いばらき産保ニュース 第29号

発行日:2008/9/12
ホームページ:https://ibarakis.johas.go.jp/
発  行:独立行政法人 労働者健康福祉機構
茨城産業保健推進センター 所長 小林 敏郎


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【新着情報】
【センターからのお知らせ(お役立ち情報等)】
【新着教材情報】
【産業保健Q&A】
【主なセミナー案内】
【コラム:水戸南町だより】

新着情報

労災かくしで送検が増加傾向/厚労省が事例をHPに掲載

厚生労働省は今月2日、「労災かくし」で送検した6つの事例をホーム ページに掲載しました。 厚生労働省はこれまで、労災かくしの排除をポスターやリーフレット で呼びかけたり、労災かくしを行った事業場に対しては司法処分を含め、 厳正に対処する方針で望んできました。 しかし「労災かくし」による検察庁への送検件数は、平成17年115件、 平成18年138件、そして昨年は140件と、増加傾向にあります。
「労災かくし」の送検事例↓
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/roudou/rousai/4.html
労災隠しは犯罪です(厚生労働省)↓
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/roudou/rousai/index.html

長期安定雇用志向の企業が増加、メンタルヘルス対策も
/企業戦略と人材マネジメントに関する総合調査

独立行政法人労働政策研究・研修機構は今月1日、「企業における人事機能 の現状と課題に関する調査」結果を発表しました。 それによると、79.1%が「できるだけ多くの正社員の長期安定雇用を維持 していきたい」と回答。4年前の調査結果(69.4%)と比べ、長期安定雇用志向 の企業が増加していることが判りました。 また5年前と比べて重要度が高まった人事施策として、「人材確保(人手不足 への対応)」を挙げる企業が74.7%と最多でしたが、サラリーマンの過労死や 鬱症状などが大きな注目を集める中、「従業員の精神衛生(メンタルヘルス) への配慮」も69.5%と指摘率が高く、多くの企業でメンタルヘルス対策が 重要度を増していることがわかりました。
調査結果について詳しくは↓
http://www.jil.go.jp/press/documents/20080901.pdf

【関連セミナー案内】

  • テーマ:行動分析学の視点に基づく職場の人間関係改善法
    日時:10月2日(木)14時から16時茨城産業保健推進センター
    概要:ストレス予防策として、人間関係の改善が叫ばれます。 本研修会では、行動分析学の視点から、職場の人間関係の改善法として どのようなものが考えられるのか検討します。
  • テーマ:労働者のメンタルヘルス不全への対応について
    日時:11月14日(金)18時30分から20時30分茨城産業保健推進センター
    概要:メンタルヘルス不全の徴候をできる限り早期に発見し、対処するには、 労働者の訴えを評価せずに聴く姿勢が産業保健スタッフに求められています。 本研修会では、労働者のメンタルヘルス不全への対応について、実技を 交えながら理解を深めていきます。
石綿を使用する側の企業も賠償責任
/ホテルでボイラー室勤務の 男性に悪性胸膜中皮腫

