立メディカルセンター
    テーマ「長時間労働対策に関する面接指導の手法とその実践」
    日医申請予定
  • 10月15日(水)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「衛生管理者等スキルアップ研修会その1(基礎知識・作業環境管理・法令)」

注:「日医認定」とあるのは、日本医師会認定産業医制度の単位認定研修(生涯研修)です。
「実力アップ」とあるのは、日本産業衛生学会産業看護職継続教育実力アップコース認定(基礎コース修了者)です。

コラム水戸南町だより

メタボな人ほどエアコン設定温度が低い/空気感調査

こんな調査があったとはおどろきです。 ダイキン工業が実施した「現代人の空気感調査」によれば、自分を メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)だと感じている人ほど温度を 下げたい願望が強く、エアコンの設定温度も低くする傾向にあるそうです。
さらに真夏の部屋の設定温度をみると、メタボの自覚がある人では「25度」 が22%と最も多く、「28度」が29%と最多となる非メタボな人と比較して、 低く設定している実態が浮き彫りになりました。
簡単に言えば、メタボほど”暑がり”で、地球温暖化に貢献している ということでしょうか? 考えてみれば、肥満型の人は皮下脂肪を貯めこんでいて、それが外部温度の断熱という働きをして効率的な熱放散を妨げているわけですから、暑さに 弱いのは当たり前のこと。
反対に、寒さに対しては強いわけで、これは動物などをみるとよくわか ります。白熊やあざらしなど、極寒の動物は、皮下脂肪を大量に蓄えて寒さ から身を守っています。 ですから、この調査を冬季におこなえば、「メタボな人ほどエアコン設定 温度が低い=省エネに貢献」という結果になるはずです。

ダイキン工業は調査の目的について、「定期的な温度刺激を与えることは 体の基礎代謝を高める効果があり、メタボ予防だけでなく、冷え性や夏バテ 防止にもつながる」としています。 だから休憩時間には外出するなどして、汗をかくことも大事だと言うのでしょうが、それなら何もメタボを引き合いに出さなくてもよさそうなものです。
日本人は、マスコミが取り上げると、どうもその方向へ押し流される傾向 があります。魔女狩りならぬ”メタボ狩り”には警戒が必要です。

今年1月下旬、米ミシシッピ州の下院にとんでもない法案が提出されました。
州内の飲食店はBMIが30を超える肥満者には、いっさい食事を提供しては ならないというのです。
結局、この法案は肥満者差別と批判され廃案になったそうですが、わが国 でも、そのうち健康保険組合の”メタボ取締官”からメジャーをお腹に突き つけられ、絶食や強制運動の”刑”を言い渡されないか心配です。
こんな愚痴を言っていても、いまやメタボは個人の健康だけでなく、 国や企業にとってのリスクとなる時代。運動や温度刺激で基礎代謝を高め、 脱メタボをめざす努力は避けられそうにありません。

次回の第28号は、平成20年8月下旬配信予定です。
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