札幌市のホテルでボイラー室に勤務し、2002年に悪性胸膜中皮腫で 死亡した男性(当時60歳)の妻らが、アスベスト(石綿)対策を怠った としてホテルを運営する会社に約4,100万円の損害賠償を求めた訴訟の 控訴審で、札幌高裁は8月29日、請求を棄却した1審判決を取り消し、 ホテル側に約3,200万円相当の債権分の賠償を命じる判決を下しました。
判決によると、男性は1963年からボイラー室などで設備係として勤務し、 繰り返し石綿の粉じんを吸引。2001年に労災認定を受けていました。
一審の札幌地裁は昨年3月、1985年ごろまで石綿の危険性が広く認識されていたとはいえないとしてホテル側の責任を否定し、妻らの請求を棄却していたが、控訴審では「石綿含有製品の切断などの作業は、 遅くとも1960年には、じん肺法の規制対象になっていた」と判断。 ホテル側の安全配慮義務違反を認めました。
【解説】
我が国における石綿による被害について、戦前から石綿肺が知られて おり、昭和35年にじん肺法が制定されました。また、昭和46年に特定化学物質等障害予防規則を制定し、石綿を 第2類物質として規定。
製造、取扱い作業における規制(発散防止設備の設置、 特定化学物質等作業主任者の選任、作業環境測定の実施等)が開始されました。
さらに、1972(昭和47)年になってIARCが国際会議を開催し、石綿の 発がん性に関する報告書が発刊され、また75(昭和50)年に欧州共同体の 専門家会議が開催されて石綿の発がん性が広く認知されたことを契機として、 同年、特化則の改正により石綿等の吹付け作業の原則禁止されました。 その後、1988(昭和63)年頃、学校の校舎に吹き付けられた石綿の「除去」 が社会問題となり、多くの人にアスベストの危険の認識は高まりましたが、 やがて鎮静化してきいます。
一方、外国では1952年以降、石綿肺に合併した悪性胸膜中皮腫の例が 報告され、わが国でも60年に肺がん、73年に腹膜中皮腫、翌74年に胸膜中皮腫 の例が報告されていました(但し、いずれも石綿加工業に従事)。
このような状況を踏まえ、一審では専門家でないホテル側に対し 吹き付けられた石綿の危険性を認識したうえで対処することを求める ことはできない。
すなわち、規制の権限を有する国が何らの対策も 講じていない中で、ホテルを経営するにすぎない民間企業の国の対策をも 上回る対策を先んじて採るべき理由はないとしていました。
しかし控訴審は、胸膜疾患が必ずしも十分認識されてりなかった じん肺法制定当時の1960年にさかのぼって「(石綿が)規制対象となって いた」とし、ホテル側の安全配慮義務違反を認定しています。 このように石綿を製造する企業でなく、使用する側の企業も中皮腫の 被害を防ぐ責任を免れないことを認定した判決は、今後、石綿被害を めぐる全国の訴訟にも影響を与えるものと見られています。

センターからのお知らせ(お役立ち情報等)

相談員等を派遣します
/推進センター内に「メンタルヘルス対策 支援センター」開設

センターでは、専門家(産業カウンセラー等の資格を有する産業 保健相談員等)を事業場に派遣し、経営首脳者を含む管理者の皆様から、 社内のメンタルヘルス(心の健康)問題についてご相談をお受けする とともに、メンタルヘルス対策についてアドバイスいたします。 またご要望に応じ、次の事項について、経営首脳を含む管理者に対する ミニ・セミナーも実施します。

  • メンタルヘルス対策の必要性
  • メンタルヘルス対策の取り組み方と経営首脳者の役割
  • 職場環境改善への具体的方法、管理職に求められる傾聴等

このほか、いずれも国が定めた登録基準に適合し労働者健康福祉機構に 登録した事業場外の相談機関等のご紹介も行います。
お問合せ・お申込は
電話:029-300-1221
お問い合わせメールフォーム
https://ibarakis.johas.go.jp/inquiry

セミナー受講者に履修状況を証明/産業保健研修手帳制度

事業場における産業保健活動の推進を図るためには、産業医はもとより、 衛生管理者等の産業保健スタッフが産業保健に関する基礎的理解を深める とともに、絶えず専門性を高め、レベルアップをはかって実務を展開できる ようにすることが大切です。 この度センターでは、産業医や産業看護職のように継続教育の制度がない 衛生管理者等に対し「産業保健研修手帳」を交付し、当センターが実施した 産業保健研修会の履修状況を証明することにしました。 産業保健研修手帳について詳しくは ↓
https://ibarakis.johas.go.jp/seminar/notebook

聴講者募集/平成20年度産業保健調査研究発表会

10月16・17日、川崎市幸区堀川町580番地ソリッドスクエアーホール 地下1階において、各都道府県の産業保健推進センターが19年度に実施した 産業保健調査研究の発表会が開催されます。主催は、労働者健康福祉機構。
16日午後1時からのシンポジウム (メンタルヘルス)では、「うつ病」以外の精神疾患にも対応した 職場復帰マネジメント手法の確立に関して、当センター相談員笹原信一朗先生 の発表があります。入場無料。

気をつけよう糖尿病/生活習慣病中央地区健康フォーラム

生活習慣病の中で、年々増え続ける「糖尿病」。 健診や人間ドックで「血糖が高い」と言われれも、自覚症状はほとんど ありません。
しかし、放置すると症状(口渇・多飲・多尿・体重減少)が現れ、 様々な合併症がひそかに進行します。
茨城県医師会では、より多くの人に糖尿病予防についての正しい知識を 身につけてもらうため、9月28日12時30分から、茨城県メディカル センターにおいて、生活習慣病中央地区健康フォーラムを開催します。
筑波大学付属病院 長山田信博先生の基調講演「糖尿病とは~病態と治療~」、 パネルトーク「糖尿病を予防するには」ほか。入場無料。

新着図書・教材情報(無料貸出し)

生活習慣病予防ビデオ教材/VOL.1生活習慣病の診療―糖尿病編―
(DVD44分)

茨城県医師会と茨城県が製作したビデオです。医師向けに、糖尿病治療の 基礎知識、日常診療のポイントとチェック項目、非薬物療法、薬物療法、 専門医への相談・依頼のケースについて解説します。

生活習慣病予防ビデオ教材/VOL.2生活習慣病にならないために(DVD36分)

一般向けに、生活習慣病の中から、高血圧症・糖尿病・脂質異常について 説明し、メタボリックシンドロームとの関連や生活習慣の見直しに 言及します。企業の研修用に最適。

生活習慣病予防ビデオ教材/VOL.3生活習慣と病気(DVD31分)

小学5・6年生向けに、がん・タバコ・動脈硬化について学び、どのような 生活習慣を続けることが大切か考えます。

産業保健Q&A

今回はお休みです。

産業保健に関するご相談は、 こちらから

これから受講できるセミナー案内(無料)「2008年」

  • 9月20日(土)15:00~18:00:茨城県医師会(水戸市笠原町489)
    シンポジウム「メンタルヘルス疾患による休業者の職場復帰対策について」
    日医(基礎・後期3、生涯・専門3)
  • 9月25日(木)14:00~16:00:アサヒビール㈱茨城工場(守谷市緑1-1-1)
    テーマ「職場巡視のポイントと課題の把握の仕方」
    日医(基礎・実地2、生涯・実地2)
  • 10月1日(水)14:00~17:00:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「作業環境測定機器の取り扱いと簡易な作業環境測定方法について ~粉じん計、酸素濃度計、騒音計、照度計、風速計、ガス検知管、 熱中症指標計など~」
  • 10月2日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「行動分析学の視点に基づく職場の人間関係改善法」
    実力アップ申請予定
  • 10月7日(火)18:30~20:30:日立メディカルセンター
    テーマ「長時間労働対策に関する面接指導の手法とその実践」
    日医(基礎・後期2、生涯・更新2)予定
  • 10月9日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「カウンセリング技法講座中級1日目-カウンセリングのめざす人間関係-」
  • 10月15日(水)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「衛生管理者等スキルアップ研修会その1(基礎知識・作業環境管理・法令)」
  • 10月16日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「スライドでみる職場視のポイントについて」
    日医(基礎実地2、生涯実地2)予定
  • 10月23日(木)15:00~17:00:茨城障害者職業センター(笠間市鯉淵6528-66)
    テーマ「精神疾患で休職中の社員の職場復帰支援について~リワーク支援事業を学ぶ~」
    日医(基礎後期1・実地1、生涯専門1・実地1)予定
  • 10月28日(火)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「第1回目独り職場の駆け出し産業看護職勉強会」
  • 11月6日(木)13:00~16:00:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「産業保健のためのデータ収集と分析について」
    実力アップ予定
  • 11月12日(水)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「衛生管理者等スキルアップ研修会その2(健康管理・メンタルヘルス)」
  • 11月13日(木)14:00~16:00:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「カウンセリング技法講座中級2日目-カウンセリング場面の実践的検討①」
  • 11月13日(木)18:00~20:00:茨城県医師会
    テーマ「茨城産業保健懇談会第1回研修会~第11次労働災害防止計画について~」
    日医(基礎後期2、生涯更新2)予定
  • 11月14日(金)18:30~20:30:茨城産業保健推進センター研修室
    テーマ「労働者のメンタルヘルス不全への対応について」
    実力アップ予定

注:「日医認定」とあるのは、日本医師会認定産業医制度の単位認定研修(生涯研修)です。
「実力アップ」とあるのは、日本産業衛生学会産業看護職継続教育実力アップコース認定(基礎コース修了者)です。

コラム水戸南町だより

またも一酸化炭素中毒事故

今月7日午前9時ごろ、三重県四日市の工業用地下配管工事現場で、 作業員2人が一酸化炭素中毒で死亡する事故が発生しました。
2人は、深さ約3メートル、全長約1.2キロの直径1.1メートルの コンクリート製配管内で、補強用金属管(直径1メートル)を通す作業を していたようです。
配管内からは高濃度の一酸化炭素や硫化水素などが検出されているようですが、いまだどうして一酸化炭素等が発生したか、原因は特定 されていません。
思い出されるのは、今年1月、北九州市八幡西区の送水管工事現場で 作業員3人が一酸化炭素中毒で死亡した事故です。坑内に持ち込んだ ガソリンエンジン式の発電機が不完全燃焼し、一酸化炭素が発生した ことが災害の原因でした。 今回も同じ地下配管内の事故。北九州市で起きた一酸化炭素中毒事故の 怖さは、もはや遠い過去のように、忘れさられてしまったのでしょうか。

忘れ去られたのは、一酸化炭素中毒事故の記憶だけではありません。 「1000円問題でたばこ議連、600円~1000円で調整」というタイトルで、 「たばこと健康を考える議員連盟」(共同代表・中川秀直自民党元幹事長ら)が、 8月内を目処にたばこの値上げ幅を含む中間とりまとめを行うという記事を 読んだのは8月上旬。その後どうなったのでしょうか。
「たばこ議連」に忘れられたころ、神奈川県では9日、屋内での喫煙を 規制する全国初の「禁煙条例」制定を目指して、「公共的施設における 受動喫煙防止条例(仮称)」の骨子案を発表しました。 当初は、不特定多数の人が利用する施設での原則禁煙を目指していま したが、骨子案では居酒屋やパチンコ店などでは分煙が認められるなど、 だいぶ業界に譲歩した格好ですが、こちらの方は努力が実りつつあります。

喫煙や受動喫煙による健康障害防止には、なんと言ってもたばこの 値上が効果的です。
2003年の世界保健機関の「禁煙とたばこ依存症治療の ための政策提言」でも、「増税によって、紙巻きたばこの値上げをはかる というアプローチも費用対効果が高い」としています。
さらに、「この介入法は、成人より価格の変化に敏感な児童や青少年に、 より大きな影響を与えることができる」とも指摘しています。 一酸化炭素は、屋内での内燃機関の使用やガス湯沸かし器などの不完全燃焼 によって発生しますが、タバコの煙にも多量の一酸化炭素が含まれています。 乗用車の中でタバコを一本吸った場合、一酸化炭素濃度は0.01%(100ppm) を超えるともいわれています。 禁煙を支える環境の促進、つまり公衆衛生的アプローチとして、一刻も早い たばこの値上げが望まれます。

【参考】
労働安全衛生法に基づく事務所衛生基準規則では、事務所の室内における CO濃度について50ppm以下(空気調和設備または機械換気設備のある事務所 では10ppm以下)とするよう定められています。

次回の第30号は、平成20年9月下旬配信予定です。
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